君は何色?
あの日から数日がたった。
毎日、彼女を見ているけど、やはり識別コードは出てこない。
彼女を見ることは、いつの間にか僕の日課になっていたが、彼女からしたらいい迷惑だ。
友達と話しているときや好きな本、CDなどを貸してもらったときの彼女の顔は、キラキラしててすごくきれいだった。
……色がついていたら、あの笑顔はどう見えるのだろう。
最近、彼女を見ていると思ってしまう、叶うことのない言葉。
それでも僕は気になってしまう。
彼女の肌の色は?
髪の色は?
唇の色は?
すべてに色のついた彼女の笑顔は、きっと想像を超えるほど、きれいな顔になるのだろう。
色を失った後は、識別コードのおかげで立ち直ることができたが、彼女にだけ使うことのできないこのコードを、恨んでしまう。
彼女と話した自分を恨んだ。
彼女をもっと知りたいと思った自分を恨んだ。
彼女の笑顔を見てきれいだと思った自分を恨んだ。
話さなければ……あのとき違和感を感じなければ、彼女の笑顔を見なければ、彼女に興味を持たなければ……。
もう遅いとわかっていても、初めて覚えたこの感情はきっと、二度と忘れることはできないだろう。
忘れなくていい、消えなくていいから、この小さな感情は僕の心に、閉じ込めておくことにしよう。
この小さな色のわからない感情が、大きくならないようにと願って、僕は重い心の扉を閉めることにした。