逆ハー展開!?
「絢斗、今日帰り遅いね。その子彼女?」
「おう、新太。久しぶりだなー。塾の帰り?」
「そうそう、で、いつの間に彼女作ってたのかよ!」
「いや俺様がこんなブスと付き合うわけないだろ?」
ーそのブスをこの1週間ストーカーしてたのは何?嫌がらせ!?
と、私は言いたいのを必死に押さえた。
これ以上喧嘩が長引いて帰れないのはさすがにきつい。
そして絢斗の友人である新太を私は知っていた。
顔は似ていなくても、雰囲気や声は兄そっくりで一瞬胸が高鳴ってしまった。
それは私の強敵!初恋の彼ー倫太郎の弟だった。
「あれ?もしかして絢斗が入学式で一目惚れしたってのがこの子のこと?」
「は?お前…!!!」
あの俺様キャラが一瞬で顔を真っ赤にしたのを見て、私は絢斗からアプローチを受け彼が初めての彼氏になった時のことを思い出してしまった。
確かにその時もそんなことを言っていた。
でもそれもこれも恥ずかしい一瞬のギャル時代の私に血迷ってしまっただけだろう…彼は変人なのであり得る。
私は動揺する絢斗の隙を見て、Lサイズのシェイクを買わせてその甘さに浸った。
実は新太とは関わるのは初めてであったが、兄よりも美少年で紳士そうな彼の裏側は、それを鼻にかけた性悪で絢斗と親友の意味がすぐに分かってしまった。
そんな二人のイケメンの残念さに呆れながらも傍観して一緒に電車に乗ると、野球部帰りの哲平もおり私達は合流した。
哲平はニヤニヤと絢斗を肘で小突いた。
「絢斗、そろそろ梨子のこと落としたのか?」
「いやいや、てか俺もうギャルじゃないお前なんかどーでもいいし!」
「それマジで言ってる?もうストーカー終了してくれる?最高だわ…!」
ーやはり俺様ナルシスト絢斗の執念だったのか。
私は明日から平凡な生活が戻ってくることに安堵した。
「え、お前ストーカーしてたわけ?」
「違うから!!こいつの妄想です。」
「はぁ!?」
私達は言いたい放題、弄らたり罵り合う。
新メンバー新太もすぐに馴染んで、なんだかそれはそれで楽しかった。
車内ではさぞ迷惑な客だっただろう。
それからの絢斗はいつのまにかチャラさや俺様がなくなり、髪も短くして黒く染めていた。
彼はサボりがちだった部活動も再開し、テニス部のエースとなった。
そして私達は電車で四人帰ることも多く、いい友人同士となっていたのだが…ある時咲良に忠告を受けることとなる。
「ねぇ、梨子。側から見ると、逆ハー状態になってるわよ。」
「え、誰にも私のこと好意なんて持ってないじゃなーい。確かにイケメン2人、だけどあの猿だっているのに。」
「いやあの猿もねぇ…今や先輩たちから可愛いとか言われてるらしいわよ。」
「物好きがいるものね。」
私のもう一度やり直した過去は、部活や友人に囲まれなんだかリア充になっていた。
しかしリア充は妬まれ疎まれる対象でもある。
ーまた同級生や先輩、他校の学生からの嫌がらせや虐めには遭いたくない…。
「でも私みたいなブス、みんな相手にしないよね。それか彼氏でも作ろうかな!」
「…まあ、頑張れ。」
ーでも忙しいし、誰にもキュンキュンしないんだよなぁ。
しかし時すでに遅し、もう季節は初夏は迫りつつあった。
そしてすっかり能天気に過ごしていた私はある盲点に気付いていなかった…。