49 迷子
今回はカズヒロはいません
闘技場ルール、それに関して少し述べておこう。
参加人数は一人から可能。チームを組んで参加する場合は最大六人までとする。
このオリジナルダンジョンで起きたことは、一切責任を負わない。なにが起きようと、⦅勝手にやったこと⦆と処理される。この項に同意を得られない場合、参加権はない。
殺人・八百長なんでもあり。これはルールブックに載っている項目ではないが、観戦する子供ですら知っている暗黙のルールである。
参戦者がなんでもありなら、観戦者もなんでもありである。コロシアムでは誰が生き残るか死ぬかの賭け事でもちきりだ。
参戦にあたって、武器の持ち込みアイテムの使用は法が許す限り大抵はOKである。もちろん、主催は参戦者に協力するような支援援助はなにもしない。用意は各自で。
コロシアムでは随時内容がモニターされ、鏡を通して向こう側の状況を見られる⦅鏡射影魔法⦆を用いて実況解説される。
鏡魔法は、送信機となる手鏡虫が見た視覚聴覚情報を、受信機となる大鏡で映し出す。ドローンとモニターといったところである。
もっとも、このバトルロイヤルにおいては数が多いため、観戦者がどこを見るか迷ってしまうのが難点である。
*
地上2階・擬似レヴィン市エリア――
このエリアには、カズヒロのパーティの中で街に一番慣れ親しんでいるジースが転移していた。この都市のエリアは他に比べると転移している人数が多く、少し歩けばあちこちで戦闘が開始されている。
ジースはといえば、気配遮断を行いその喧騒の中悠々と歩いて回っていた。
参戦者は報酬の⦅伝説の剣⦆ではなく、数百億エルもの報酬金の方が目当ての人間が大多数を占めている。それもそうだ。性能もまともに公開されていない謎の剣を求める人間が、どこにいようか。
正直ジースとしては金が欲しい。カズヒロの願いを叶えてやりたい気持ちもある。故に全力で勝つ気でいた。
だからこんな程度の低い雑魚を相手にする時間も力も惜しい。そう思ったのだ。
実際自分の気配遮断に気付けない程度の相手は、そもそも相手にすらならない。
(とりあえずカズヒロと合流だな……)
階層を移動できる地点を探しているうちに、ジースは面白いものを見つけた。勇者パーティの隠密担当・ヨシヤである。
ヨシヤもジース同様気配を消して練り歩いていた――のだが、他の雑魚にはバレていないものの、ジースにはバレバレである。
無駄な行動を避けて行こうと思っていたジースではあったが、面白そうなおもちゃを見つけてしまった以上、遊ぶ他ない。
それに元より彼は、ちょっかいを出すのが大好きな悪戯小僧のスリ師なのである。
*
地上4階・森林エリア――
木漏れ日が心地よく小鳥のさえずりすら聞こえるこのエリアに飛ばされていたのは、残る二人。アヴィとマルンである。
「マルン、私から離れないでくださいね」
「う、うん!」
「大丈夫ですよ。きっとカズヒロ様と会えますから」
森の中を散策し始めてはや数分。未だ敵とすら遭遇していない二人は、不安でいっぱいだった。互いに戦闘経験がほとんどなく、アヴィはサバイバルをしていたから余裕はあれど、マルンはついこの間までただの町娘だったのだ。
不安そうにアヴィの後ろを歩く姿は、誰が見てもこの場に似つかわしくない存在だった。
歩いていると、アヴィの耳がぴくりと動く。音が聞こえる。森の自然的な音じゃなく、人の発する声だ。
二人は木の影に隠れて、音のする方を見やる。
木や草木を挟んで奥の方、少し広場のように草木が生えずに広く取られたその場所に数人の人間がいた。とは言っても、そのうち二人は伸びて倒れていたのだが。
鉄槌を持った大男と細身の魔術師が横たわっている。
おおかた戦闘が終了した後なのだろう。そばには勝ったであろう二人の男女が佇んでいた。
杖を持った女性はオロオロとしながら、横にいる男に話している。
そこにいたのは、勇者パーティの二人。キヨヒトとミユだった。
アヴィは話を聞いただけだったが、カズヒロのような顔立ちの種族は滅多にこの世界にいないことから、勇者パーティだと察しがついた。
このままここにいてはまずい。バレてしまったらカズヒロに迷惑がかかる。そっとその場から去ろうとした時、マルンが誤って木の枝を踏んでしまった。
さほど近い距離でもなかったが、パキリという音はしっかりとキヨヒト達の耳へ届いた。
「誰だ!? 出てこい!」
「た、探知魔法掛けてみよっか?」
その会話にアヴィはハッとした。シラを切ってもその魔法を使われたらばれてしまう。どの程度の範囲をカバー出来るか知らないが、この距離ならば簡単にわかってしまうだろう。
仕方なくアヴィ達は草むらから姿を現した。アヴィはマルンを守りながら勇者の前へと立った。
「キヨヒトくん、お、女の子だよ……!」
「……獣人か。奴隷? 酷いな……」
その言葉にアヴィは苛立ちを覚えた。たとえ勇者であろうとみなに平等な考えを持っていないということ。獣人は奴隷であるという固定概念に。
怪訝そうな顔をしていると、キヨヒトが喋る。
「安心しろ。無抵抗の女子供を相手にしたりはしない。俺達は悪役や冒険者じゃなく、勇者だからな」
「「!」」
やはりアヴィの思った通りだった。マルンはどうやら気付いていなかったようで、あからさまに動揺している。
どうにかして落ち着けないと、とアヴィが振り向く。
「ねえ、アヴィちゃん! ここで倒しちゃおうよ」
「だめです。カズヒロ様の復讐を勝手にこんな形で終わらせるものではないです。それに相手の力量すらわからないのに、闇雲に動くべきではありませんよ」
「ちぇっ」
アヴィのことを許してくれたおかげで、優しく諭すだけで理解してくれる。初めて会った時の不安から思えば、だいぶ成長しただろう。
マルンは感情的になってしまうと、スイ国国王の一件のように何も考えずに突っ込んでしまう節もあるが、冷静な今の状況であればちゃんと話を聞いてくれるのだ。
「君達は二人で参加――ってわけじゃないか」
「……ご主人様も何処かにいらっしゃいます」
「やっぱり奴隷だ。酷いことをする……」
「ハッ。どの口が……」
「? なんか言ったか?」
「いえ別に」
寝過ごして投稿忘れてました。




