物語は続く?
それから数日が経った。
お盆休みに入ったが親が仕事で家に一人の私は、夏休みの課題もやらずに涼しいクーラーの下でゴロゴロしていた。
ーてか、倫太郎のことも解決したしそろそろ過去に帰れないかな?あの病院に戻って、また倒れたら帰れたりする?
なんだかお盆休みに入るまで、部活やら恋やら?で怒涛の日々だった。
これがタイムスリップする物語だとしたら、もうハッピーエンドになって現代に帰れる気がしてならず、それでも平凡に毎日が過ぎることがとても退屈に感じていた。
「私も哲平みたいに、乙女ゲームでもしてキュンキュンしようかな…。」
なんだか誤っている気がするが、現実逃避をしようと携帯を取り出すと新着メールが一件入っていた。
『梨子ちゃん、話したいことがあって。会える日ないかな?俺はいつでもいいから。』
それは倫太郎からのメールだった。
私はとりあえず現実を疑った。
「ん…この物語、やっぱり続きがあるの?」
そして暇だった私は、その日の夕方に倫太郎と会うことになった。
そこは私達の家の中間地点にある公園だった。
「急に連絡してごめんね。元気だった?」
「はい、元気です!この通り。」
「そっか、よかった。」
私服の倫太郎に会うのは初めてで、気持ちが高鳴り少し緊張した。
でももう彼に会っても、今まで抱えていた不信感や罪悪感のようなモヤモヤのようなものは消えていて、自然に笑顔を見せることができた。
ー私はこのまま、倫太郎と先輩後輩の関係で楽しく話したりできればいいのだからー。
「梨子ちゃん、あの時病院に着いて行ってくれてありがとうね。」
倫太郎もなんだか憑き物が取れたように爽やかな笑顔で私にお礼を言うと、あれから夏帆さんと何があったのかを話してくれた。
結局二人はもうよりを戻さなかった。
倫太郎は夏帆さんに今までの想いを全て告白し、彼女は彼の気持ちを利用して挙句に捨ててしまい傷つけたことを深く謝罪したようだった。
彼女は初恋の人への想いをなかなか断ち切ることはできないようだが、倫太郎とお互い正直に向き合ったことで前に進む勇気が出たようだ。
私は彼の話を頷き暖かい気持ちになりながら、これはもうエピローグに違いないと思った。
ーきっとそろそろ現代に帰れるに違いない…ってあれ?
「今週末にある花火大会、二人で一緒に行かない?」
ぼうっとしていた私は、倫太郎の一言に口を開いたまま言葉を失った。
あまりに驚く姿に、彼は困惑したように私を見つめた。
「嫌だった?」
「あ…いえ。いいんですか?私で。」
「もちろん。約束ね。」
倫太郎はそう言って私の頭をポンポンと叩くと、自転車に乗り颯爽と家に帰って行った。
ーどういうことだ?花火大会。過去でも倫太郎と行った気がする。てか話は続いてるんですか…。
これから私に待ち受ける展開が気になるが、倫太郎が私を誘った意味は大したものじゃないだろうと思っていた。
一夏の思い出であった一度目の初恋とは違って、二度目は一回だけのとびきりの思い出を作ってやろうじゃないかと少し気合が入ってきた。