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わからないまま
俺ん家、建築屋なんだ。じいちゃんが社長で親父が副社長だったんだけど、親父は、ハッキリ言って向いてなかった。本人も違う仕事がしたかったらしい。じいちゃんとケンカばかりしてて、酒飲むようになって、アル中だよ。母親は、俺と兄貴を置いて出ていったよ。それが、じいちゃん居なくなって、勝手な両親が、やり直したいとか言い出した。ふざけるな、どっか違うところで勝手にやり直せって、言ってやったよ。ばあちゃんは、泣いてた。じいちゃんとばあちゃんに育ててもらったんだ。あいつらなんか、じいちゃん大変な時にも来なかった。俺は、許せない、認めない。よく、ある話だよ。でも、現実に俺の家族で起きた。俺、そんなとこの息子だから、詩穗に、迷惑かけたくない、両親が居る詩穗には、わからない世界だよ。ごめんな。」真っ直ぐ前を向いて話していた聖也君は、静かに地面を見た。「そんな事は、ない。」私が言った。その時、もう一人、同じ事を言った人がいた。目の前に居たのは、私のママだった。




