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私の薬華異堂薬局は異世界につくるのだ  作者: 柚木 潤
第5章 闇との戦い編
168/178

168話 魔人至上主義

 真っ白で何もない世界から、突然私は解放されたのだった。

 それは、私が闇の創造者の申し出を受け入れる事を承諾したからだと思った。

 しかし、実際は違っていたようなのだ。

 私は顔を上げて辺りを見回すと、多くの人達が黙って私に注目していたのだ。

 そして、すぐに目の前に舞が立っている事に気づいたのだ。

 久しぶりに見る舞は、長い黒髪を一つにまとめ、少し潤んだ大きな黒い瞳で私を見つめていたのだ。

 私はすぐに駆け寄り、舞を抱きしめたのだ。

 これが最後になるかもしれないと思うと、心が痛かった。


 私は少し前までは、生きる事に大きな意味を見出せなかった。

 正直、ハナと会えなくなった後は、ここまで長く生きた自分は、終わりをいつ迎えても良いと思っていたのだ。

 しかし、舞と会ってからは、舞と同じように時間を刻んで行きたいと思うようになったのだ。

 わがままかもしれないが、もう長い時間はいらない・・・

 しかし、舞と一緒にいられる短い時間は欲しかったのだ。

 だが、それも叶わないだろう。

 私は魔人の王として、出来る事をしなくてはいけない。

 舞は、闇の薬を使うように言ってくれるが、私は復活したいと思うのだろうか。

 復活したところで、もうそこには舞はいないのだから。

 舞が作った薬の匂いに囲まれながら、ずっと眠っているのも悪くはないのかもしれない・・・


 

 舞の言った言葉・・・それはきっと嘘だろう。

 闇の薬の影響を受けないと言うが、多分今までそんな事を試した事など無いはず。

 以前、毒には効果があったが、その時とは違うのだ。

 全てを消滅に導く薬と、完全回復出来る薬・・・バランスを間違えれば、取り返しのつかないことになる。

 そんな事を舞にさせるわけにはいかないのだ。

 そう言っても大丈夫だときっと舞は言うだろう。

 だから私は、理解したふりをしたのだ。

 舞、すまない・・・。

 

 私は舞を強く抱きしめた後、闇の創造者を見たのだ。


「約束を果たすとしようか。

 さっき話した通り、融合を受け入れるつもりだ。

 だから、舞や他の者たちに危害を加えないでほしい。」


 ザイルの姿の闇の創造者はその言葉を聞いた後、無表情でありながらも、とても満足気な声をあげたのだ。


「ああ、もちろんだ。

 その娘が望めば、我らの近くに置いておくつもりだ。

 我らがこの世界を一つにまとめ上げるのだ。

 ブラックよ。

 何も心配する事は無いのだ。

 我らに対抗できる者などいないのだからな。

 人間にしても翼国人にしても、我らの足元には及ばないのだよ。

 我らが導くべきちっぽけな存在でしか無いのだ。」


 そう言うと、私と舞の方に歩いてきたのだ。

 ザイルの姿の闇の創造者が私達の目の前に立つと、ザイルの頭の上から黒い煙のようなものが出てきたのだ。

 それと同時に、ザイルがその場にバタンと倒れたのだ。

 その煙のような黒い存在が、闇の創造者である事は間違いなかった。

 その煙はあえて、人のような姿にかわったのだ。

 本来はそんな姿など必要ない意思の存在のはず。

 わざと、周りにいる者に恐怖を与えるために、姿を見せたとしか思えなかった。

 予想通り、周囲にいた多くの者は動く事すら出来ず、じっとその黒い煙で出来た存在を見つめていたのだ。

 そんな中、舞が声を絞り出すようにして、話し出したのだ。


「私は・・・そうは思わない。

 人間にしろ、翼国人にしろ、魔人や精霊達より劣るとは思わない。

 もし劣ると言うのなら、この世界に生まれてからの長い時間の中で淘汰され、今頃ここには存在していないのでは?

 でも実際、立派に繁栄しているじゃない?

 魔法のような力がある事だけが、優れているという訳では無いのよ。

 だからあなたが考えるように、導かなくてはいけない存在ではないのよ。」


「なるほど、弱者の考えだな。

 どんな素晴らしい能力があっても、全ては力に支配されるのだよ。」


 黒い煙のような塊の闇の創造者は、ふわふわと形を変えながら、嘲笑ったのだ。

 

「さあ、ブラック時間だ。」


 この時、私も舞も・・・そして闇の創造者さえも、ある事に気付いてなかった。

 私達の一語一句を、大きな苛立ちと怒りを持ってじっと聞いている者がいたのだ。

 その者の存在が三者にとって、大きな誤算となったのだった。


              ○


              ○


              ○


 舞は闇の創造者の言葉を聞いて、どうしても黙っていることが出来なかった。

 力だけが全てでは無い事を、闇の創造者にどうしても伝えたかったのだ。        

 だが、舞が自分の思いを話した後の、あの嘲笑うような態度。

 それを見て、舞の迷いは消えたのだ。

 いまや、この世界に闇の創造者は必要ないのだと。

 

 

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