5.鳥籠の幸せ⑧ これが生きてるってことなら。
◇ ◇ ◇
「私、どうすればいいんだろ」
喜楽園へと帰る道を歩きながら、マキはつぶやいた。
「ずっと考えてた。人間は死ぬってことは分かった。でもそれを受け入れたら、リサたち家族はどうなるの?」
隣を歩く大地に聞いているわけではない。だけど、口に出さずにはいられなかった。言葉にすればなにか明確な答えが、どこかから降ってきてくれるんじゃないかと思って。
「マキ。別に無理して今考えなくても――」
「これが生きてるってことなら」
大地の言葉を遮り、マキは自分の胸をグッと押さえた。心臓をつかみ取ろうとするかのように。
「リサたちは、生きてなかったってことになるの?」
そして先ほどの光景を思い出し、付け加える。
「センセイは、もうすぐ死んじゃうのっ?」
明確に、これから誰かがいなくなるという怖さに直面し、頭の中がぐちゃぐちゃしてくる。センセイに怒っていたはずなのに、センセイがいなくなるのは悲しくて。
「……っ」
息が詰まる。
マキは立ち止まって体を震わせた。目を見開き、拳でどんどんと胸元をたたく。
「マキっ!?」
驚いた顔で寄ってくる大地を、泣きそうな顔で見返すと。
「……はっ」
呼吸が戻った。だけど、一度に取り込める空気が少ない気がして、何度も何度も呼吸を重ねた。だんだん息ができなくなるような気がして、吸うのをやめられない。
(大丈夫、これは精神的なものだから。本当に詰まってるわけじゃないから)
必死に自分に言い聞かせる。自分の身体なのにいうことをきいてくれないことが、どうしようもなく悔しかった。
「マキ!」
ぎゅっと、大地に抱きしめられる。
「大丈夫、大丈夫だ。ちゃんと呼吸できる……置いてかない。ひとりにしない。俺がいるから」
誰かが自分を気にしてくれている。
(大丈夫、ひとりじゃない。私はひとりじゃない……)
安心感に包まれているうちに、マキの呼吸は落ち着きを取り戻していった。
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