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私の薬華異堂薬局は異世界につくるのだ  作者: 柚木 潤
第3章 失われた記憶編
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114話 魔人の国の沈黙

『闇の鉱石を支配する者』は城の中にいるであろう『指輪に宿りし者』を探す事に集中したのだ。

 しかし、少し前まで気配を感じられたはずなのに、今は全くわからなかったのだ。


 この世界から移動したか、もしかすると誰かに守られているのか・・・

 どうであれ、片割れは自分が拘束しているので、合流は出来ないはず。

 私の自由は確定されたものなのだが・・・


『闇の鉱石を支配する者』はそう思いながらも、やはり探し出さなければ安心できなかったのだ。



『お姉さん、ちょっとこの国を案内してくれる?

 僕の兄弟と言うべきもう一人が見つからないんだよね。

 一緒に探しにいくのを手伝ってよ。』


 ユークレイスの姿の『闇の鉱石を支配する者』は、そう言ってジルコンに微笑んだのだ。

 ジルコンはそれを見て、益々吐き気がして不快感が増したのだ。

 だが、囚われたブラックや幹部達の事を考えると、異論を唱える事など出来なかった。

 

 二人は城から街中に瞬時に移動したのだ。

 そこでは、城で起こってる事など知る由もない人々が、いつも通りに暮らしているのだ。

 市場の方に向かうと活気の良い声が色々なところから聞こえて来て、とても賑やかな場所となっていた。

 

『ここにもいなさそうだね。

 ・・・とっても賑やかなところだね。

 今までずっと鉱山に閉じ込められていたから、こんな賑やかな所は久しぶりだよ。』


 それを見てユークレイスの姿の『闇の鉱石を支配する者』は、ジルコンに楽しげに話しかけたのだ。

 だがその後すぐに冷淡な表情に変わり、目の前の賑やかな市場に目を向けると、低い声で呟いたのだ。


『ずっと静かな所で一人でいたからさ・・・こう言う場所嫌いなんだよね。』


 そう言って青い目を光らせたのだ。

 すると先程と同じように、手のひらから透明な鉱石を沢山生み出したのだ。

 そして市場一帯を、鉱石でドーム状に上から囲み出したのだ。

 中にいる人達は透明な鉱石のため、始めは気付く事が無かった。

 しかし完全にその場所が囲まれると、徐々に鉱石が黒ずみ出し、それに気付く魔人が出てきたのだ。

 するとそのドームの中では段々と騒ぎが大きくなり、ドームの外からも混乱が見てわかるのだが、音が外に漏れる事は無かったのだ。


「どうしてそんな事するの?

 この人達は何も悪くないじゃない?

 この鉱石を早く取り払って。」


 ジルコンはユークレイスの姿の『闇の鉱石を支配する者』を睨みながら叫んだのだ。


『何を怒っているの?

 嫌いな物を閉じ込めただけだよ。

 問題あるかな?

 中の魔人達を心配しているんだね?

 わかった、じゃあ彼等が不安にならないようにしてあげるよ。』


 そう言ってまた青い目を光らせると、薄暗くなったドーム状の中にいる人達の動きが止まったのだ。


「何をしたの?

 彼等に何をしたの?」


 ジルコンは焦って、ユークレイスの姿の『闇の鉱石を支配する者』の腕を掴んで叫んだのだ。


『ああ、心配しないで。

 彼等の時間を止めただけだよ。

 ちゃんと生きてるよ。

 今後、僕がここに快適に過ごすために、彼等が必要か不要かはまだわからないからね。

 少なくとも、今はね。』


『闇の鉱石を支配する者』はそう言うと、そのドームに囲まれた市場を横目に街中を進んで行ったのだ。

 その後も『闇の鉱石を支配する者』が存在を疎ましく思う物があると、黒ずんだ鉱石で囲み封印して行ったのだ。

 ジルコンは彼の意に背く事が無いように、出来る限り他の魔人達に思念で伝えたのだ。

 しかしあっという間に、この魔人の国は沈黙の世界となっていったのだ。

 ジルコンは絶望しながらも、彼について行くしかなかったのだ。



              ◯


              ◯


              ◯


 

 ブラックの結界の中の舞は、どうすれば一番良いか考えていた。


『指輪に宿りし者』の力を使う事で、今いる場所がばれてしまうという問題があった。

 しかし、不思議な薬を作るためにはいくつかの鉱石が必要であり、その為には力を使ってもらわなければならない。

 ユークレイスから『闇の鉱石を支配する者』を引き離す事が何よりも重要なのだ。

 器になる者が存在しなければ、彼は大きな力を発揮出来ないらしい。

 そうなれば、『指輪に宿りし者』の力で再度鉱山へ閉じ込める事が可能だと。

 しかし、また別の者に入られては意味がないのだ。

 では、どうしたら・・・

 

 その時胸元が暖かくなり、優しく光ったのだ。

 私は首から下げていた小袋の中から、一つの小さな光る種を手のひらに取り出したのだ。

 すると、優しく光る種から小さな美しい彼が現れたのだ。

 それは、この世界に導いてくれた、あの森の精霊であった。


「舞、どうやら問題が起きているようだね。

 私に手伝える事があるかもしれませんよ。」


 その美しい彼はそう言って私の手の上に座り、微笑んだのだ。

 

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