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私の薬華異堂薬局は異世界につくるのだ  作者: 柚木 潤
第1章 薬師大学校編

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36話 軍に従事する者達

 舞はいつものように学校で授業を受けていた。

 カクやヨクはお屋敷が襲われた件を王に報告し、オウギ王より急ぎ首謀者を探すよう指示が出された。

 しかし、未だ首謀者などを特定するまでには至らなかった。

 そしてお屋敷の方は、あの後再度精霊が壁や屋根などを蔓で囲み、監視の目は続いていた。


 今日は魔鉱力学の授業があるので、私はとても楽しみだった。

 授業が始まると、先生が毎回何かを持って来ては説明をしてくれるのだが、私はそれに釘付けだった。

 それは私にとっては魔法道具であり、自分の生まれた世界では、見た事も聞いた事もない物なのだ。

 今回は魔法陣の話であった。

 もともと物資を移動する為の魔法陣は、この世界では良く使われていると、ヨクから聞いてはいたのだ。

 しかし、異世界転移の魔法陣とは違い、生き物を移動させる事は出来なかった。

 原理については説明を聞いてもよくわからなかったが、場所や空間を意味する座標と魔鉱石を用いて、魔法陣を動かせるらしいのだ。

 もちろん、異世界転移の魔法陣は公になっておらず、先生も知らない事なので、その事については質問する事はできなかった。

 後で薬草庫にある転移の魔法陣との違いを見てみようと思ったのだ。


 午前中の授業が終わるとケイトとライトと食堂に向かった。

 好きなメニューを好きなだけ食べれるので、相変わらず薬師は優遇されていると思うのだ。

 それぞれ好きなものを取って席に着くと、ケイトが身を乗り出して聞いて来たのだ。

 

「ねえ、この前舞に抱きついて来た人は誰?恋人?」


 私は急にそんな話が出ると思わなかったので、言葉に詰まったのだ。


「ケイト、やめなよ。

 プライベートな事だし・・・」


 ライトが気を利かせて口を挟んだが、すぐに黙っているようにケイトに窘められたのだ。


「ああ、・・・うん。

 まあ、そんな感じかな。」


 流石に魔人の王とは言えなかったので、言葉を濁して話題を変えようと思った。


「それより、ケイトはカクとあれから話をしたかしら?」


 ケイトは目を輝かせて話し出したのだ。


「あれから、薬草学の授業の時はいつも先生を手伝っているのよ。

 私も舞じゃないけど、色々な事で先生の助けになればってね。

 まあ、舞は今幸せそうだから、私の応援してね。」


 思った通り、自分の話を始めたので私はホッとしたのだ。

 ケイトの長い話を聞いた後、二人に卒業したらどんな仕事がしたいのか聞いてみたのだ。

 ケイトはカクのように、王室に使える薬師になりたいようだ。

 ライトは少し違って、軍付きの薬師になりたいと話し出した。

 つまり軍に従事する医師のようなものなのだ。

 さっきまでとは違い、自分のやりたい事を話すライトの目は、とても輝いていた。

 そう言えば、ケイト達は代々軍に関わる仕事の家系と以前聞いた事があった。


「実は、兄上が軍に所属している薬師なのですよ。

 僕もそんな風になれたらと思ってるんです。」


 私はふと思い出した人がいた。

 魔獣がこの世界に現れた時に、一緒に兵士の治療をした軍医がいたのだ。

 それに、火山の噴石による怪我人を手当てしていた彼。

 すっかり忘れていたが、よく考えたら二人と同じ名前だった気がする・・・

 私はもしやと思い名前を聞いたのだ。


「お兄様の名前はなんて言うの?」


「リョウ=コウカだよ。

 とても優秀ですごいんだ。」


 ライトにとって自慢の兄のようで、嬉しそうに話したのだ。

 そうだ、リョウだ。

 私は何で今まで気付かなかったのだろう。

 ケイト=コウカ、ライト=コウカでは無いか。


 そう言えば、彼は私が不思議な薬を使う事を知っているのだ。

 もちろん、他の国で研究している薬という事にはなってはいるのだが・・・

 以前会った時は、何となく私の行動や立場を疑問に思っていた気がするのだ。

 だが、リョウに限らず、あの時は軍の人なら私の行動を見ていた人は多数いるはず。

 今回襲われた集団の中には、もしかしたらそういう人達がいるのかも知れない。

 そう考えると、城や軍の関係者だからと、何だか安心も出来ないような気がしたのだ。

 少し、私は発言や行動に注意しなくてはと思ったのだ。


 私は授業の後、いつものように城に向かったのだ。

 最近は門にいる兵も私の顔を覚えてくれて、誰かを取り継がなくても問題なく入れるようになったのだ。

 シウン大将にいつもの稽古をつけてもらおうと、練習場に着いたときである。

 一人、懐かしい人を見つけたのだ。

 そこでは、弓矢の練習をしている兵士が何名かいたのだが、一際目を引く人がいたのだ。

 殆どの矢は的の中心に到達しており、それも動きながら俊敏に連続で矢を放っていたのだ。

 その腕を見るだけで、彼である事は明らかであった。

 

 

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