「槌と斧」 トールとオーズ
ボードゲーム First impactの関連小説です。
ボードゲームの世界観を広げられる作品になれればと思っています。
場面1 :昼 ヴァルハラ
トール ・「あぁ~。終わった~。よしっ。一杯ひっかけてくるか。」
オーディン・「騒ぎは起こすなよ。」
トール ・「黙れ。クソ親父!」(中指を立てる)
場面2 :アースガルズ ヴァルハラ 正門前広場
ガヤ1 ・「おぃ、未知の鉱石だとよ。」
ガヤ2 ・「うへぇ…ってことはこれがありゃグングニルに匹敵する
武器が作れるかもしれねぇのか。」
トール ・「ん…グングニル…。」
ガヤ1 ・「しかしスリュムヘイムって…こりゃユミルの地じゃねぇか…
こんな時期にわざわざ行くなんざ、あの赤髪ぐらい…」
ガヤ2 ・「おぃ。」
ガヤ1 ・「ん?…おっと…」
トール ・「ん~…雷を収めた鉱石フルグライトを求む。ブロックル…
報酬は…神器。おぃおぃなんだよ。面白そうじゃねぇか。」
ガヤ1 ・「なっ。」(「言った通りだろ」と半笑い)
ガヤ2 ・「あぁ。」(「単純だ」と肩をすくめる)
トール ・「なんだっ。」
ガヤ1 ・「いや、別に…」
ガヤ2 ・「やべぇ…行こうぜ。」
ガヤ1 ・「そ、そうだな。」
オーズ ・「すみません…スリュムヘイムに行くにはどうしたら良いの
でしょうか?」
トール ・「ん?…そりゃヨトゥンヘイムの…って。何だ。お前も神器
狙いか?」
オーズ ・「えぇ…まぁ…。そんなところで…」
トール ・「はっ。丁度良いじゃねぇか。…俺も今から行こうと思って
たんだ。一緒に行くか?」
オーズ ・「えっ…そのご迷惑でないでしょうか?」
トール ・「ちいせぇこと言ってんじゃねぇよ。ほら、行くぞ。」
オーズ ・「え…ぁ、はい。」
場面3 :昼 ヨトゥンヘイムに向かう道中
トール ・「しかし…お前は体の割にしゃっきりしねぇ奴だな。」
オーズ ・「ぇ…。あぁ。まぁ…。よく言われます。」
トール ・「自己紹介が未だだったな。俺はトール。他の奴等は赤髪
なんて言いやがるがお前は呼ぶなよ。…まぁケンカが
してぇなら構わねぇが。」
オーズ ・「トール神…では、貴方がオーディンの…」
トール ・「クソ親父の話もヤメロ。張った押すぞ。」
オーズ ・「…すみません。」
トール ・「っで、お前の名は?」
オーズ ・「オーズ…と…はぃ…」
トール ・「ったく、本当にシャッキリしねぇな。…んだ。クソ。
橋が壊れてやがる。」
オーズ ・「…。迂回路は無いのでしょうか?」
トール ・「知らねぇ。…くそ、スレイプニルがありゃこんな所…
…あ~ダメだ。やる気無くした。帰るか。」
場面 :岩場の上に寝そべりトール今から引き返すべきか、
日が明けてからかを考える。
オーズ ・「ん~…あの木…それから…。」
トール ・「あん?何やってるんだ。」
オーズ ・「簡単な吊り橋を創れないかと思いまして…。」
トール ・「んなこと出来るのか?」
オーズ ・「はい。たぶん…その…やってみないと何とも…」
トール ・「吊り橋ねぇ~。まっ、なんでも良い。向こうに渡れる
モンが出来たら起こしてくれ。俺はそれまで寝る。」
オーズ ・「ぁ…はい。わかりました。」
場面4 :夜 ヨトゥンヘイムに向かう道中 渓谷
オーズ ・「この編んだツタを通して…。後は重しになりそうな物…は…」
トール ・「ZZZ…ZZZ」
オーズ ・「失礼しまぁ~す…」
(トールの頭付近にある大岩を両手で持ち上げる。)
SE :カラカラ…(大岩に乗っていた小石がトールに当たる)
