家族でおでかけ
◆scene No.21◆
冬悟がどこに行きたいか考えておいて、と言っていたその日は洸成と悠成、それと湖都の行きたがっていた、遊園地に決まった。
家族で出掛けた事は、何度もあるけれど、莉沙にとってはどこかそのいつもと違う、という雰囲気に、お出掛けは嬉しいのだけれど、やはり不安な気持ちもあって………。
結局冬悟の隣ではなくて、後ろの席に湖都と悠成と座り、助手席は洸成へと譲ったのだ。
もちろん、洸成が乗りたがるのだけれど、莉沙自身がもし子供たちが寝てしまったら……その時が怖くて。
(ふたりになるのが……怖いだなんて……)
冬悟の運転するミニバンは、高速を走りそれほど渋滞にも巻き込まれずに目的地にたどり着いた。
3人が好きな乗り物へと走り出して行き、ほとんどの乗り物は、湖都は大人の付き添いがいるから、冬悟と一緒に乗って、莉沙はそれを……カメラで撮して……、そのカメラは洸成を妊娠した時に、榛葉の両親から買ってもらって、ずっと家族の記録をおさめてきた物で………。
もしかすると……これが最後の家族の記録になるのかも、と思いつつ、莉沙はシャッターを押した。
はしゃいでる洸成と悠成は、ともすれば迷子になってしまいそうに、ずっと走って移動していて
「洸成~悠成~!そこで待てよ!」
と、冬悟が声を張り上げた。
先行した先で、じゃれ合いながら待つ二人に父親らしく「次はあれか?」と声をかけながら、歩く姿を莉沙はこんな日が続くことを、望まずにいられなかった。
(……どうして……ずっと……こうじゃなかったのかな……)
莉沙はもっと……思うことを冬悟に言っておくべきだったのかも知れない。仕方がない、なんて言い聞かせないで、もっと素直に。
そうすれば、ここまで根深くならずにすんだのかも知れないのに……。言えなかった年月分が莉沙の言葉を押さえ込んでしまっていた。
「お母さん」
「何?」
「湖都、アイス食べたいな」
「アイス?」
そんなやり取りが聞こえたのか、
「じゃあ、少し休憩しようか、湖都はお母さんとそこに座って、洸成と悠成はお父さんとアイス買いに行くぞ」
「え、いいの?」
「たまにはいいだろ」
これまでなら……こういう所のは高いからと、我慢させるのが常だった。だから……莉沙は驚いてしまったのだ。
だから尚更………、最後の思い出作りの様に思われて、何も知らない子供達に申し訳なくなってしまった。
少しして、アイスを買ってきた冬悟達が戻ってくると、アイスを手にした湖都が
「おいしい!」
とご機嫌に食べていて、
「はい、お母さんにもひとくち!」
と、差し出してくれたアイスが甘くて、美味しくて、
「ほんと、美味しいね、湖都」
そんな様子を見ながら、水筒のお茶を飲む冬悟を莉沙はそっと少し観察した。
「今日はもう、アイスを食べたから、もうおねだりはナシだ」
「ええ~!」
「ええ~じゃない。はい、だろ」
「「「はぁい」」」
その少しの休憩をして、それからまた、乗り物へ乗るためにパンフレットを一緒に見ながら歩く冬悟と洸成と悠成を見ながら、湖都の手を引いてゆっくり追いかける。
「湖都も早く大きくなりたいな」
「お兄ちゃんたちみたいに、湖都も大きくなれるよ」
「えー、すぐが良いなぁ」
ぷくぅと頬を膨らませる湖都は、時々一緒に行動出来ないのが悔しいようだ。
だんだん歩くのがついて行けなくなる湖都を抱っこして、後を追えば、
「代わるよ」
そう言って、湖都をその腕に抱き上げた。
「お父さん、たか~い!」
高さと、そしてやはり力の差なのか、安定するのか、莉沙の抱っこと違って湖都もはしゃいでいる。
「お母さん、次はあれに乗る!」
洸成に手を引かれて、莉沙は走らされた。
そうして……最後に、観覧車にみんなで乗って……。
子供達は、くたくたになるまで遊び尽くした。
だから……帰りの車は……。
莉沙が助手席に、座り、カーステレオを聞きながら冬悟の隣に座り、見るともなしに外の流れ行く景色を眺めていた。
「……今日は、3人とも楽しそうだったな」
「そうね………ありがとう……一日、お疲れ様」
「洸成は、大きくなったな」
「ほんとに、靴のサイズなんて、私とそんなに変わらないもの」
そんな事を話しながら………。
なんでもない会話で、帰宅出来た事に莉沙は息を吐いた。
「運転、お疲れ様」
「ん、莉沙も」
ギアをパーキングに入れた冬悟は、笑みを返してきた。
眠っていた子供達を起こして、
「着いたよ、みんな起きて」
「んん~~!」
伸びをして起きる洸成と、悠成、それから起きない湖都は冬悟が抱いて車から下ろして、目覚めた時からまた元気が回復してる洸成と悠成は、家まで賑やかに走っていく。
「あいつら、少し寝ればすぐに元気になるんだな」
「ふふっ」
莉沙はその言葉に思わず笑ってしまった。
こういう時は、大人の方がくたくたになるものだ。




