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戦えない落ちこぼれは知力で成り上がる  作者: 加藤 成
第1章 異世界
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第13話 楽しく

「美味しい!こんなしっかりしたもの1週間ぶりです!」



今、ヴァンさんが作ってくれた昼食を食べてるんだけど、これがすごく美味しい!



「翔太様にそう言ってもらえると、作った側としても冥利に尽きます」



「ホントどれも美味し…ッヒ!?」



ヴァンさんの料理を褒めていたら、僕の机の前にフォークが刺さる。それをやった僕の向かい側に座る犯人は、既に席にはいない。



「翔太ぁ…。それは私の料理が不味かったという事かぁ?んん゛?」



速い!?いつの間に背後に!?自慢じゃないけど時速300以上で走る新幹線ですら、今の僕なら止まってるように見えるのに。なのにヒスイの動きを目で追うどころか、反応すら出来なかったなんて。ん?首元に冷たいものを感じる…ッ?!



「それで翔太、私の料理は不味かったか?私も人間だ。答えによっては動揺して、手に持ってるナイフで君の頸動脈切ってしまうかもしれない。さて、答えてくれないかな?」



それって最早脅迫じゃん!いや、美味しかったと答えればいいだけだ。現に美味しかったし。ただ比べると、ヴァンさんの料理の方が…というだけだ。何も焦ることはない。焦ることはないのに、何故か鼓動は気持ちとは反比例して加速していく。

…ふぅ……よしッ!



「美味ーーー」



「反応を見ればわかるじゃないですかヒスイ。美味しくなかったんですよ」



「ーーーえ?」



えぇぇぇぇぇぇ!何言っちゃってるのこの国の女王様は!?それ僕への死刑宣告と同義だよ?



「ほぅ…。そんなに死に急ぎたいのか」



勝手にその人が言ったでけだからァァァァァァ!僕の話を聞いてェェェ!

ギャァァァァァァ!ナイフに力入れないでェェェ!切れるッ!!頸動脈切れちゃうからァァァァァァ!



「ふふふッ。嘘ですよ。あなたの料理も美味しいというのは、私も知っていますから。今日のあなたは、からかいがありますね」



「ーーーそうなのか翔太?」



「はい!とても美味しかったです!」



「そ、そうかそうか。ま、私が作ったんだし当然だな。あまり年上をからかうもんじゃないぞ」



からかったのはアスカ様だから!

でも、どうやら危機は脱したみたいだ。まだ首元にナイフあるけど。



「さて翔太君。ご飯も食べたことだし、貴方のこれからについてお話ししたいだけど。何かしたい事とかあるかしら?あるなら遠慮なく言って頂戴。私はできるだけ貴方の意見を尊重するつもりよ?」



それはすごく嬉しいんですが、それよりまず首元に突き付けられているナイフについて触れてほしかったです…。



「その前にアスカ様?アスカ様からもナイーーー」



「ちょっと待って翔太君。そのアスカ様って言うのやめない?世界主から全部聞いてるんでしょ?ちなみに私はまだ25歳よ」



確かに聞いてるけど…。わざわざ年齢を言ったってことは、そう呼べってことだよね?

ナイフはもう諦めよう。何言っても無駄な気がしてきた。



「…アスカお姉さん」



「「え」」



「あ、ナイフ消えーーーうわっ?!」



「やっと呼んでくれたわねッ!その言葉をずっと待ってたわ!」



ヒスイさんが僕の発言にたじろいてくれたおかげで、ナイフが離れたのに、今度はアスカ様…じゃなかったアスカお姉さんが抱きついて撫で回してくる。

僕は変な磁力でも発してるんだろうか。



「なるほど、それでアスカ様は翔太様のことを気にかけていらしゃったのですか」



「さすがねヴァン。じゃあそこで固まってるヒスイに説明してあげて。その間私は、可愛い可愛い従兄弟を撫で回しておくから」



「………」



「かしこまりました。いいですかヒスイ様?今アスカ様が言ったように、翔太様とアスカ様は親戚の関係にあるのです。と、言っても私が理解したのはここまでです。なので後はアスカ様、お手数ですが説明をお願いします」



「そこまで分かれば十分すごいですよヴァン。そうですね、先ずは私が誰なのかっていうところから説明しましょうか。最初に言っておくと、私は間違いなく、この世界で産まれた人間…アスカ・フォン・ラースです。でも、私にはアスカ・フォン・ラース以外にもう1つ違う記憶があります。遠い遠い昔、この世界に初めてきた記憶…『瀬戸 明日花』の記憶が」



「セト…アスカ…。聞いたことがあります。確か初めて異界から召喚された4人のうち、1人がそのような名前だった気が…」



へぇ、ヴァンさんはその話知ってるんだ。流石というか、なんというか…。亀の甲より年の功ってやつかな?

逆にヒスイさんはもうパンク寸前だね。そのうち頭から煙が出るんじゃない?まぁ、物理的に出たら怖いけど。



「そう、その瀬戸明日花で間違いありません。でもあくまで記憶があるっていうだけで、転生したってわけじゃないんです。なので彼女が持ってた力は私にはありません。まぁそこはどうでもいいですね。話を戻します、記憶があるということは、その人の血を多かれ少なかれ受け継いでる。つまり私のご先祖は瀬戸明日花。そして先祖の苗字が瀬戸なら、私の苗字も瀬戸。そして翔太君の苗字もそう」



「ま、待ってくださいアスカ様。もしそうだとしても、翔太が同じその瀬戸明日花という人の血を継いでいるとは限らないじゃないですか」



ま、そう考えるよね普通。この世界はどうか知らないけど、僕たちの世界じゃ『瀬戸』なんて苗字いくらでもいるし。



「間違いなく継いでいますよヒスイ。瀬戸明日花の戦い方は魔法では無く、スキルを使って戦ったんですから。そして、翔太君以外に初めて世界主に会った人です。彼女と同じスキルを持って、尚且つ世界主にも会った。これだけの結果があって血を継いでないなんて言えるわけないでしょ?もう親のいない私にとって、同じ血が流れてる翔太君だけが唯一の家族みたいなもの。なのに敬語で、ましてや様付けなんて悲しい。だから指摘したんです」



空気が重い…。僕は知らなかったけど、アスカお姉さんの親はもう亡くなってるんだ。他の2人は思うところがあるのか、俯いて黙り込んじゃった。



「そんなしんみりしない。と、いうわけで敬語は無しね翔太君。この際だからヒスイも敬語は禁止ね。これは命令よ」



「は、はい…」



戸惑うのはわかるよヒスイさん。相手は一応この国のトップだもんね。そんな相手にタメ口って、側から見たら自殺行為の何ものでもないもん。



「よし。じゃあ話を戻して、翔太君の今後ね。何かしたいことはある翔太君?」



「うーん、これと言って特には…」



正直、本当の勇者なんて探す気なんてない。戦力外がわかった今、のんびりとこの世界を楽しみたい。



「これと言ってやることが無いのか。じゃあ翔太ーーー」



みんなの視線がヒスイさんに集まる。



「ーーー学園、一緒に行かないか?」



そうして僕は学園に通うことになった。



でも僕…魔法使えないんだけど…。

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