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38 遺物の在り処

「多分、彼に呪いを掛けた人物と、我々を襲った男は一緒だと()()()()


 ⦅思います⦆の部分を強調して話す。俺が抹消してしまったことを、姫君もお怒りのようだ。こうして多方面から責められるのは少しキツイな。さて、姫様がそんな見解をするのはどう言った理由なのか。詳しく聞いてみようじゃないか。


「古の勇者の話をご存知ですか?」


 その切り出しに俺達三人は反応した。それが察知されたかは別として、姫は話を続ける。


 聞けば、彼女の国であるスイ国には、全部で五つある勇者の遺物のうちのひとつ⦅星の孤剣(こけん)⦆が安置されている――という、伝説がいい伝わっているらしい。

王国側も実際は存在しないと否定しており、リン姫も当然真実を知らない。

 襲撃してきた男は、星の孤剣の在り処を聞いてきたようだ。ゼッドも遺物に固執していたし、話の筋は通る。それが事実なのであれば相当まずい。


()()()()()()()()()()()()()()()


 これは俺にとってすごく良くない展開だ。ティアフォールドのクソ王国に復讐するという夢が崩れる。それが王国側の使者とかいうのであれば更にまずい展開だ。

しかも大量の死人を出してまで奪おうとしている。もしかすると、既に向こうも遺物を所持しているかもしれない。だったら余計やばいぞ。

 なんと言っても、俺の知らない魔法を使っている。……いや、俺の勉強不足なのもあるが、それを含めてだ。

――なんとしてでも、そいつらよりも早く遺物を全て手にしないと。いずれ遺物を既に持っている俺達に直接接触してくるだろう。


「いました!」


 俺達が話し合っていると、食堂の入り口で大きな声がした。見たことのある制服の人間が複数人入ってきた。あの制服は――冒険者ギルド役員だ。

この村にはギルドは無いはずだが……一体どうして?

 ぞろぞろと入ってきた役員達は、俺達の座るテーブルを囲んだ。そうして、中でも一番偉そうな態度を取っている、資料を持った男が話を始めた。


「姫を助けていただき有難う御座いました。今よりスイ国への引き渡しを行いますので――」

「は?」

「はぁ、ですから……」

「悪い、今のは聞き返したって意味での⦅は?⦆じゃない」

「……」


 役員はわざとらしくため息をつきながら話し始めた。どの世界もこう言う役員の態度は悪くなるよう作られてるのか?

 役員が話した内容を意訳すると……姫誘拐の隠蔽を図ろうとしたところ、まんまとスイ国にバレてしまった、という間抜けエピソードだった。

結局姫君は友好の道具として使われることはなく、心配になったスイ国が連れ戻すよう言ってきたらしい。だったら最初から大事な姫を相手国に旅をさせるななんて思ったが、問題はそこではなかった。


「姫を早い段階で救ってくれた冒険者にお礼がしたい、護衛も兼ねて来てくれないか……とのことだ」


 心底嫌そうに読み上げる役員。嫌なのはこっちの方なんだけどな……。

 だが先程の話を聞いてしまった以上、遺物がスイ国にある説が濃厚になった。海を渡って行くなんて滅多にないだろうし、この機会に見に行ってみよう。

ジースの武器を作った店もあるし、俺の武器調達にいいかもしれない。


「わかった、引き受けよう」


 *


 船上から見る夜の星々は綺麗だ。海に月が反射して美しさを引き立てている。そんな幻想的な夜、姫君は海へと祈りを捧げていた。

いくら昼間は暖かいとはいえ、今は夜だ。海の上ということだけあり、多少は冷えが生じる。

 アヴィはそんな姫君の背後からやってきた。もちろん、姫は彼女の存在に気付いてはいたが、祈りを続けた。


「風邪、ひいちゃいますよ」


 同室のマルンが「リンが消えちゃった!」と泣き喚くので、せっかく眠っていた三人は叩き起こされて船内の捜索に当たっていた。

アヴィがあらかじめ持ってきていたブランケットを姫君の肩へと掛けた。


「……」

「あ、ご、ごめんなさい! 亜人に話し掛けられたら嫌ですよね」

「いいえ、ブランケット有難う。それにうちの国は奴隷制度はないわ」


 にこり、と柔らかく微笑むリン姫。アヴィはリンの奴隷はいないという言葉に衝撃を受けた。カズヒロに知られでもしたら、もしやするとスイ国に置いてかれるかもしれない。

カズヒロは優しいから自由になれる国へと置いてくれるかも、と。

そのためアヴィは、今聞いたことをカズヒロに言わないと心の中で固く誓った。


「私の国では、遺灰を海に撒くんです」


 リンが遺体を一緒に国に持って帰る、と強く話したのにも関わらず、ティアフォールドは解剖して調べると言って聞かなかった。スイ国側も姫が無事に帰ればそれでいいと、姫の主張は取り消された。

だから母国に遺体が戻るのは大分後だろう。もしかしたら戻らないかもしれない。

だから姫はこうして、海に対して祈りを捧げている。


「貴女は――」

「うぇ!? は、はい」

「彼に仕えていて問題はないの?」


 まさかの質問にアヴィは驚いた。何が心配だというのだろう。

アヴィの中では、カズヒロは神様のような存在だ。そんなカズヒロが何の問題になるというんだろう。


「マルンも王子様とか言って気に入っていますけど、彼、横暴そうじゃないかしら? 危なくなったら――」

「それは余計なお世話、そして失礼と言うのです。お体が冷えないうちに船内にお戻りください」


 そんなアヴィの神様が侮辱された。アヴィは真顔で姫君に言った。失礼だとわかってはいるが、余りにも怒りが抑えられなかったのだ。

リンはそんな彼女を見て、申し訳なさそうに後を追った。

寝る前に投稿するもんじゃないですね。

予約するところをそのまま投稿してしまいました。失礼しました。

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