トール ・「っ、た…いて…。テメェ!喧嘩売ってんのか!」
オーズ ・「ぇ、あぁ…すみません…」
SE :ドシンッ…(大岩を一回置く)
トール ・「…」(大岩を軽々と…力はあるみてぇだな。)
オーズ ・「もう少しで橋も出来ると思います。…っと。距離は…これくらい…
よし。むぅ…ふぅ~~~。はぁ!」
SE :ビュン…ドシン(大岩が飛んで、対岸に落ちる音)
トール ・「おまえ…」
オーズ ・「はい?」
トール ・「なんだよ、なんだよ。良い腕を持ってやがんな。気が小せぇ野郎
だから贅肉の塊かと思ったぜ。狙った所に落とすなんざ器用な
真似するじゃねぇか。」
オーズ ・「贅肉…」
トール ・「はっは~♪っで、これからどうすんだ?」
オーズ ・「もう一つ大岩を持って来てそれにこの縄を付けます。」
トール ・「っで、その岩も向こう岸に投げるわけだな。
よし。任せろ。」
オーズ ・「ぇ…あぁ…はぁ。」
トール ・「これくらいだったか?」
オーズ ・「いえ、もう少し大きい物の方が良いかと…」
トール ・「ん?さっきと同じぐらいだろ…」
オーズ ・「いえ…これでは2人渡るには少し…」
トール ・「だぁあ~。面倒臭ぇ!もういい。お前が選べ。」
オーズ ・「はい。では、コレが…良いかと…」
トール ・「コイツか。…良いだろう。俺が投げてやる。」
オーズ ・「あの…では…さっきの岩の右、切り株がある辺り…」
トール ・「どおぉ~りゃあぁあ!」
SE :ビュン…ズザザザザーァ(1つ目より遠くへ飛んでいく)
ブチン(ロープが切れる音)
トール ・「おっしゃ!俺の勝ちだな!」
オーズ ・「これは…」(トールの目的がわからずにおたおたする。)
トール ・「お前が指定した岩を、お前より遠くに飛ばした。俺の勝ちだよな。
なっ。」
オーズ ・「橋を作るのでは…」
トール ・「…ん…?…はッ‼」
オーズ ・「丁度いい岩もロープも…作れませんが…」
トール ・「ちいせぇ事言いやがって…ほら、こっちに来い。」
オーズ ・「えっと…。なんでしょう。」
トール ・「丸く成れ。」
オーズ ・「こ、こうですか?」
トール ・「なんか違うが…まあ良いだろ…」
オーズ ・「えっと…うぉ…」
場面 :トールが丸くなったオーズを持ち上げる。
トール ・「口閉じてろ…舌噛む…っぞ‼」
SE :ビュン…ズザザザザーァ(オーズが対岸に落ちる)
トール ・「はっは~♪ これで文句ねぇだろ。」
オーズ ・「まったく、無茶をする方だ…」
トール ・「次は俺を…やべぇ。アイツがいねぇ…」
オーズ ・「トール!樹に括り付けてあるロープを持ってくださ~い。」
トール ・「ロープって…これか?」
オーズ ・「行きますよぉ~。…むんっ」
トール ・「ん…うぉっ」
SE :グオオォー…ドシーン…(木を根っこごと対岸まで引っこ抜く)
トール ・「ぐぉっ…」
オーズ ・「あ、危ない…」
(小さな声でトールに注意を促す)
トール ・「うおおぉ…」
(茂みに飛び込む)
SE :ドシーン(土の付いた木がトールがさっき居た所に落ちる)
トール ・「てめぇ!何しやがる!お前のせいで…」
オーズ ・「渡れましたね。」
トール ・「…おぉ…。悪い。」
オーズ ・「いえいえ。」
トール ・「しかし、無茶をやりやがる…」
オーズ ・「貴方がそれを言いますか?」
トール ・「俺のは失敗しないとわかっていた。」
オーズ ・「まぁ、結果渡れたんですから。ちいせぇ事は気にせず。」
トール ・「てぇめ…。言うじゃぇねか…よっ。」(肩を殴る)
