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私の薬華異堂薬局は異世界につくるのだ  作者: 柚木 潤
第5章 闇との戦い編
162/178

162話 舞の決意

 私はブラックが捕えられた結界のキューブを大事に持ちながら、魔人の国へと戻ったのだ。

 すでにスピネルとネフライトは戻っており、ネフライトは一時的に軟禁されているようだった。

 しかし、ネフライトは黙ったままで、何も話そうとはしなかったのだ。

 ユークレイスが無理やり記憶や頭の中を探ることを出来たかもしれないが、あえてそれはしなかったのだ。

 もちろん、それなりの上位の魔人では簡単に心を読む事は出来ないのだが。

 とにかく、私達がブラックと一緒に帰ってくるのを待っていたのだった。

 だから、私とアクアのみが魔人の城に戻ってきたのを見て、誰もが落胆しているように感じたのだ。



「舞、ブラックは・・・」


 ジルコンが私に駆け寄ってくると、周りの幹部達も私に注目したのだ。

 私は大事に持っていた結界のキューブを手のひらに置いて、みんなに見せたのだ。


「ブラックはこの中にいるわ。

 捕えられる前にどうにか出来ればと、地下の森の主にも手伝って貰ったんだけど、ダメみたい。

 でも、大丈夫。

 きっと私がここから解放するわ。

 多分・・・私にしか出来ないと思う・・・」


 私はアクアに話したように、幹部のみんなに話したのだ。

 この世界を作った創造者である『闇』が関与していること。

 この世界で生まれた者は、彼には争えない・・・

 ネフライトが行ったことも、闇の創造者の指示である事を話したのだ。

 だから私しかいないのだと・・・

 

「舞一人にお願いするなんて出来ないわ。

 私達だって、何かできる事があるはずよ。

 みんなで考えましょう。」


 ジルコンはそう言って、私の肩に手を置いたのだ。

 私は、ブラックの捕えられている結界のキューブを、とりあえずこの城で保管するように話した。

 闇の創造者が、あえてブラックを奪いに来ることは無いのだろう。

 そうする必要があれば、とっくに奪われていてもおかしくないからだ。

 きっと・・・私の方から来ると自信があるのだ。

 どうする事もできない私が、ブラックを解放して欲しいと頼みに来ると確信しているのだ。

 それくらい・・・この結界やこの状況に自信があるのだ。

 今の私に出来る事はなんだろう・・・

 そう思っていた時、一瞬で周りの音が消えたのだ。

 

 この感覚・・・

 周りを見ると、みんなの動きが止まっていたのだ。

 そして、ジルコンがゆっくりと動き出して、私の前に立ったのだ。

 その表情から、身体の中にはいずれかの創造者がいるのだろうとすぐにわかった。

 少なくとも『闇』の創造者でない事は気配でわかったので、私は少しホッとしたのだ。

 何の対策も考えついていない今の状況では、遭遇したく無い相手だったからだ。


「異世界から来た娘よ。

 闇は、融合する時に必ずブラックを外に出さなければならない。

 今はどうにかして、ブラックに融合の同意を持ちかけている事だろう。

 同意がなくても融合は出来るが、両方の力が相殺されて力が低下するだろう。

 闇としてはどうにかそれを避けたいはず。

 この世界において最強の者として存在したいはずだからだ。

 ブラックを同意させるべき事柄・・・

 それがわかれば、どうにかなるかもしれない。

 考えてみるのだ。」


 そう言うと、ジルコンの姿の創造者は椅子に腰掛けたのだ。

 すると無音の空間から、すぐにみんなの話し声が耳に入って来た。

 ジルコンは一瞬不思議な顔をしていたが、すぐにいつもの表情に変わったのだ。

 

 ブラックを同意させるべき事柄・・・

 それは、私から闇の創造者に出向く事柄ときっと同じようなもの・・・

 悔しいことに、闇の創造者は良くわかっていたのだ。

 


             ○


             ○


             ○


 

 その夜、私はケイシ家のお屋敷に戻った。

 転移の洞窟を抜けると、いつもよりも多くの兵士を見かけ、少しの違和感を感じたのだ。

 私はマキョウ国の事が頭によぎったのだ。

 お屋敷に着くと、カクは私を見るなり泣きそうな顔で抱きついて来たのだ。


「舞、心配したんだよ。

 中々帰って来ないから・・・無事で良かったよ。

 それに今この国は、大変な事になってるんだ。」


「ごめんね、連絡できなくて。

 大変な事って、マキョウ国のことかしら?

 ヨクは?」

 

 カクの話によると、ヨクは城を離れることが出来ないらしい。

 マキョウ国が国境のところまで、出兵しているようなのだ。

 その為、連日王室付きの薬師達や軍部と協議がなされているらしいのだ。

 カクも同じ立場のはずだが、ちょうど私の様子を伺う様に指示を受け、お屋敷に戻って来たところだったのだ。


「まあ、お偉いさん達の顔を見ているより、舞を探しに行った方が良かったからね。

 でも、この後どうなるんだろう。

 戦争なんて、僕は経験ないんだよ。

 僕が産まれる前の、はるか昔の事だから。

 ずっと平和だったのに・・・」


 私がきっかけを作ってしまったかと思うと、申し訳ない気持ちでいっぱいだった。

 

「こっちからも兵を動かしたりしているのかしら?」


「いや、それはオウギ様が良しとしていないんだ。

 マキョウ国の出兵は見せかけであり、本当の意図は別にあるって。

 だから、こっちから動いてはならないと。

 国境には、実は強力な防御壁が作られているんだよ。

 それが上手く起動すれば、そんな簡単にはマキョウ国の兵士は入ってくる事は出来ないんだ。

 まあ、それで他の薬師達も納得しているんだけどね。」


 魔法道具を駆使した防御壁と聞いて、すごいとは思ったが、あの闇の創造者には効果が無いはず。

 それは、多くの兵士をもっても対抗しても同じ・・・

 マキョウ国を動かしている闇の創造者にとっては、人間の国などどうでも良いはず・・・

 魔人の国の頂点に立ち、この世界全てを支配する事が本来の目的。

 魔人の国に戦争を仕掛けさせ、人間の国を滅ぼさせるつもりなのだろうか。

 ・・・やはり会いに行くしか無いのだろう。


 でも、その前にやらなくちゃいけないことがあるのだ。


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