表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/22

最後の記憶

あなたの初恋は素敵な思い出でしたか?

初恋の相手と数年付き合って、結婚するーなんて夢のような恋愛をされる方、時々いますよね。

私はたった一夏の初恋に、高校時代全てを縛られた苦い思い出でした。

時々夢にも出てきます。今でさえ憎い相手。


でも私は仕事が落ち着いた20代後半に幼なじみと結婚をし、二人の年子の兄弟を出産しました。

私は理想に描いたような幸せな家庭ー夢を叶えたように見えますよね。


確かに結婚して専業主婦になった私は、平凡で幸せな新婚生活を送りました。

ほどなく妊娠しましたが、出産後に夫はブラックな支店に転勤し朝から夜中まで仕事、両親も大学二年の時に亡くしていた私はまさにワンオペ育児をすることになりました。

それから年子の妊娠と出産…多忙な1年半を送った私は、義実家への帰省中に過労でとうとう倒れました。


私が目を覚ますと、個室のベッドの上にいて、左腕には点滴をしていた。

鳥のさえずりが聞こえ、早朝だということが分かった。

たしか倒れたのは土曜日の夕方だった。


私はふと子供のことが心配になったが、きっと夫や義父母が面倒を見ているだろうと、もうすぐ面会に来てくれるだろうと思った。

何年も決まった時間眠れなくても働かせていた身体は、一晩のうちになんだか憑物がとれたように軽く感じる。


「面会に来たらさっさと帰らせてもらおう。顔でも洗いに…」


私はベッドから腰を上げ立ち上がり、洗面所に向かおうとした。

しかし酷く目眩がし、私の視界は暗くなった。

そして歩き出した一歩は点滴に絡まり、うまく手をつけられないまま点滴棒ごと床に激しく倒れ頭を打った。

そもそも倒れてから今までの記憶もないのに、看護師さんも呼ばずに動いた私は浅はかだった。


意識が朦朧とする中、窓の向こうの景色が見える。

雲一つない晴天の日差しの下に、校舎がある。

ーあれは忌まわしき初恋をした、母校の校舎じゃないか。


私はそこで意識が事切れ、目を閉じた。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