オーズ ・「っと。はは。いえい…えっ!」(肩を殴る)
トール ・「…イテェ。加減ってのを知らねぇのか。」
オーズ ・「おっ、家があります…ブロックルさんのでしょうか?」
場面5 :夜 森の中 ドヴェルグ兄弟の家
トール ・「…あぁ。そうだ。あのちいせぇ家は間違いねぇ。」
SE :コンコン(ノックの音)
カンカン…(鉄が叩かれる音)
オーズ ・「…? 留守ではないですよね…もう一回…」
トール ・「おら。代われ。っしょ。」
SE :ガコッ(屋根の部分を持ち上げる)
カンカン…(鉄が叩かれる音)
ブロックル・「兄ちゃんお客さんだよ。」
シンドリ ・「うるせぇ…今はコイツを仕上げるんだよ。」
ブロックル・「…。兄ちゃん、トール神だ。」
シンドリ ・「うるせぇ。トール神なんか居ねぇよ。奴ァは死んだ。」
ブロックル・「兄ちゃん…」
トール ・「仕事は捗ってるみたいだな。ドヴェルグ兄弟。」
シンドリ ・「うるせぇ。トール神の真似をしやがって。奴ァは死んだ。」
トール ・「死んでねぇよ!」
シンドリ ・「うぉおぉ…。」
SE :カランカラン(驚いて持っていた槌と鉄を落とす)
シンドリ ・「トール神じゃねぇか。なんだ生き返ったのか?」
トール ・「だから死んでねぇって。ったく…コイツが出した張り紙を見て
来てやった俺に随分な挨拶だな。」
シンドリ ・「そうかそうか…ってことはお前は死んでなかったんだな。
ビックリした。」
トール ・「しつけぇんだよ。叩き潰すぞ!」
シンドリ ・「…っで、隣の大男はお前の兄弟か?」
オーズ ・「俺もブロックルさんの張り紙を見て来ました。
石を見つけたら神器を作ってくださると…」
ブロックル・「やったね兄ぃちゃん。赤髪が釣れた釣れた。」
シンドリ ・「黙ってろ。あぁ~。それなんだがな。ちと訳ありで…なぁ…」
トール ・「構わねぇよ。訳ありなんてのは承知の上だ。」
シンドリ ・「そうか。ふふふ。そう言ってもらえると助かる…
先日、大雨の日に近くの砂漠で雷が落ちたんだ。俺たちは
雨が上がってからそこに行ったんだが、そこに雷に打たれて
変形したと思われる鉱石を見つけてな…」
トール ・「なんだよ。自分で見つけてるんじゃねぇか。」
ブロックル・「ここからが本題なんです。」
シンドリ ・「お前は黙ってろ。俺が話してるんだ。えぇ~っと何だっけ。」
オーズ ・「あ~…雷に打たれて変形した鉱石を見つけたんですよね。」
シンドリ ・「おぉ…そうだった。…それでだな…その石はとても脆く
砕けやすいのだ。ブロックルが取り上げる時には
ポロポロと崩れてしまった。」
ブロックル・「正確に言うと、僕はちゃんと取り出した。取り出して、
兄ちゃんに渡そうとしたら、兄ちゃんが落として
踏んずけてコナゴナに…。」
シンドリ ・「お前は黙ってろ。俺が話してるんだ。えぇ~っと…」
トール ・「どーでも良いが、そんなもんが神器になるのか?」
シンドリ ・「あの石はとてつもない力を秘めてる。見た目は…そのアレだ。
世辞にも綺麗とは言えんが…。あ~…それよりも大事なことは…
その雷が落ちた所はミドガルズオルムの巣の前なんだ。」
トール ・「そっちを先に言え馬鹿野郎。良いね良いね。面白いじゃねぇか。
って事はあの蛇野郎を倒したうえに、俺様の神器まで
手に入るってか。正に一石二鳥じゃねぇか。ははは!」
シンドリ ・「やってくれるか?」
トール ・「当たり前だ。言われねぇでも俺が蛇野郎を干物にしてやる。」
