色を表す文字
パソコンを起動させて、数分がたった。
暗い部屋に、一つの明かりが灯ってしばらくの間、その明かりを眺めた。
謎の暗号の文字に興味が移り、さっきまでの"死にたい"という感情は、いつの間にかなくなっていた。
涙をためては流すを繰り返していた目からも、涙はなくなり残ったのは目の腫れぼったさと、口から出るしゃくりだけだ。
ぼやけてた景色が、徐々にはっきりしていく。
モノクロの景色は、涙を流しすぎたからだと思っている自分がいて、その期待を裏切るように、色のない景色が目の前に広がった。
気持ちを紛らわすように、再び車の絵の上に浮いている暗号を見た。
その暗号をメモして、パソコンに視線を戻してから、メモした暗号を見た。
#0073bo
僕はこの意味のわからない暗号に、感謝をしながらパソコンに文字を入力した。
検索を押す前に一度、深い深呼吸をした。
確信はなかったけど、この文字が僕の人生を変える、そんな気がした。
うるさい心臓と、高鳴った胸に急かされて、僕は検索を押した。
画面に映った大きな文字に、僕は目を離せずにいた。
パソコンの画面に、青色と書かれた大きな文字。
「うそだ……」
思わずもれた言葉は、広く暗い部屋の壁に消えていった。
もう一度、幼い頃の記憶を辿ってみた。
空や海が好きだった僕は、青色が好きだった。
だからこの車の絵も青色にした。
間違えるはずのない確かな記憶。
目には映らないが、僕の好きな色は、はっきりと記憶に残っている。
小さな手で青色のクレヨンを雑に塗っては、大はしゃぎしている自分が、昨日のことのように鮮明に蘇ってくる。
やはり、間違えるはずはない。
この絵の色は青色だ。
つまり、この暗号は色を表す文字なんだ。
突如、現れた小さな希望に、僕は表すことのできない大きな喜びを感じた。
この文字が僕に"生きろ"といってる気がして、体が熱くなるのを感じた。
色を失った僕の前に現れた、小さな希望。
この文字が僕の暗い景色に、塗られているはずの色を示してくれる。
いつかその色が……いや、考えるのはやめよう。
この色を表す文字を"コード"と呼ぶらしい。
色を見分けることができるコード。
僕はこの文字を"識別コード"と呼ぶことにした。
これが僕の人生を大きく変える、識別コードとの出会いだった。