恋敵はギャル!?
入学式はちょうど金曜日に行われたので、翌日は休日だった。
私の両親は休日出勤をしており、実家に独りでいるのが苦痛だった私は昼過ぎに近くの公園に行った。
私は一人ブランコに腰掛けた。
小さな子供たちが砂場で遊んでおり、まるで自分の子供たちのようで、しばらく彼らに会えないのかと気持ちが沈む。
しかしブランコを思いっきり漕いで風を切るのはとても気持ちがよく、いつか子供に会うためにも前向きに生きていかなければいけないと気持ちを切り替えることができた。
ーとにかく初恋を変えないと!!!
昨日の続き、作戦を考えることにした。
やはり高校一年のホワイトデーからのことを思い出すのは辛く、とりあえず元凶となったその日までに起きたフラグを避けることにした。
しかしよく考えると折らなければいけないフラグはたくさんあり、一生懸命頭を働かせようとしてたときである。
「おーい、梨子じゃん。」
目の前の道路から自転車を止めて私の名前を呼んだのはー哲平だった。
そしてビニールの袋を持った彼は、ニヤニヤと私の前に向かってきた。
「何してんの?パンツ見えるぞ。」
「いや、ズボンだから。」
「梨子はスカートを履くような女じゃないしな。」
哲平は下品な発言で私をからかい、公園のベンチに座った。
私は顔を膨らませ、足音を立てながら彼の前に仁王立ちして睨んだ。
ーパーカー姿で自分より背も低い、顔も猿面でバカで冴えない男!!!
思わずイラついて殴りたくなり右腕の袖をたくし上げたが、ハッと私は己に返り気付きました。
ーこいつ、私の将来の旦那じゃん…!てか、こいつと付き合えば私は初恋なんてそもそもしないんじゃないのか?
どんな作戦よりも、手っ取り早い方法だと感じた。
私はとりあえず哲平の隣に座ったが、彼は袋から取り出したゲームソフトに見とれながら言った。
「見ろよ、俺がずっと欲しかったゲームやっと手に入れたんだよ。親が入学記念にお金をくれたから買ってきたんだ。」
「…気持ち悪。」
私はつい感情がそのまま口に出てしまった。
ゲームのパッケージには、ギャルが自分の頭と同じくらいの巨乳を強調させ乳首が見えそうなギリギリのビキニを着ていた。
哲平は二次元、ギャルゲームにハマっていた。
ーこんなエロガキと付き合う?恋心なんて全く感じないわ!!!!!
私と哲平が付き合ったのは、大学を卒業してからだった。
私は大学を卒業してからもそのまま故郷にあまり帰らず働いていており、たまたま同級会をきっかけに彼と連絡をとりあうようになりました。
気心の知れた幼なじみは、都会で独り仕事に励んでいた私の心の支えになり、いつしか恋人になった。
確かに彼の脳天気で明るい性格に惹かれ、つい先日までは愛し合っていたが…。
「ねぇ哲平は好きな人とかいないの?」
「んーそれは決まってるじゃん!」
たしか告白してくれたのは哲平からだった。
私のことをずっと好きだったとー言ってくれた記憶がある。
私はもし彼が好きなら付き合えるかもしれないと、上から目線で失礼だが変な期待を抱いた。
「麗華が俺の好きな人。っていうかこれから付き合う人。」
「…はぁ!?」
哲平は躊躇わずに、ずっと手に取っているゲームソフトのパッケージの巨乳女を指差す。
こんなエロガキに聞いた私が馬鹿だった。
今の旦那の記憶も汚れていくように感じ、絶望しながら俯いた。
「おーい、悔しいならお前巨乳にはなれないだろうから、せめてギャルになってみたら?」
「…言われなくてもなってやるわよ!!」
私は自棄になり捨て台詞を吐くと走って近所のドラックストアに行った。
やけくそに金髪のブリーチ剤とカラーコンタクト、メイク道具などを衝動買いした。
そして休日が終わり身支度を終えて全身鏡を見たとき、己の愚かさに気付いた。
金髪に近い長髪に異様に大きい黒目、顔は厚くメイクをし、胸元を開けてシャツを着て丈を短くしたスカートを履いた自分がいた。
「あれ…私、哲平と付き合わなかったし、ギャルにもなってしまった…」
あまりの運命の強さに私はひどく落胆し、両親にもこっぴどく怒られながら、高校に向かった。