表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
私の薬華異堂薬局は異世界につくるのだ  作者: 柚木 潤
第5章 闇との戦い編
157/178

157話 翼国ふたたび

 魔人の国の城では幹部達が険しい顔で集まっていた。


「ネフライトとブラックが戻って来ないのよ。

 どういうことかしら?

 翼国に行ってからもう数日経つのに、流石におかしいわ。」


 ジルコンは王の執務室をウロウロしながら苛立っていた。

 ブラックが魔人の国を留守にする場合は、必ずジルコンが王の代理を務める事になっていた。

 この国では、魔力、攻撃力、防御力など魔人としての力が強い者達が幹部となるのだ。

 さらにその中で一番強い者が王になる事が、はるか昔から決まっているのだ。

 その為、ブラックの次に強い魔人であるジルコンが、代理となる事は誰もが納得して認めている事なのだ。

 ただ、本人を除けばだが・・・


「ブラックがいないと、ほんと困る!

 やる事が多いし、ネフライトもいないと執務が滞って大変なのよ。

 スピネル、代わってくれない?」


 ジルコンはスピネルを見てニコリとすると、スピネルは顔をしかめたのだ。


「えー嫌だよ。

 僕も自由が一番だから、仕事に追われる事はしたくないんだよ。

 それに、僕じゃ国民の不満爆発で、すぐにクーデターが起きちゃうよ。

 それはまずいでしょ。」


 ジルコンはため息をつくと、執務室にあるソファに転がったのだ。


「それにしても、ネフライトが一緒とは珍しいですね。

 翼国へは蜘蛛の件で行かれたのですよね?」


 青い瞳のユークレイスはそう言い何か考えている様だった。


「私はそう聞いていたけど・・・」


 転がりながらジルコンがそう答えると、スピネルが嬉しそうに何か言おうと目を輝かせたのだ。


「じゃあ僕が・・・」


 スピネルがそう声を出した時、バタンと執務室の扉が大きな音を立てて開いたのだ。


「ブラックと連絡が取れない!!」


 勢い良く、アクアが入って来たのだ。

 そして、その後ろには舞の心配そうな顔があったのだ。


「それは僕たちも知ってるよ、アクア。

 でも、翼国に行ってるみたいだから、気配が探知できないのは仕方ないだろう。」


 スピネルは、焦っているアクアを諭す様に話したのだ。

 アクアはスピネルを睨むと声を上げたのだ。


「そうじゃないんだ!

 この額の石がある限り、世界が違ってもブラックとは繋がっていたんだよ。

 だが、今は何も感じられない・・・

 これがどう言う事かわかるか?」


 アクアは入って来た時の勢いが無くなり、泣きそうな声で話し、下を向いたままだった。

 誰もが一瞬口を閉したのだが、少ししてユークレイスが冷静に一言だけ話したのだ。


「とにかく、翼国に行ってみましょう。

 そこに行けば、何かわかる事でしょう。」


 そこにいる者達は皆黙って頷いたのだ。

 舞も同じ様に黙っていたが、みんなの思いとは少し違っていたのだ。



 ・・・私がアクアと魔人の国に着いた時、既にアクアの言う通りブラックの行方がわからなくなっていた。

 きっと『闇』の創造者が何らかの関与をしているのだろう。

 しかし、アクアが心配するような事にはなっていないと私は思うのだ。

 創造者の立場なら、いつでもブラックと融合出来る状況はあったはずなのにしなかった・・・いや出来なかった理由があるのでは無いかと思うのだ。

 もちろん、その条件が揃いつつあるのは確かなのだろうが。

 しかしそうで無ければ、私にあんな取引の様な話はしないはずなのだ。

 他の創造者達が、忠告を知られないようにと言う理由も関係があるのかもしれない。

 ただ、のんびりはしていられないのも確かなのだ。

 ブラックに危険が迫っていることは変わりなく、助けられるのは私だけ・・・

 本当にそうなのだろうか?

 とりあえず、この場で『闇』の創造者の話をする事はやめたのだ。

 正直、どこで『闇』の創造者が聞いているかわからない。

 すでに誰かの中にいる可能性も・・・

 それはないか。

 あの気配・・・

 あの不快な気配は、魔人でない私でも敏感に感じる事が出来るのだ。

 

「舞、じゃあ行こう。

 ・・・大丈夫か?」


 アクアは私を心配そうに見たのだ。

 

「大丈夫よ。

 ブラックを探しに行きましょう。」


 結局、私とアクア、スピネルで翼国に行く事にしたのだ。

 そして、ジルコン、トルマ、ユークレイスは城で待つ事になった。

 ブラックがいなくなった事が知られてしまうと、魔人の国自体に不穏な動きが起こるかもしれない。

 この国に何が起こるかわからない為、ブラックの次に強いジルコンと他の幹部も何人か残る必要があるのだ。

 それで、翼国に詳しい私達三人が行く事になったのだ。

 それにしても、ブラックだけでなく一緒に連絡の取れないネフライトも心配であった。

 ブラックと一緒にいて巻き込まれたのだろうか・・・ 


 私はアクアの腕に掴まると、一瞬で翼国と繋がる湖の岩場に移動したのだ。

 岩場にある黒いトンネルを覗くと、ブラックが張った結界が消えていたのだ。

 私達は暗いトンネルの中を降りていくと、あっという間に明るく開けた所にたどり着いた。

 以前来た時と同じように、大きな何本もの木の上に存在する、とても神秘的な空中都市が目の前に広がっていたのだ。

 翼国・・・翼を持つ住民の世界。

 トンネルを出た所には、数人の黒翼国の兵士がトンネルの警備をしていたのだ。

 彼らは急に現れた私達に一瞬警戒したが、すぐに敬礼をして私達を迎えてくれた。

 彼等にブラック達のことを聞くと、確かにこの世界に現れたが、その後地下の森に向かった様なのだ。

 用事を済ませたら、黒翼国の王や王子であるブロムの所に挨拶に行くと話していたらしい。

 しかし、未だに城を訪れてはいないようなのだ。

 話を聞いたブロム達も心配をしており、捜索隊を検討している状況だった。


 アクアはスピネルの顔を見た後、私の肩に手を置いて悔しそうな顔をしたのだ。


「舞・・・ネフライトの気配を感じる事は出来たが、ブラックはここに来ても・・・わからない。」


「そう・・・まずはネフライトを探さなくちゃね。」


「ああ、ネフライトはあの気持ち悪い生き物が沢山いる森にいるようだ。

 だが、ブラックは何で一緒にいないんだ・・・」


 アクアはそう言ってため息をついたのだ。


「・・・だめだ。

 ネフライトに思念を送ったけど、返事がない。

 とりあえず、その場所に行ってみよう。」


 スピネルが残念そうにそう言った時、バサバサっと大きな翼の音が上空から響いたのだ。

 見上げると、空から一人の翼を持った者が舞い降りて来たのだ。


「皆様、お久しぶりです。」


 そう言って会釈したのは、以前よりも一段とたくましくなっていたブロムであった。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