ブロックル・「すげぇ。やっぱりトール神は豪傑だね。兄ちゃん。」
シンドリ ・「まったくだ。トール神に任せておけば間違いないな。」
オーズ ・「あのぉ…。」
シンドリ ・「どうした大男。」
オーズ ・「石を持って帰るだけで良いんですよね…?」
シンドリ ・「あぁ。…。あ~…あぁ。もちろんだ。別にミドガルズオルムを倒す
必要は無い。全然、全く。…なんせ、ユグドラシル最大の大蛇だ。
アレを倒せるのは王くらいだろう。ははは。」
SE :ドンッ(岩の壁を殴り壊す)
トール ・「俺が倒すっつてんだろ。王だなんだぬかしてんじゃねぇ。」
シンドリ ・「あぁ…。そうだ、そうだ…すまなかった。
いや、ほんとに…悪かったよ。」
トール ・「テメェも気の抜けた事を聞いてんじゃねぇぞ。
ヒヨッてんなら帰れ。」
オーズ ・「しかし、わざわざ危険を冒して今、倒さなくても神器を得てから
倒すことを考えることも…」
トール ・「エモノがなけりゃ何も出来ねぇのか腰抜け!」
オーズ ・「あ、いや別にミドガルズオルムが怖いわけではなく
倒すのには賛成です。はい…」
トール ・「…~はは。なんだよ。てっきりビビってるのかと思っちまったぜ。
悪かったな。…まぁ、木の根っこごと俺を運ぶくらいだ。
たかが蛇にビビったりしねぇよな。ははは!」
オーズ ・「…。」
シンドリ ・「じゃ、地図を渡そう。俺とブロックルで目印を付けてきたんだ。
フルグライトはそこにあるはずだ。
くれぐれも丁重に扱ってくれ。」
トール ・「おぅ。任せておけ。」
場面6 :夜 森を抜け 砂漠地帯 ミドガルズオルムの巣の前
トール ・「あれが、野郎の巣か…おーし…。」
オーズ ・「ちょっと、待ってください。」
トール ・「何だよ。水差すんじゃねぇよ。」
オーズ ・「今、行くんですか?」
トール ・「あたりめェだろ。…こんな所でまごついてどうすんだ。」
オーズ ・「もう夜ですよ。」
トール ・「そうだな。」
オーズ ・「松明を持ちながら戦うんですか?」
トール ・「んなもん持ってられるか! 闘いずれぇ。」
オーズ ・「じゃ、どうするんですか?」
トール ・「ちいせぇ事を気にする野郎だな。
中に行って、ぶっ倒して、しめぇだろ。」
オーズ ・「あの…俺に考えがあるんですけど…」
トール ・「わかった。…聞いてやる。ただし、先に野郎を倒してからな。」
オーズ ・「それでは意味が…」
トール ・「行くぞ、おらぁーーーー!」
場面7 :夜 砂漠から離れた森の中
トール ・「いちち…」
オーズ ・「豪傑とはよく言ったものですね…」
トール ・「テメェ、ケンカ売ってんのか?」
オーズ ・「売ってませんよ。
まぁ、生きて帰ってこれたんです。
今回の闘いは負けではありませんよ。」
トール ・「冗談じゃねぇ。漢の闘いに勝ち負けがねぇなんてのが
あるわきゃねぇだろ。」
オーズ ・「…。」
トール ・「お前のナヨナヨした考え方は何とかならねぇのか…
聞いててイライラすんだ。」
オーズ ・「はぁ~…まぁ、これは性分なので…」
トール ・「ったく、俺はお前の腕は買ってるんだぜ。
さっきの闘いでもお前の闘い方は隙がねぇ。
特に痺れたのは、後ろに尻もちついてモタついてた時に
野郎の一撃を紙一重で躱して、油をぶっかけてやったところ…
その後に顎に重い一撃…っで、とどめの火だ。
あの戦い方はおれにゃ~できねぇな。」
オーズ ・「まぁ、ミドガルズオルムの動きは単調でしたし。
予測は難しくはないですよ。」
トール ・「は?予測?…ってことは、アレは計算だったのか?
