第Ⅷ章『鍵と鍵守の衝突』
『さくら…』
再び双子は出逢ってしまった。
「櫻…。」
哀しげに笑いながらサクラは櫻に近付いた。
だが、櫻はそれを拒む様に少し後ろに下がった。
「……ごめん、サクラ……っ」
「えっ……?」
聞き取れないほどのか細い声で櫻は呟き、片手に死神の鎌を持っていた。
「さ、櫻…?」
怯えた瞳で櫻を見詰めるサクラ。
「……ごめん……っ」
そう呟くと櫻は死神の鎌を振り上げサクラ目掛けて振り下げた。
しかし、何かの気配を感じサクラとの距離を取った。
「避けるとは流石だな。」
バサッと上から黒いフード付きマントを羽織った青年が櫻達の間に入ってきた。
「!……暗部か。」
「ほう、暗部を知っているのか。」
ニヤリと青年は笑いながらサクラを守る様に前に立った。
「サクラには指一本触れさせはしない。」
「なるほど。
サクラを守る騎士か。」
「騎士だと?
ふっ…騎士なんかに、サクラは守れない。
サクラを守るのはそう容易くないからな。」
「流石、カラス。
分かってるじゃん。」
クスクスと笑いながら櫻は死神の鎌を手元から消した。
「お前…何のつもりだ。」
殺気を立てた青年にサクラが背後から抱き着いた。
「止めて…!
お願い、止めて…夜鳥」
「!……サクラ…。」
「櫻は敵じゃないの…!
私の…双子の妹なの……。
だから…お願い…。
櫻を傷付けないで…」
泣きそうな顔でサクラは夜鳥を見上げた。
「サクラがそう言うなら…」
照れた様に夜鳥は、サクラから顔を背けた。
「!…ふぅーん。
そう言う事ね。」
それを、見た櫻はクスッと笑った。
「夜鳥、お前は相変わらず姫の事になるとすぐ、飛んで行くんだから。」
「おせーよ、梵天」
梵天と呼ばれた青年は苦笑いしながら夜鳥に近付いた。
「夜鳥が早いんだ。」
「…カラスの次は天狗か。
(天狗も暗部か…)」
梵天は櫻を見ると柔らかく微笑んだ。
「!……っ」
櫻は梵天から顔を背けその場から去ろうとしていた。
「待って、櫻…!」
サクラは櫻を呼び止めると櫻の腕を掴んだ。
「何…?」
「えっと…一緒に屋敷に帰ろう…?」
「…帰る?
そんな所……っ
僕には存在しないんだよ……っ!」
櫻は腕に掴まれたサクラの腕を思い切り振り払った。
「さ、櫻…?」
サクラは傷付いた表情をしながら櫻を見詰めた。
「お前…!」
夜鳥は櫻に近付こうとしたが梵天に止められた。
「!…梵天。
何故、止める⁈」
「夜鳥、落ち着け。
確か彼女も櫻って名前だっけ?」
「嗚呼」
「見てみろ」
「なんだよ。
珍しくやけに真面目な顔しやがって…」
梵天に言われるまま夜鳥は櫻を見た。
「…彼奴、泣いているのか?」
「彼女にも何かあったのかも知れないね。」
夜鳥と梵天が見たのは櫻の泣き顔だった。
「櫻…。」
そして、サクラも櫻の泣き顔を見て哀しそうな表情を浮かべていた。
「………っ」
櫻は俯くと何も言わずにそのまま走り去って行った。
「夜鳥」
「なんだよ。」
「すまないが、我は急用を思い出した。
ちょっと、行ってくる。」
「あ、おい!
梵天!…ったく、彼奴、行きやがった。」
梵天は櫻を追いかけて行った。
「夜鳥。」
サクラは哀しげな表情を浮かべながら夜鳥に近付いてこう言った。
「櫻の事は梵天に任せよう?
きっと、梵天は櫻の事が気になるから追いかけて行ったと思うの…。」
「嗚呼、そうだな…。」
サクラと夜鳥は去って行った2人を見届けるかの様にしてその場を佇んでいた。
櫻が泣いていた理由。
それは、過去にあった。
その過去とは一体…。