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私の薬華異堂薬局は異世界につくるのだ  作者: 柚木 潤
第1章 薬師大学校編
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03話 黒い影再び

 人間の国と洞窟でつながる異世界に、魔人の国が存在した。

 かつて五百年ほど前までは、現在人間が住む世界に魔人の国もあったのだ。

 しかしある事件をきっかけに魔人達は別の世界に移り、人間の世界とは隔絶していたが、洞窟の出現により再度共存の道を進む事になったのだ。

 魔人と言っても、姿形や生活は人間とさほど差はないのだ。

 しかし魔人は、生まれ持っての特殊な能力を大なり小なり有していたのだ。

 また人間とは違い、力の強いものほど寿命が比べ物にならないくらい長いのだ。

 そして誰もが魔人としての力が強いと認める者が王として治める国であった。



「ブラック様・・・ブラック様、聞こえておりますか?」


 魔人の国の王であるブラックは、どうも考え事をしていたようで、ネフライトの声が聞こえて無かった。

 魔人の国の幹部の一人であるネフライトは王であるブラックの執事兼護衛のような立場であった。

 その為、ブラックのスケジュールは全てネフライトが管理していたのだ。

 上の空でいたブラックは執務室にネフライトが来たことさえ気づいていなかったようだ。


「ああ、ネフライト、すまない。

 次の予定ですね。」


 ネフライトは頷くと、本日のこれからの予定について説明を始めたのだ。

 そして最後に付け加えたのだ。


「ブラック様、もう少し警戒してはどうですか?

 何者かが城に侵入でもしたら・・・その対応では心配ですね。」


 それを聞いたブラックは笑いながら答えた。


「そうだね。

 まあでも、ネフライトを含め優秀な幹部達が今はここにいるから、安心しているんだよ。

 ここに辿り着く前に、どうにかしてくれるだろう?」


「まあ、もちろんそうですが・・・」


 ネフライトは少し照れるように答えたのだ。


 五人いる幹部達のうちネフライト以外は、それぞれの領地に住まいを持っていて、洞窟出現以前は城に来るのはブラックの召集があるときだけだった。

 しかし、人間の国とつながる洞窟が出現してからは、かなりこまめに城に訪れるようになっていたのだ。

 この日もブラックが呼んだ訳ではないが、みんな城に揃っていたのだ。

 だから、ブラックは本当に安心して王の仕事をこなすこともでき、たまに自分の世界に浸ることも出来たのだ。

 もちろん、悪意のある気配にはちゃんと察知する事は出来るので、全く気を許している訳ではなかった。


 執務室の扉がノックされたと同時にバタンと開いた。


「ブラック、スピネルを探しているが知らないか?」


 アクアが勢いよく入ってきたのだ。

 アクアはドラゴンの民で今は人型であるが、巨大なドラゴンの姿にも変わることができるのだ。

 子供の頃、ドラゴンの里でブラックに助けられた時から態度が大きいのだが、それは今も変わる事はなかった。

 アクアは最近見た目は青年のような姿になったが、中身は未だ子供と変わらず憎めない存在であり、ブラックへの横柄な態度もみんな容認しているのだった。

 どうも、幹部であるスピネルと一緒に出かける予定だったらしい。

 スピネルはちゃんとした幹部ではあるが、アクアと同じように遊ぶことが大好きで、アクアと気が合いよく一緒に出かけているのだ。


「私は見てないですよ、アクア。

 ネフライト、スピネルはこちらで何か仕事の予定はありましたか?」

 

「いえ、特に私が関係する仕事は無かったかと思います。

 スピネル個人の用事は知りませんが・・・」


「わかった、他を探すよ。」


 そう言って、あっという間に何処かに消えたのだ。

 二人は相変わらず騒がしいと思った矢先、またドアがノックされたのだ。

 今回は勝手に扉は開かなかったので、ネフライトが扉を開けると、そこには幹部であるユークレイスが立っていたのだ。


「ブラック様、少しよろしいでしょうか?」


 鋭い青い瞳を光らせたユークレイスは神妙な顔つきで入ってきたのだ。

 ユークレイスは精神支配の魔法を得意とし、普段からブラックをとても崇拝している冷静な魔人であった。

 普段以上に深刻な表情から、何かしらの問題が起きたのだろうと、想像できたのだ。


「これを見てください。」


 そう言ってユークレイスはブラック達にある物を見せたのだ。

 結界のキューブに閉じ込められてはいるが、明らかに以前見たあの黒い影に侵食された小さな魔獣であった。

 ブラック達を見るなり威嚇し始めたが、何か訴えているようにも感じたのだ。


「・・・まずいですね、これは何処で?

 精霊の話から数百年は問題ないと思っていたのですがね・・・」


 ブラックは舞が戻って以来精霊に会ってはいなかったが、森に会いに行くしか無いと思ったのだ。

 



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