あの尻もちも?」
オーズ ・「隙が生まれれば最大戦力でそこに攻撃をかけるのは戦の定石。
しかし、全力の攻撃は他への意識を奪うものです。
…あんな手が通用したのはトール神が居たおかげですよ。」
トール ・「は?俺が?…何で。」
オーズ ・「あなたの単調で勢い任せの闘い方は我々が十分な
準備をしていないと露吐しているようなものですから。
…だからミドガルズオルムも俺の尻もちを疑問に思わなかった。」
トール ・「けっ。何だよ。期待して聞いてりゃ…
ようは単純バカって言いたいんだろ。面白くねぇ。」
オーズ ・「あぁ…すみません。それだけじゃないんです。
先程は『勢い任せの攻撃』などと言ってしまいましたが、
あれは凄かったです。」
トール ・「はっ、白々しい。」
オーズ ・「本心です。どんな体勢からも反撃が出来る身のこなし。
間一髪で致命傷を避ける闘いのセンス…
どれもが豪傑の名に相応しいものだと思います。
トール神の息の付かせぬ攻め方は私には到底、
真似は出来ません。」
トール ・「…ふっ…なんだよなんだよ。わかってるじゃねぇか。
そう。俺の闘い方は常に反撃を狙ってんだ。
相手から一発もらおうが、伍発分の拳をお見舞いして
やりゃ良い。それが俺のケンカだ。」
オーズ ・「お互い無い物を持っているのかもしれませんね。」
トール ・「あぁ…。そうかもな。…おっと、そうだ。
お前、何か話があんだろ…その、殴り込みに行く前に
言いたがってたやつだ。」
オーズ ・「…。貴方もなかなか話ができるんですね。
てっきり自分の話以外興味がない
俺様なのかと思ってましたよ。」
トール ・「漢は一度した約束は破らねぇ…それだけだ。」
オーズ ・「ははは。そうですか。…まぁ、今更ですが
あの蛇を倒すには作戦が必要だと思うんです。
そこで俺に考えがあります。」
トール ・「作戦…4つも5つも、まどろっこしい事は言うんじゃねぇぞ。」
オーズ ・「そうですね…では、案がいくつかあるのでその中からコレだと
思うものを選んでください。」
トール ・「おぅ。俺が選んで良いんだな。」
オーズ ・「えぇ。トール神のモチベーションは作戦成功に
大きな影響が出ると思うので。」
~ 3時間経過 ~
オーズ ・「…では、この案でいきましょう。」
トール ・「漢のケンカって感じじゃねぇが…今回は仕方ねぇ。
百歩譲ってやるよ。」
オーズ ・「はは。ありがとうございます。」
トール ・「『我は軍神オーズ!』…どうだ?」
オーズ ・「どうだ…と言われても…」
トール ・「お前のその話し方はどうも外見と合わねぇ。
だからさっきの話し方に変えてみろよ。ほら。」
オーズ ・「ぇ…今のをやるんですか?」
トール ・「ちいせぇ事いってんじゃねぇ、いいからやってみろって。」
オーズ ・「ぁ~…こほん…『我は軍神オーズ!』
…たぁ~。なんか違うような…」
トール ・「あはは。いや、面白い。面白いって。これからはそっちで行けよ。
それで、俺の右腕になれ。」
オーズ ・「え?」
トール ・「お前が言うように俺の闘い方は勢い任せだ…
戦の時に兵を任されるが、俺の部隊のヤツは
ほとんど生きて帰れねぇ。…お前みたいな頭が
俺にはねぇからな。」
オーズ ・「トール神…俺は…~…。…。少し…考えさせてください。」
トール ・「…おぅ。わかった。戻ってからで良い。さて、もう寝るか。」
