表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
私の薬華異堂薬局は異世界につくるのだ  作者: 柚木 潤
第1章 薬師大学校編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

56/178

56話 気がかり

 舞はお屋敷に戻った後、自分の部屋で荷物の確認をしていた。



 私の生まれた世界から持ってきた漢方薬が、そろそろ無くなりそうだった。

 漢方薬の在庫が切れる前に、自宅に取りに行こうと思ったのだ。

 それに、父の顔も見に行きたかった。

 手紙で連絡をとってはいたので元気なのはわかっていたが、直接会いに行きたかったのだ。

 しかし、黒い影達がこの世界に入り込んでいる事を考えると、ここを離れるのも心配だったのだ。

 もちろん、私がいたところで、何も出来ないかもしれないのだが。

 時間の流れが違うため、私が向こうに一日行っている間に三日くらい経ってしまう事が気がかりでもあった。

 だが、今後黒い影達に対抗するためにも、漢方薬を出来るだけ持って来たいと思ったのだ。

 

 その時、部屋の扉をノックしてヨクの声が聞こえたのだ。


「舞、客人が来ておるぞ。」


「え?誰かしら?」


 私は扉を開けてヨクを見ると、何やら嬉しそうな顔をしていたのだ。


「魔人の王が来ておるぞ。

 昨日の件では無いか?」


 ヨクはそう言って微笑んだのだ。

 ユークレイスやアクアから話を聞いて、心配して来てくれたのだろうと、容易に想像できたのだ。


「あ、すぐに下に降りるから、待っているように話して・・・」


 そう言って準備をしようとした時、ヨクの横からブラックが顔を出したのだ。


「舞、部屋で話していいかい?」


 ブラックは一階にいると思っていたのに、すぐに顔を出した事に驚いたのだ。

 私が抵抗する間もなく、ブラックは部屋に入り扉を閉めたのだ。

 私は荷物の確認をしていたので、部屋には物が散乱していたのだ。

 

「あ、ブラック、荷物の整頓していて、部屋がひどい状態で・・・」


 言い終わる前に、ブラックは私を抱きしめたのだ。

 

「無事で良かった。

 舞を抱きしめるまで、心配で仕方なかったのですよ。」

 

 そう私の耳元で囁いたのだ。


「ごめんなさい・・・心配させて。

 でも、私は大丈夫よ。」


 そう言って私もブラックを抱きしめて見つめたのだ。

 するとブラックは私の額や頬に顔をくっつけた後、優しくキスしてくれたのだ。

 私はブラックの優しさと抱きしめられた温もりで、身体が溶けるように心地よかったのだ。


 私は自分の生まれた世界に、一度戻ろうと考えている事を伝えたのだ。

 薬に必要な漢方薬が少なくなった事と、父の顔を見に行こうと思っている事を話したのだ。


「・・・ただ、『大地と闇から生まれし者』の主たる者が、この世界に入り込んでいるかもしれないというのが気がかりで。」


 私はそう言いながら、ブラックを見上げたのだ。


「・・・そうですね。

 それは心配ではありますが、大丈夫ですよ。

 お父上に会いに行くといいですよ。

 それに、舞の薬が必要になるかもしれないですから。」


 私は頷き、自分の生まれた世界に行く事を決めたのだ。


「そうそう、私の『指輪に宿し者』が舞の持っている可愛い物を欲しいと言っているのです。

 一つもらう事は出来ますか?

 今日来た理由の一つでもあるのです。」


 そう言って、ブラックは苦笑いしたのだ。


「これで良かったらどうぞ。

 でも、何か話を聞いたと言う事かしら?

 情報の代償として可愛い物を希望したのでしょう?」


 あの『指輪に宿し者』達が、そんなにぬいぐるみを気にいるとは何だか不思議な気がしたが、私は先日渡した物の対になるぬいぐるみをブラックに渡したのだ。


「ああ・・・舞から聞いた話を、私も直接自分の『指輪に宿し者』から聞いたのですよ。

 まあ、同じ話でしたがね。」


 ブラックはそう言い微笑んだのだ。

 


             ○


             ○


             ○



 ブラックは舞に会い安心すると、ユークレイスと転移の洞窟へと向かった。



 舞が自分の生まれた世界に行って来る事を聞いて、少し安心したのだ。

 精霊も舞がこの世界にいないのなら来る事は無いだろうし、そうなるとあの主たる者も精霊と遭遇する事は無いと思ったのだ。

 だからまだ舞には、私の『指輪に宿し者』に言われた事を告げるのはやめたのだ。


 ユークレイスと私は、光の鉱石からなる強い光で照らされている洞窟の入り口を、くまなく確認したのだ。

 すると、やはり黒い灰の様な物が多数確認でき、私はそれを手に取ったのだ。

 魔力探知を働かせると、それと同じ気配を数箇所に感じる事が出来たが、場所の特定までには至らなかった。

 ユークレイスはその灰から記憶を読み取れるか試みたが、先日実際の黒い影達から得た情報以上のことは無かったのだ。

 ただ、やはり主たる者がこの世界に来ていることは明らかであったのだ。


 私は先日『指輪に宿し者』に言われた事を、森の精霊に直接話した方が良いのではと思った。

 当事者が自覚する事が一番だと思ったのだ。

 もちろん、可能性の問題でしかないのだが・・・

 しばらくは、この世界に来るべきでは無い事を、伝えようと思ったのだ。

 それが、舞を守るためでもあると伝えれば、精霊も理解すると思ったのだ。


 そしてユークレイスにはもう少しこっちの世界を調べて欲しいと伝え、私は魔人の国の精霊の住む森へと向かったのだ。

 


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