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あなたなら大丈夫。
「詩穗のお母さん、俺、気が付かなかった。」聖也君が、全てを無かった事にしたいかのように、平静を保とうとした。ママ、涙目の顔。「あなた、大変だったのね。ずっと傷つき、ずっと淋しかったのね。でも、あなたの気持ちは、詩穗には、わかると思うの。家出をした事のないあなたが、家出をした詩穗の気持ちをわかって、一緒に居てくれたように。詩穗も、きっとわかって一緒に居ると思うわ。」ママが、優しくきっぱりと聖也君に言った。そして、聖也君に何も言ってあげられなくて、困っている私にしっかりって、言うように力強く頷いてから、ゆっくり微笑んだ。「あなたなら大丈夫。」と言われたような気がした。




