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4:夢 -ⅰ-
……久遠は夢を見ていた。
夢のなかで久遠は白い部屋の中にいた。
部屋には何もない。
壁は一面真っ白で、柔らかくて、天地すらわからない。
久遠の身体には、へその緒のような紐がくくりつけられていて。
まるで母親の羊水の中のように、彼の身体はぷかぷかと中空を漂っていた。
そして傍らには、拳ほどの大きさの黒い球体が、目の前で浮かんでいるだけだった。
(人生ってやり直せると思いますか? わたしは――)。
球体が久遠に話しかけてきた。
久遠は答えに窮する。
白い部屋はモヤに包まれ、視界が滲んでいく。
そのまま久遠は、遠ざかっていく黒い球体に手を伸ばした……。