違和感の正体
その後の授業では、なぜ彼女に毒の強い花を教えたのかについて、頭の中で会議が繰り広げられていた。
ようするに自問自答だ。
確かに、きれいな花には毒がある、ということわざがあるほど、毒の花はきれいな花が多い。
しかし、どの花も猛毒を持っている。
少しでも取り扱いを間違えれば、人を殺すことのできる恐ろしい凶器だ。
しかし、話しているときに見せた彼女の顔は"悲しそう"だった。
恐ろしい顔や焦った顔もあったが一番、印象に残っているのは悲しい表情だ。
きっと僕はそんな顔をする彼女に、同情して毒の花を教えたのだろう。
理由はわからないが、彼女のそんな顔は見たくはなかった。
しばらく、そのことについて考えていると、僕は毒の花を話す前に感じた違和感の正体を、急に知りたくなった。
黒板の方を見て、必死にノートを写している、彼女の背中を見続けていると、一ヶ所だけ他とは違うところがあった。
彼女には識別コードがない。
他の人は服の上に、識別コードが浮いているのに、彼女はモノクロのままで、なんの文字も書かれていない。
いくら考えても、識別コードの存在を知ったばかりの僕では、理由がわからなかったから、考えるのをやめた。
いつかそのことについて、わかる日がくるのを信じて、待つことにした。