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募る想い

1週間、1ヶ月、3ヶ月…と月日が流れても、私と倫太郎は付き合っていた。

お互い部活動と大学受験勉強で忙しく、週に1回一緒に下校して他愛のない話をする程度であった。

それでも大好きな人と手を繋いで歩くのは、とても幸せなことだった。


そして私の部活も休日だったクリスマスには倫太郎が時間を作ってくれ、彼の家でケーキを食べてプレゼント交換し…初めて結ばれた。

彼と初めて身体を重ねたことは恋人として最上の幸福感もあったけれど、逆に不安感をもたらすことになった。


倫太郎の受験が近付いても、彼は私に変わらぬ優しさで接してくれ平凡に日々が過ぎていく。

しかし日々が過ぎていくことは、彼が卒業して先に私が知らない場所に進んでいくのである。

明らかに過去とは変わっているはずなのに、私には苦しい思い出が蘇り、悪い妄想をしてしまう。


ーこれから2人はどうなるんだろう?もし大学に入って倫太郎な近くに素敵な人が現れたら…。もしまた過去のような関係になってしまったら、私は耐えられるのだろうか?


倫太郎が過去も今も性格が悪いとは思わないし、私を利用するとは考えられない。

順調すぎる交際関係があるのに、それでも私は悪いことばかり考えて、不安感が強くなっていた。


そして冬は明け、倫太郎は高校を卒業した。

ちなみにバレンタインデーは直接渡すことができた。

大学受験の結果が出るのはホワイトデーで、それまで彼も何だか落ち着かないようで私達は会わなかった。


つまり倫太郎は、私にホワイトデーの日会う約束をしてきた。


ーきっと私達の運命を左右する。ホワイトデーが近づくのが怖い。


私たちが交際したことは、私の気持ちをよく知っていた咲良や紗奈カップル、絢斗さえも祝福して見守ってくれた。

私の抱える不安は応援してくれる友人達には話をするのは躊躇った。


私には恵まれたことに落ち着かない不安な気持ちを聞いてくれる人が1人いたーそれは哲平だった。


哲平は未だに野球と二次元に夢中だから特に私の恋愛なんて干渉もないようで、幼なじみとして気軽に話すことができた。

私の漠然とした不安に彼は何を助言することもなく、ただ聞いて頷いてくれた。

その時だけだけはいつもの嫌味もなく、私の気が晴れるまで話を最後まで聞いてくれた。


そしてホワイトデーの前日。

私は部活帰りに会った哲平に、迫りくる明日への緊張感や不安を彼に吐露していた。

しかし彼は珍しく、私の話に口を挟んだ。


「明日会わないことはできないの?」

「え…。」

「自分で気付いてるよな?梨子はだんだん情緒不安定になってる。倫太郎先輩には言えないんだろ?俺は2人がこの先上手くとは思えないんだ、ごめん。」


哲平の言うことはあまりに正論で、胸に刺さった。

幸せに叶ったはずの初恋は、私をだんだん蝕んでいた。

でも私はそれを認めたくなかった。


「哲平に言われたくない。三次元の人に恋したことないくせに。」

「…あるよ。」


哲平はそう言うと、私を見つめた。

ヘラヘラしている彼がいつになく見せる強い眼差しだった。


いつも哲平には救ってもらったはずなのに感情的に怒ってしまった自分を恥じた。

しかし変な意地が張り謝ることもできず、私は彼を置いて走り家に帰って行った。



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