霊体のままでも最強です。
時間が足りない。
全ての時間が。
俺は自分の中の理想を追い求めていた。
だがそれには圧倒的に時間が足りなかった。
理想の肉体。
武を極めるに相応しい究極の肉体。
理想の技。
全ての武を超越した技。
子供の様な理想を追い求め修業に明け暮れた。
まず肉体を作ろうとあらゆる手段を用い肉体を強化した。
筋力、柔軟性、俊敏性、持久性全てを限界まで鍛え上げた。
だがこの時点で30歳という年齢になってしまった。
肉体のピークは短い。
衰えきる前に技を磨きあげねばと、技の修業を始めた。
あらゆる武術を学び吸収し選択し技を磨いた。
この世の全ての武術を免許皆伝する頃には70歳という年齢に達していた。
それでも自らの理想とは程遠かった。
拳で巨岩を砕こうと。
刀で燕を落とそうと。
槍で大木を貫こうと。
どんな武器、武術を用いても満足出来なかった。
そして遂に寿命が近づいてきた。
年齢も100を超えこの世界で負けを知らぬ存在になっても尚自らの理想を追い求めていたが、遂に肉体の限界に近づいてきた。
もっと修業がしたい。
切に願った。
理想の肉体、理想の技を完成させたい。
だがもう時間が無かった。
寿命を待つのみとなった今では未練のみが残る。
そして遂に俺は寿命を迎えた。