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私の薬華異堂薬局は異世界につくるのだ  作者: 柚木 潤
第1章 薬師大学校編
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06話 薬師大学校

 舞は本当は転移した後、すぐにブラックに会いに行きたかった。

 しかし、自分の生活が落ち着いてからにしようと思ったのだ。

 まだ学校も始まってないわけで、その前に準備しなくてはいけない事も多かった。

 ブラックに会う事で浮かれて、本来の目的が疎かになるのが怖かったのだ。

 だから、生活が軌道に乗ってから会いに行く事に決めていたのだ。

 舞はこの世界に来ている事も、まだブラックに伝えていなかったのだ。

 


 引っ越しから三週間が過ぎた。

 私はカクからマンツーマンでここでの文字の読み書きを習ったので、だいぶ理解する事ができるようになった。

 自分で辞書的ノートを作る事で、ほとんどの書物が読めるようになったのだ。

 すでに意志の疎通が出来ていたので、覚えるのも大変では無かった。

 生活の上でも、一人で買い物や用事を済ます事も問題なくできるようになったのだ。

 そして今日、私は薬師大学校の前に立っているのだ。

 

 薬師大学校はサイレイ国の城の横に位置し、実は今までも目にしていたのだ。

 それは城と同じような作りとなっていて、西洋の美術館を思わせる建物であった。

 今まで私はお城の施設の一つとしか思ってなかったのだが、そうでは無かったのだ。

 ただ城に隣接している為、講師として実際に城に従事している人が来てくれる事が多く、学生にとってはとても素晴らしい環境であったのだ。

 その為、カクも週に数回講義をしていたわけなのだ。


「さあ、舞行こうか。」


 カクがここまで一緒に来てくれたのだ。

 特別枠で授業に参加を認めてもらったので、学長にまずは挨拶に行く事にしたのだ。

 カクが学長室の扉をノックすると、中から入るように声が聞こえた。

 私はカクの後について中に入ったのだ。

 そこにはヨクとそれほど歳が変わらないように見える威厳のある老人が座っていたのだ。

 

「ああ、二人とも待っていましたよ。

 舞さんですね。

 ようこそ、ここで勉強したいと言ってくれるとは、嬉しい限りですな。

 カク先生の祖父であるヨク殿とは、一緒にここで勉学を共にした仲なのですよ。

 オウギ王からもお口添えをいただいております。

 好きなだけ勉学に励んでくださいな。」


 一見怖そうに見えたが、そんな言葉をかけてくれた事にとても安心したのだ。

 ヨクとの知り合いという事を聞き、緊張も少しほぐれたのだ。


「はじめまして。

 舞と申します。

 お言葉に甘えて、こちらで色々な事を学ばさせていただこうと思います。

 よろしくお願いいたします。」


 私がそう言って頭を下げると、優しく頷いてくれたのだ。

 私達は少し話すと、実際に授業を受ける教室を見に行くため、学長室を後にした。


「とても理解がありそうな人でよかったわ。」


 私がそう言うと、カクは少し顔を曇らせたのだ。


「うん・・・そう見えるんだけどね。

 ここだけの話、黒い噂が色々あるんだよ。

 まあ、どこまで本当かはわからないけどね。

 今度、詳しく話すよ。

 さあ、教室を案内するよ。」


 黒い噂・・・まあ学校の頂点である実力者であれば、多かれ少なかれ色々噂は出るものなのだろう。

 どうであれ、学生にとってしっかりと勉強できる環境があるのなら、私は特に気にする事では無いと思ったのだ。

 

 教室に着くと、すでに40人くらいの学生がすでに席についていた。

 今日は学校生活の説明や資料配布などあるのだ。

 よく見ると年齢や性別もバラバラで、私よりも年上に見える人もいて、少しホッとしたのだ。

 カクに話を聞くと、いわゆる飛び級のようなものがあったり、入る為の試験に中々合格出来ず歳を重ねてしまっている人もいるらしいのだ。

 薬師の道に進まなくてはいけない人にとっては、何としてもこの学校に入らなければいけないのだ。

 別の道が選択できないと言うのは、かなりのプレッシャーとなるのだろう。


 私はカクと別れると空いている席に座った。

 横長の椅子と机が何列かあり、見た目は自分の生まれた世界の大学と同じような雰囲気だった。

 実は久しぶりに学生となって講義を受ける事が、とても楽しみであったのだ。

 私はキョロキョロと教室中を見回していると、一人の女性に目が止まったのだ。

 とても綺麗な顔立ちで、金色のストレートの長い髪の女性なのだが、持っている雰囲気が他の人とは少し違っていたのだ。

 人を寄せ付けない暗く重たい雰囲気を漂わせ、一人静かに席についていたのだ。

 私は以前感じた事がある嫌な気配を一瞬感じたが、気のせいだろうと思う事にしたのだ。

 何故なら、この場所ではあり得ない気配であったからだ。

 

 ・・・しかし後日、魔人の友人に彼女を見てもらわなかった事を後悔したのだった。


 


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