場面8 :朝 砂漠地帯 ミドガルズオルムの巣の前
トール ・「じゃ、行くか。」
オーズ ・「…んん…ま…任せろ。」
トール ・「あははは。なんだそれ。ダセェな。赤くなってんぞ。」
オーズ ・「えっと…ぶ、侮辱する気か!」
トール ・「いや。はまってる。…じゃ、オーズ…お前は行け。」
オーズ ・「ッ…。(名前で呼ばれた事に驚く)おぅ。」
トール ・「おらぁ! 蛇野郎! 出て来やがれ!リベンジマッチだ!」
ミドガルズ・「シャー…」
回想
オーズ ・「この作戦の要は決定打を浴びず、相手の体力を
削ることにあります。
先ずは普段通りのトール神の闘い方で
ミドガルズオルムをけん制してください。」
トール ・「あめぇんだ…よっ!」
SE :ドゴンッ(重い一撃を腹に決める)
ミドガルズ・「シャー…」(痛みに悶える。距離を取って睨みつける)
トール ・「はは。持久戦をしようってか…良いぜ。付き合ってやらぁ。」
SE :シュアン シャンシャン
(ミドガルズオルムが突っつくように、距離を取って攻撃してくる
トールは避ける事で精一杯の状況が続く。)
回想
トール ・「しかし、そんなもん何処から…」
オーズ ・「俺に宛があります。ですから、少しだけ時間を稼いでください。」
トール ・「はぁ…はぁ…。くそっ。コイツまだ動くのか…」
SE :ビシャ(毒液を出す)
トール ・「ッ…」
場面 :(岩がドロドロに溶ける)
トール ・「…コイツ…俺が疲れるまで奥の手を取ってやがったのか…
くそ…岩が溶けてやがる…」
ミドガルズ・「シャー…」
場面 :遠くから牙を伸ばし、時折毒液を飛ばしてくる。
トール ・「っく…あぁ…面倒くせぇ!」
SE :バシャ…(広域に毒液をまき散らす)
トール ・「くそ…避けられねぇッ。」
SE :ジュワァ…(足に毒液を受ける)
ト―ル ・「ぐあああぁ…」
ミドガルズ・「シャー…」(間を置かず牙を立て襲って来る)
SE :シュ…ドシンッ(氷塊が飛んでくる)
トール ・「…良いタイミングだ。オーズ。」
ミドガルズ・「シャー!…」
回想
オーズ ・「ミドガルズオルムも化物の成りですが、蛇には違いありません。
寒さには弱いはず。…トール神が戦っている間、
俺は氷を調達してきます。
1つ2つでは怯まないでしょうが…
辺りを埋められるだけの氷を持って行けば、
動きも鈍くなり勝機も見えると思うんです。」
SE :ドン、ドンドン…ドンドン…
(次から次に氷塊が飛んでくる)
ミドガルズ・「シュー…シャー」
(牙を剥いて威嚇するが…その動きは明らかに鈍くなっている。)
場面 :反転して、巣の奥へと逃げていく
オーズ ・「トール神。生きてますか?潰れてませんか?」
トール ・「…おぃ、奴を追え。奴は動きが悪いぞ。おまけに疲れてやがる。」
オーズ ・「そうしたいのですが、生憎氷はもう無いので…」
トール ・「やめろ、離せ。テメェの肩なんざ借りなくても歩けんだよ。」
オーズ ・「まぁまぁ、フルグライトを探して、俺たちも帰りましょう。」
トール ・「おぃ、キャラブレしてんぞ。」
オーズ ・「ゴホンッ…さぁ。戻るぞ。」
トール ・「ったく、しまらねぇな…」
場面9 :夕方 森の中 ドヴェルグ兄弟の家
シンドリ ・「おぉ、トール。死ぬのか?片足が腐ってるぞ。」
トール ・「その前にテメェを潰してやる…。持って来たぞ。
