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感動の再会と決意

目覚まし時計の音が鳴り響く。

私が両腕を天井に伸ばしながら目を開くと、そこは実家の自分の部屋だった。

ー実家は両親が亡くなってからは空き家で、私の部屋も結婚したときにある程度片付けていたはず…。


あちこちに荷物があり、ましてや正面の壁には高校の制服がかけてある。


「これは夢…?」


私はそう信じて止まず、寝返りをしてベッドから転げ落ちた。

しかし体を打ち付けた痛みは強く、夢は醒めなかった。


「どういうこと…。私はさっき病室で意識を失ったはずなのにー」


私が動揺している間、床に体を叩きつけた激しい音を聞こえたのか、階段を急いで登る2人の足音がしてすぐに扉が開いた。


「梨子!まさかベッドから落ちたのか?」

「大丈夫、怪我はない?」


現れたのは両親だった。

死ぬ前より随分と若い母が倒れ込んだ私の手を握る。

父もその横から私を覗き込んでいた。

私は自然と涙がこみ上げてきてしまった。


母は永らく難病で、だんだん自分で動くことができなくなり、最期は自分で人工呼吸器の装着を拒否し亡くなった。

そして母よりひと回り年上で定年退職した父が最期まで介護をしていたが、母が亡くなって数ヶ月後に心筋梗塞を起こしそのまま家で独り息を引き取った。

上京して両親と離れて暮らしていた私は、二人の最期を看取ることができなかった。


相次ぐ両親の死は辛いものだったが、懸命に病気と闘った2人の最期の顔はとても安らかだった。

仲が良かった両親は天国でもきっと共に幸せに暮らしているのだろうと、私は思って生きてきた。


「お母さん、お父さん…。」


それでも寂しさや孤独は自分が親になっても消えないもので、生きている両親の姿に感動した私は、そのまま母に抱きついた。

そして母が頭を撫でてくれ、父も微笑んでくれるのかと思っていたのだが…。


「動けるなら大丈夫みたいね!さぁ、早く制服を着て準備をしなさい!」

「そうだそうだ、ベッドから落ちるなんて子供じゃあるまいし。まあまだ子供か。」


母は私の体からすぐに離れて立ち上がり、父と笑いながらすぐに部屋から出て行った。


そう、元気だった頃の母は看護師をしてバリバリ働くキャリアウーマン、とても明るく溌剌としていた。

父も仕事詰めで、一人娘を可愛がるとは無縁かのように私によく嫌味を言う。

それが元気だった両親の私に対する、普通の態度だった。


ー感傷に浸っている私がおかしい…って、なんで両親が生きているんだ?高校の入学式?


「えーーーーー!」


私は悲鳴を上げ、ドアから出て吹き抜けから両親の姿をもう一度見た。

両親は私の悲鳴にはもう動じず目も向けず、2人で仲良くモーニングコーヒーを啜っている。


ーこれはタイムスリップ?過去に戻ってしまった…?



私は状況が飲み込めないままだったが悩んでいても拉致が開かないので、とりあえず制服を着た。

そして朝食をとり、車で両親と共に高校へ向かう。


ーなんで過去に戻ってしまったんだろう。これが夢だったらどんなにいいか。


さすがに過労で倒れるほど育児や家事が苦行でも、夫の帰りを待ち2人の子供を育てることはこの上ない幸せな毎日だった。


ー私はまた高校生に戻って…勉強をして試験や大学受験を受けなければいけないー大嫌いな体育の授業もある。もう解放されていたと思っていたのに!!!


そんなせっかく乗り越えた過去をまた生きなければいけないのかと、私はだんだん絶望していった。

しかしふと車の窓を見ると現代で最後にみたあの風景があり、忌々しい記憶が脳裏に浮かび上がる。


ー私またあいつに振り回されるの?縛られて3年間を送るの?勉強やスポーツはまだしも、もうあんな失敗…初恋はしたくない!

タイムスリップをして未来が変わっていたとかよく映画にある話だけど、私はどうしても初恋を変えたい!無かったものにしたい!!!!


現代に戻ることよりも、そのことで頭がいっぱいになった。

そう、私の初恋の相手は本当にトラウマで憎かった。

ー私はあんな初恋を阻止して、ハッピーな高校生活を送ってみせる!もう一度!


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