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いつもの笑顔
「詩穗も苦しかったんだな。俺、何も知らないで、ごめん。詩穗は、俺と出会う前の生活に少しずつ戻っていると思ってた。いや、戻ってほしいと思ってたのかもしれない。お母さんって、いいな。居てくれて、本当に良かったな。」私は、頷いた。「ずっと苦しかったけど、すごく時間もかかったけど、自分の新しい道をみつけられた気がする。私は、才能って、きっとみんなあると思う。ただ、忙しい毎日のなかで、自分と向き合う時間がなくて、気が付けないのかもしれない。自分の大好きな事のなかに、隠れていて、それは、いつでも花開く機会を待っている。そんな気がする。」聖也君は、ふっと優しく笑った。「詩穗らしいな、俺もあるような気がしてきたよ。」あっ、聖也君が、いつもの優しい話し方、いつもの笑顔になった。良かった―。胸のつかえが取れて楽になった感じ。なんだか安心した。




