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私の薬華異堂薬局は異世界につくるのだ  作者: 柚木 潤
第5章 闇との戦い編
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146話 疑わしき者

 衛兵や王室付きの薬師達が晩餐会の会場に入ってくると、オウギ王の指示の下、倒れている人達をそれぞれの部屋に連れて行ったのだ。

 舞とブラックも先程通された部屋に戻り、ユークレイス達と待機していたのだ。

 しかし、舞は外の様子が気になって、部屋の中で大人しく座っていることが出来なかった。



 どうやら、薬師が各国の王族の健康状態を確認しに周っているようだった。

 特に怪我をしたり具合が悪い人はいないみたい・・・

 私はそっと部屋の扉を少しだけ開けて、外の様子を伺っていたのだ。

 オウギ王はそれぞれの国の部屋を伺い、説明と謝罪で忙しく動いていた。

 無理もない。

 オウギ王が招待したイベントで、騒ぎが起こったわけなのだ。

 怪我人が出なかっただけでも良かったのかもしれない。

 王族に何かあれば、国と国との問題となるのだ。

 しかし・・・誰があの蜘蛛を持ち込んだのだろう。


 あの時、目の前の女性がいきなり悲鳴を上げたのだ。

 私は飲んでいたカップをつい落とすほどであった。

 その見ている方向に目を向けると、かつて見た事のある不快な生き物が目に入ったのだ。

 あっという間に、部屋中が多くの人の悲鳴や恐怖の声で包まれたのだ。

 黒翼国の地下の森・・・

 あの森には巨大化した生き物が多数存在したのだ。

 思い出したくも無いが、私の大嫌いな生き物に囲まれた場所。

 そして、巨大な多数の蜘蛛にも遭遇したのだ。

 あの時は、確か氷結の剣を使い凍らせたはず。

 しかし、この部屋にはそんな物は無い。

 外にいる兵士に助けを求めに行こうかと考えたが、すでに扉という扉がいつの間にか白い糸で包まれており、開ける事は不可能に見えたのだ。

 私は首からぶら下げていた金色のペンダントを手に取り、元の大きさになるように願ったのだ。

 大きくなった弓矢を手に取ると、ドレスを捲り上げてボール状のある薬を取り出したのだ。

 そして矢にセットし、天井にいる黒い生き物に向けたのだ。

 ガサガサと多くの足を動かす巨大な蜘蛛のような生き物は、白い糸を四方に吹き出すと、あっという間に数人を捕らえ宙吊りにしたのだ。

 ブラックもこの状況を見て左手を向けていたが躊躇しているのがわかった。

 何故なら、この黒い不快な生き物は、自分の前に捕らえた獲物を動かし盾のようしたのだ。

 私の知っている蜘蛛より、かなり賢い存在だったのだ。

 ブラックの力では、獲物とされた人達を傷つける可能性がある。

 でも、私なら何とか・・・

 そう思い狙いを定め、矢を放ったのだ。

 そして予想通り黒い的にあたり、その生き物は優しい光に包まれると、動きを止め眠りについたのだ。



「舞、少しは座ったらどうですか?

 後でオウギ王が、こちらにも顔を出すはずですから。」


 ブラックはそう言って、ソファに座るように促したのだ。


「・・・そうね。

 でも、何だか落ち着かなくて。」


 とりあえず座ってはみたものの、色々考えずにはいられなかった。

 しかし・・・一番怪しいと思われたマキョウ国の王も、白い糸で捕らわれていた事を考えると、他の何者かの仕業なのか。

 創造者の話を考えると、『闇』の関与があるのか。

 まだ、何もわからなかった。

 ただ、今回の事で損をする者がいる事は確かなのだ。

 まず、このイベントの開催国であるオウギ王。

 そして・・・魔人の王であるブラック。

 あの生き物の出所が魔人の国では無いかと疑う者が、必ずいるはずなのだ。

 この人間の世界に存在するものでは無いと、あの場所にいた誰もがわかる話なのだ。

 そして翼国である第三の世界の存在は、人間の国でも一部の者にしか明かされてないのだ。

 だから、オウギ王もその話をする事は出来ない。

 そうなると、サイレイ国と魔人の国への不信感が高まる可能性があるのだ。

 そう思っていた時、扉がノックされたのだ。


 ユークレイスが部屋の扉を開けると、オウギ王とヨク、そしてシウン大将も一緒に立っていたのだ。

 オウギ王の表情を見ると、かなり深刻な状況である事がわかった。


「魔人の王よ。

 先程は大変な事態をおさめて頂き、ありがとうございます。

 怪我人が出ることもなく、本当によかった。

 舞にも世話をかけたね。

 怪我はしていないかい?

 やはりヨクの言うとおり、今回参加してもらって助かった。

 感謝しますよ。

 しかし・・・」


 オウギ王は言葉を濁したのだ。


「他の王から何か話があったのですね。」


 ブラックがそう言うと、オウギ王はため息をついてヨクを見たのだ。

 

「状況を話すとしよう。」


 ヨクはチラッと私を見た後、話し始めたのだ。

 私に何か関係がある話なのだろうか?

 ヨクは、私に何か言いた気な目をしていたのだ。


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