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アトリエアルマ/錬金術師型電波望遠鏡  作者: 朝野神棲
第壱話 墓所惑星の錬金術師
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5:お化けとは失敬な!

「……待って――いってぇ!」


『ああ、目を覚まされましたか』


 手を伸ばして跳ね起きた久遠は、机の角に額をぶつけた。

 植物園の工房に横たわった久遠を、床に正座したいのりが心配そうに覗き込んでいた。


「おれは……どれくらい気を飛ばしてた?」


『一瞬です。ほんの一、二分くらい』


「ニンゲンと神獣とかいうやつじゃ、薬の効き目も違うってことか」


『道理ですね』


「ていうか、その神獣とやらは!」


『ええ、もう大丈夫。動きだす気配はありません。こちらに来たばかりで災難でしたね』


 いのりは安心させるように、遺骸と化したイノシシの神獣を指さした。

 久遠は、胸を撫で下ろすように工房を見渡した。

 それからぴょこぴょこと歩き回るいのりの透けた身体を見て、ため息を漏らした。


「本当にお化け屋敷なんだ」


『お化けとは失敬な! わたしは永久野いのり、錬金術師です!』


「生前は、なんだろ?」


『うぐ』


「しかも死んだのは〝五万年前〟とかって言ってた」


『ぐぬぬ』


 いのりは悔しそうに歯噛みした。


『そんなことより、あなたこそ何者なんですよう?』


「おれだってよくわからないんだよ。気づいたらこの家にいて、さ」


『まあ、嘘を言ってる様子には見えませんケド』


「どうして」


『所作が周りのモノを意識しすぎです。この国で暮らす〝幽霊〟はそんなことしませんから』


「この国で暮らす幽霊、って」


 戸惑いぎみな久遠をじぃっと見つめたいのりは、踵を返した。


『ふむ』


「な、なんだよ」


『なるほど。まあ直接言葉で語るより、見たほうが早いのでしょうね』


 いのりはかつかつと工房を抜け、リビングを抜け、ぶっ壊れた玄関のドアを抜けた。


「あ、ちょっとどこへ!」


『決まってるじゃないですか。迷子の雲野久遠さん?』


 いのりは言った。


『あなたたちがぶっ壊した温室の片付けです』


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