コレがフルグライトだろ。」
ブロックル・「すげぇ。さすがは豪傑…兄ちゃん特大のフルグライトだ。」
シンドリ ・「コレだけあれば十分だ。トールが死ぬ前に創ってやるか。」
ブロックル・「わかった。」
トール ・「おぃ、わざわざデケェの持って来たんだ。神器は2つ用意しろ。」
シンドリ ・「2つ?」
トール ・「決まってんだろ。俺の分と、オーズの分だ。」
シンドリ ・「あぁ…なるほど。そうだな。その通りだ。わかった。」
SE :カンカン…カンカン(鉄を鍛える音)
オーズ ・「うぬの足…」
トール ・「これか?…まぁ、ヴァルハラに戻れば何とかなんだろ。
それで、オーズ…昨日の返事は。」
オーズ ・「トールは神器を手に入れてどうするつもりだ?」
トール ・「なかなか板についてきたじゃねぇか。
そうだな…お前には話しても良いだろ。
俺はオーディンを倒す。…奴には隠居してもらい、俺が王を継ぐ。
そしたら、このまどろっこしい戦争も一気に方がつく。
神器さえ手に入れば、俺も奴と同等よぉ。」
オーズ ・「戦争が終わった先は考えているのか?」
トール ・「んなもん、終わらせてから考える。
…そうだなぁ~…蛇野郎とか狼…あと龍モドキもいたな。
そいつらをぶっ倒すのも悪くねぇな。」
オーズ ・「うぬは戦う事しか考えていないのだな。」
トール ・「…なんだ。お前は違うっていうのか?
お前だって神器が欲しくて此処に来たんだろうが。」
オーズ ・「我は…。」
トール ・「もったいぶってんじゃねぇよ。俺をコケおろしたんだ。言え。」
オーズ ・「我は…その…フレイヤ殿が…」
トール ・「あ?聴こえねぇよ。」
オーズ ・「だから…フレイヤ殿…の…」
トール ・「ぁ?フレイヤ?あの美の女神?…。
おぃ、冗談だろ。女の為に神器を手に入れようとしてたのか?」
オーズ ・「将となり器を示すことでフレイヤ殿は我との婚姻を結ぶと
約束したのだ。」
トール ・「バカバカしい。女を振り回すわけじゃなく女に尽くそうってか?」
オーズ ・「バカバカしいのは貴殿の考えであろう。
戦以外考えず未来に目を向けていない。」
トール ・「俺にとっての未来は戦が全てだ何が悪い。」
オーズ ・「撤回しろ」
トール ・「お前がな。」
2人 :「むむむ…」
SE :ザッザッザ(大人数の足音)
トール ・「あん?なんだテメェらは?」
オーズ ・「うぬら…。」
戦士1 ・「ご無事で何よりです。オーズ殿。」
トール ・「その国旗…ヴァン神族…待てよ。オーズ…なんだ。
そうゆうことか。
お前ら…ムスペルんとこの兵隊…これがお前の宛なんだな…」
オーズ ・「…。」
トール ・「だんまりかよ。…フレイ第一部隊・特攻隊長オーズ…」
オーズ ・「トール…騙すつもりは…」
トール ・「別に構わねぇよ。…丁度良いじゃねぇか。
お互い考え方が全然違うとハッキリわかったところだったしな。」
オーズ ・「トール…」
トール ・「女の為に戦う野郎なんざ信用できねぇ…
右腕に成れっつったが、俺の方から断らせてもらうぜ。
特攻隊長さんよ。」
ブロックル・「へっくし!」
SE :バリンッ(何かが壊れる音)
シンドリ ・「馬鹿野郎!何やってんだ。大事な鋼を無駄にしやがって。
もし壊れたり…」
ブロックル・「兄ちゃん…柄が」
シンドリ ・「あぁ~…やっちまったか。なにをトウシロウみたいな
事やってんだ。
