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私の薬華異堂薬局は異世界につくるのだ  作者: 柚木 潤
第1章 薬師大学校編
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17話 三つの世界

『指輪に宿し者』はゆっくりと語り始めた。


「舞、この人間達がいる世界と魔人達のいる世界、どう思う?

 転移の洞窟により繋がっており、別の世界である事は知っているな。

 そうそう、あの翼人の世界も・・・

 だが、どうだ。

 よく考えるとこの三つの世界は似ている部分が多いと思わないか?

 この世界と舞の住んでいた世界とは大きく違うところがあるだろう。

 それに比べてこの三つの世界はどうだ?

 違和感が少ないとは思わないかい?


 かつてと言っても、気が遠くなるほどの昔のことだ。

 人間や魔人は勿論、精霊達も存在する前の話なのだ。

 その時はまだこの世界が三つに分かれてなかったのだ。

 ああ、つまりこれらの世界は一つだったのだ。


 そこには、『光』と『闇』そして『大地』だけが存在した。

 そして時間と共にその三つは干渉し合い、風、火、水などを作り出した。

 我らもその時、生まれたのだよ。

 光り輝く石としてな。

 そして時間と共に自我を獲得して、今は人に似せた実体を作り出す事が出来る様にまでなったのだ。

 その間に色々な生命の誕生があり、この世界は素晴らしい進化を遂げていったのだよ。


 だが、三つが混じり合い出来た我らと違い、闇と大地だけで生まれた存在があったのだ。

 光の存在しない彼らは、我らがいた世界に一緒にいる事が出来なかったのだ。

 我らは生存する上で、自分達でエネルギーを作り出そうとしたが、彼らは闇に隠れエネルギーが必要な時のみ現れ、我らを侵食してエネルギーを得ていたのだ。

 それを長い間繰り返していた。


 だが、それを許さない者がいたのだ。

 この世界が出来た時から存在する『光』『闇』『大地』の意志と言うべき存在は、長い年月が経っても消えてはいなかったのだ。

 そしてついにこの世界を三つに分け、それぞれが干渉しない異世界へと変えてしまったのだ。

 『大地と闇から生まれし者』達がいる場所は、自分達以外は何の生命も存在しない世界にされてしまったのだ。

 その為、エネルギーの得られない彼らは、眠るように静かに闇に溶け込んでいたのだ。


 ところが生命力とはすごいもので、時が過ぎると何も無かったその世界から昔と同じように生命が誕生したのだ。

 その世界はあっという間に他の二つの世界と変わらぬくらいの豊かな土地となったのだ。

 それに気づいた『大地と闇から生まれし者』達は、また動き出したのだ。

 そこでエネルギーをまた得ることが出来るようになり、弱っていた彼らも少しずつ力にを取り戻したという事だ。

 舞達の言っている黒い影は彼らの一部なんだと思うぞ。

 

 そしてもともと一つであった世界が引き寄せるように、三つの世界は今や簡単に行き来できる状況となったわけだよ。

 魔人達がいくつかの異世界に転移できる方法を得た事は知っていたが、あの世界を選んで移り住んだのも偶然では無かったのかもしれないな。」


 『指輪に宿し者』は一気に話したのだ。

 私は何だかすごい話を聞いてしまって、言葉が出なかったのだ。

 これはきっと誰も知らない話なのだろう。

 私が知って良かったのだろうかと不安になるくらいであった。

 それにその黒い影達が、この『指輪に宿し者』と同じくらい昔から存在しているのであるなら、到底私たちが敵う相手ではないと思うのだ。

 

「今回、その黒い影達は私達のエネルギーを吸い取るのではなく、操る方向になっていたのです。

 どんな意志があるのか・・・

 どうであれ、主たる者はとても強い存在であるのは確かだろうし、私達がどうにかできるものではないのでは・・・」


 『指輪に宿し者』はぬいぐるみを持ちながら、笑ったのだ。


「あはは、舞がそんな事を言うとはな。

 持っている力だけが全てではない事は、よく知っているだろう。

 舞自身がそうではないか。

 どうすれば良いかは、自分達で考えなければならないが、何もせずに悲観的になる事はないと思うぞ。

 それに、いざとなれば我らがいる。

 本当に助けが必要な時は呼んで良いのだぞ。

 だがまずは考える事だな。」


 確かにそうなのだ。

 何の力もない人間の私でも、何か力になれる事はあるはず。

 今度の事もみんなで先ずは考えなければいけないのだ。


「そうそう、彼らが我々と一緒にいられなかった理由・・・それは強い光だ。

 だから、きっと光が舞達の助けになる事は確かだと思うぞ。」


 持っているぬいぐるみをいじりながら、忘れていたかのように『指輪に宿し者』は重要な話したのだ。

 強い光・・・

 きっと何とかなるはず。


 私はぬいぐるみをプレゼントして良かったと思ったのだ。

 また、父のところに戻った時はいくつか購入しておこうと本当に思ったのだ。

 


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