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悲しい顔。
聖也くんの悲しそうな顔をはじめて見た。一瞬、言葉が出なかった。「あれ、みんなは?」いつもの自分に戻ろうとしている・・・聖也くん。「みんな、帰ったよ。雨で、濡れちゃったね、大丈夫?」と言いながら、タオルを渡した。私も居なくなりたいって思った。こんな聖也くん見てられない。「私は、大丈夫だよ。あの子と一緒に居てあげたら。」あれ?私は、何を言ってるんだ?自分でも良くわからない。ただ、あまりにつらそうで。「詩穗?何、言ってるんだよ。俺は、自分で決めて選らんで、帰って来たんだ。俺の気持ちも聞かないで、勝手に決めないでくれよ。」そんなつもりじゃなかった。いつもの聖也くんに戻って欲しかっただけだった。「ごめんなさい。」思いが溢れて、他の言葉がみつからなかった。私は、聖也くんが、自分で思ってたよりずっとずっと、大切な人になっていた事に気が付いた。