馬鹿野郎!」
ブロックル・「そうは言っても…蠅が顔の周りをブンブンって…」
シンドリ ・「あぁ~…ちくしょう。下にあったフルグライトも
粉々じゃねぇか。」
トール ・「おぃ、仕事はキッチリやるんだろ?」
シンドリ ・「あぁ~…そりゃ。そうしてやりたいんだが…」
トール ・「なんだ、ハッキリしねぇな。」
シンドリ ・「ブロックルがヘマをやっちまってな…
柄は折れちまうし…神器をもう一個作るってのは…少しな…」
トール ・「見せてみろ。」
シンドリ ・「さっきまで、叩いてたんだ。素人に渡せねぇって。」
トール ・「おら、退け。」
ブロックル・「うぁあ…」(トールに突き飛ばされる)
トール ・「あぁ…確かに、ちいせぇな。…槌か…面白れぇ。む…」
シンドリ ・「ぁ、バカ!」
SE :ジュアアアぁ(冷めていない槌を持って、手が焼ける)
トール ・「おぃ、鉄を持ってこい。」
シンドリ ・「お前…何を…」
トール ・「さっさとしろ!」
ブロックル・「はい~。」
SE :カンカン(鉄を叩く音)
トール ・「壊れたフルグライトも集めておけよ。」
シンドリ ・「素人が鍛冶屋の真似なんてするんじゃねぇ。
さっさとヤメロ。」
トール ・「…。」
SE :カンカン、カンカン…
トール ・「おぃ、さっきの。」
ブロックル・「これこれ。これです。」
場面 :加熱して叩いた石にフルグライトをまぶしてもう一度叩きだす。
シンドリ ・「聴いてんのか、赤髪。此処は俺らの戦場だって…もが…」
場面 :オーズがシンドリの口を塞いで押さえつける。
SE :カンカン、カンカン…
(汗を流しながら、手の焼きながら、毒に侵された足で
踏ん張り鉄を叩く)
トール ・「…おら。」(出来上がった鉄の塊をオーズに投げる)
オーズ ・「これは…。」
トール ・「フルグライトは2人で手に入れたんだ。
俺は借りは作らねぇ主義だ。
このちいせぇ槌は俺がもらう。その鉄くずがお前のだ。」
シンドリ ・「オーズ。…悪い事は言わねぇ。そりゃ本当に鉄くずだ。
見方によっちゃ、奇抜な斧に見えない事も無いが、
こんな素人が作った武器だ。
戦場で役に立つような代物じゃねぇ。
別のモノを用意してやるからそんなもん捨てちまえ。」
オーズ ・「…。重いな。」
トール ・「鉄だからな。」
オーズ ・「トール…」
トール ・「ほら、お前の用事はもう済んだはずだ。さっさと帰れよ。」
オーズ ・「…『我はヴァン神族オーズ! …斧で戦場を拓く者也。』」
トール ・「へっ。言ってろ。次会う時は戦場だ。…首洗って待ってやがれ。」
オーズ ・「足と腕が治ったら相手をしてやろう。赤髪…。」
トール ・「上からもの言ってんじゃねぇ。贅肉。」
2人 :「潰すぞ。」
オーズ ・「…。」
トール ・「…。」
場面 :オーズはそのまま去り、振り返らない。
トールは槌を持って力を込めると、電流が流れるのを楽しんでいた…
トールはアース神族に居るムスペルというイメージが強く
どうしてもセリフが似通ってしまいます。
その中でも、主神の子という好奇の目にさらされ、必死に自己を
模索する姿を描きたいと思って書きました。
オーズに関しては元々深く描く事は無いと思っていたのですが
機会を頂いたため、大抜擢という形で登場しています。
大柄で頼もしい風貌とは裏腹に、優しく思慮深い彼の成長を
暖かく見守って頂ければ幸いです。