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【完結】「結婚しよう」「むり」を繰り返していた幼馴染に、1日だけ求婚しなかったら心配して甘えてきた  作者: shiryu


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第38話 プリクラ



 久しぶりにゲーセンに来た俺と香澄だが、とても楽しめた。

 中学生くらいから来てなかったので、知らない音ゲーなどがいろいろあって、それらを全部片っ端から香澄とやっていった。


 俺はもともとそこまで得意じゃなかったのでクリアはほとんど出来なかったが、香澄はほぼ全部の音ゲーで初見クリアをしていた。


「さすがだね、香澄」

「まあ難易度はそこまで高くなかったしね。すごく楽しかったわ」

「うん、俺も楽しかった」


 音ゲーに夢中になっていて、もう夕方くらいになっていた。


 最後に何かもう一つくらいゲームをするか、と思って軽く回っていると、プリクラがいっぱいあるところに来た。


「そういえば、誠也とプリクラってやったことないわね」

「確かに、中学生にはプリクラって意外と高いからね」


 プリクラをやるお金があったら、違うゲームをやっていたな。


 香澄も別にプリクラを積極的に撮ろうと思っていなかったはず。


「私も高校で初めてやったけど、意外といいものよ。写真が形にもなるし、今だったらスマホに保存もできるしね」

「そうなんだ。じゃあ最後にこれやる?」

「ええ、そうしましょうか」


 二人で適当に一つのプリクラの中に入り、お金を入れて始める。

 いきなり機械の中から女性の声が聞こえて、すごいビックリしたが。


 どうやら個々の機体は「カップルモード」と「友達モード」みたいのが選べるようだ。


「何が違うの?」

「私も詳しくないからわからないわ」


 まあわからないけど、よし。


「カップルモード選んでいい?」

「……べ、別にいいけど」


 香澄の許しも得たし、カップルモードにしよう。

 そして機械の女性の声がどんどん教えてくれるから、先に進んでいく。


 いろいろと機能を設定し、ようやく写真を撮り始めるという時に……。


『カップルモードなので、まずは顔と顔がくっつくほど近づけて写真を撮ろう!』


 と、そんな指示が飛んできた。


「あ、こういう感じなんだ」

「か、顔と顔が、くっつけるって……!」

『ほら、早く早く!』


 まさか機械の音声に急かされるとは思わず、俺はカメラの前に顔を持っていく。


 香澄も躊躇いながらも、俺の方に顔を近づけてくれる。


『ほら女の子の方も、恥ずかしがらないで!』

「っ……!」


 機械の音声の人はこの状況が見えてるのかな?

 そう思うほど的確な指示が飛んでくる。


 香澄は顔を赤くしながらも、俺の肩あたりに顔を置いてくれる。


 俺も大好きな香澄の顔がここまで近づくこともそうそうないので、すごい心臓が高鳴ってしまう。

 そのままの体勢で写真を一枚撮り、次々に体勢を変えて撮っていく。


 多分カップルモードというのは、男女で協力してドキドキするようなポーズを指示されることが多いようだ。


 ハートマークを一緒に作って、とか、頬ツンツンして、とか……なんかいろいろ。

 よくわからないが、まあ香澄とこうして楽しみながら写真を撮れるのは嬉しい。


 そして最後の写真では、


『彼氏さんが彼女さんの後ろから抱きついて、愛を囁こう!』


 とか言われた。


 ……写真だから、愛を囁いたところで意味なくないか?

 そう思っていたが、とりあえず指示通りにしようとするが……。


「香澄、その、いい?」


 さすがに後ろから抱きつくのは、香澄の許可が必要だ。


 さっきから指示されるポーズで頬が赤くなっていた香澄だが、今回の指示でも耳まで赤くなっていた。


「い、いいけど、その……や、優しくね」

「も、もちろん」


 潤んだ瞳でそう言われて、逆にキツく抱きしめたくなる衝動に駆られてしまうが。

 だけどしっかりと自制して、香澄の背後に回り込む。


 そして後ろから抱きしめた。


 最初のポーズの時のように、香澄の顔のすぐ横に俺が顔を持ってくる。


 初めてこうして香澄を後ろから抱きしめたけど、すごいドキドキする。

 小さい、柔らかい、可愛い……そんな感想が頭の中に浮かんでは消えていく。


 俺の心臓の音が香澄に聞こえていたら少し恥ずかしい。


 だけど香澄の心臓の音が聞こえないから、俺の音も多分聞こえていないだろう。


 いや、もしかしたら香澄が全くドキドキしていないだけかもしれないけど。


 だけど香澄の顔も真っ赤っかなので、俺と同じくドキドキしてくれてると思っている。


 ここで、指示に従うのなら、愛を囁くってことか……。


 いつも言ってるけど、こんな状況や体勢では言ったことないから、すごい緊張している。


「……香澄」

「……な、なに」

「――大好きだ」

「っ……!」


 俺がそう囁くと、香澄は顔を見られないようにするためか、俺の顔とは逆方向を向いてしまった。

 多分とても可愛らしい顔をしているから見たいんだけど、今は無理だ。


 なぜなら俺も……香澄に見られたくないくらい、顔が真っ赤になってるはずだから。


 こんな近い距離にいるのに二人とも真逆の方向を向いている時に、最後の写真を撮られた。


 その後、別のところで「落書きタイム」とかいう時間があり、それをやろうとしたのだが……。


 とても近い距離で恥ずかしいポーズばっかりの写真なので、俺も香澄もまずまともに写真が見られない。


 少し慣れて写真に落書きをしていくのだが、最後に撮った写真だけはどちらも最後まで慣れなかった。


 最終的に、最後の写真以外はそれなりに落書きをして、最後のだけは日付を適当に入れただけで終わった。


「……プ、プリクラ、楽しかったね」

「そ、そうね……悪くは、なかったわ」


 二人ともまだ顔が赤いまま、ゲーセンを出た。



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役立たずの落第聖女は、隣国の辺境伯に嫁がされて覚醒する 〜「聖女は大嫌いだ」と言っていたのに、なぜ溺愛されているのでしょう?〜
新作の異世界恋愛です! よろしくお願いします!

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