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涼真の立ち聞き

たくさんの作品の中から、アクセスしてくださりありがとうございます。


よろしければ、最後までお付き合いくださると嬉しいです。


◆scene No.8◆


「うちの旦那さん……浮気してるみたい」


 釼持(けんもつ) 涼真(りょうま)はその言葉が聞こえて、リビングへと続くドアノブにかけようとしていた手をピタリと止めた。


その声の主は姉の友人の桐生(きりゅう) 莉沙(りさ)だとわかった。女性らしく甘めの声は、特徴があるからだ。

莉沙は姉の永峯(ながみね) 円香(まどか)とは、いわゆる近所に住むママ友という間柄で、かれこれ8年ほど前から時々永峯家を訪れている。


「まさか……なにか証拠でもあるの?真面目でそんな事しそうにないし、いいパパしてるのに」

驚いた声の円香が言えば

「見て」

そう言って、何かを見せている気配がある。


「……うそ……これ、どこから?」

「たまたま、見ちゃったの。LINEのメッセージ」


立ち聞きは趣味が悪いと、足音を消してふたたび2階にあがる。時々子供の笑い声がするということは、円香と莉沙の子供達が遊んでいるのだろう。


(……不倫か………)


立派な成人である涼真は、学生でも無いわけで、自立していい年なのだが、結婚するまでいればいいという姉夫婦に甘えていた。年の離れた兄弟であるから、姉たちもまだどこか頼りなく見えているに違いなかった。

28歳になったのだが結婚どころか恋人も……今はいない。

……前の別れた彼女は、涼真とよりにもよって妻帯者と二股をかけていて、その上向こうの離婚が成立したからと最近別れた所で『浮気』という言葉に敏感に反応してしまった。


5年間も交際をしていただけに、自分の鈍感さに腹が立つ。


それにしても………莉沙は年上だし、知り合った時にはすでに既婚者であったわけなのだが、涼真は憧れに似た感情を抱いていた。


穏やかな目元、それに愛らしい声にしっとりとした雰囲気。小柄で女性らしい体つきの莉沙は、何とも言えない色香があった。


(それなのに………、浮気するのか。あのダンナ)


 涼真は、莉沙の夫を思い出した。莉沙の家は、斜め向かいにあり桐生 冬悟とは顔を合わせば挨拶くらいはする。

背はすらりとしていて、顔も目元のキリッとしたなかなか好い男振りだ。

サイズのあったスーツ姿を着て、毎朝ピシッと出勤する冬悟は、いつも清潔感のあるきちんとした印象があるし、また時々子供を連れて歩いているのを見れば家庭でも完璧な夫に見えていた。


(あんな………普通に幸せそうなのにな)


端からは、わからないものだ。


少したってから、喉が乾いたからリビングに行ったことを思い出す。わざと少しだけ足音をさせて階段をおりて、今度こそリビングのドアを開けた。


「ども」

「こんにちは、お邪魔してます」


莉沙は、いつものように笑顔で挨拶をしてきた。


長めの黒髪をサイドに垂らして、緩く纏めた髪は綺麗だし、ほっそりとした首も華奢な肩も、ふっくりとした胸元も…。女性らしく魅力的に涼真の目に映る。


(俺がダンナなら、浮気なんてしないと思うけどな……)


「あ、涼真。莉沙ちゃんからプリンもらったの。冷蔵庫入ってるから食べたら?」

「あー、ありがとうございます」


涼真は冷蔵庫を開けて、プリンを出した。それからコーヒーを淹れてもう一度莉沙を見た。

プリンは、カップからみるとどうやら手作りのようで100円shopで売っているものだ。

いつものように穏やかな笑みをうかべて円香と話しているその様子は、さっきの話しは何かの間違いだったような気がしてくる。


部屋で食べるのは円香の怒りに触れるで、ソファに持っていき食べ始めると、パタパタと足音がして、バターンとドアが開いた。


「お腹すいたーおやつ!」

甥の陽希(はるき)が元気よく言って

「あ、プリンだ!」

涼真が食べているのに気づいた莉沙の息子の悠成が言い、

「ママ~!わたしも食べたい」

悠成にならって莉沙の娘の湖都(こと)も言った。


「ちょっとまってね、今出してくる。手を洗ってきて」


「おれいちばーん!」

陽希が言うと、

「にばーん」

「さんばーん」

最後に女の子の湖都が明るく声を上げた。

賑やかに洗面所に小走りで行くのさえとても楽しそうだ。


円香がダイニングテーブルにプリンをセットしたところで、タイミングよく3人が戻ってきて、手に消毒スプレーを降られている。


いただきまーすと、声を揃えて食べ出す子供たちを見て涼真は立って


「ども、ごちそうになりました」

「いいえ、お粗末さまでした。あ、そういえば涼真くんこの間はありがとうお世話になりました」


この間は、というのは涼真が勤めるG.blackというウィメンズ対象のファッションのショップに家族揃ってきてくれたのだ。ただし、ウィメンズとはいえ、メンズが主流で価格帯もすこし高めだ。


「こちらこそ、またご主人のスーツの時にはお願いします」


この前は、セミオーダーのシャツを作ってくれたのだ。冬悟は、細身なのに、背があり既製品ではなかなかサイズがしっくり来ないらしく、それを聞いた円香が涼真の店を薦めたらしい。


「この前採寸してくれた店員さん、主人が学生の時に家庭教師をしてた女の子だったの、ビックリした」

「へぇ?橘が、ですか?」

確か、採寸を担当したのは橘 志歩だった。

「えっと………そう、志歩ちゃんって言ってたかな?」

一つ年下の志歩は溌剌と元気で、それでいて煩くなく程よく接客が出来る。感じのいい子だ。


「へぇ、偶然ですね」

「そうなの………ほんとうに偶然」


「桐生さんの教え子だったんですね」

「中学3年から、1年くらいだったみたい」

「そうですか、じゃあ今度は橘から買ってやってください」

「涼真くん、売り込み上手ね」

クスクスと莉沙が軽やかに笑った。


幸せな主婦そのものの、笑顔だった。


お読み下さりありがとうございましたm(__)m


不倫とプリン、ふざけてるわけじゃないですよ(*´-`)


不倫はいけません!

これは絶対!!

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