第Ⅶ章『鍵と鍵守の邂逅』
引き離されてから10年の歳月が流れ、双子は14歳になり、それぞれの道を進んでいた。
サクラはマリアの屋敷にそのまま暮らし続け、櫻は、ソフィアとサブエラの元を去った。
そして、この時…運命の歯車は双子を再び出逢わせ様としていた。
でも、その事を誰も知らぬまま。
その時は、やって来た。
紅き月と紅き桜が咲き誇る夜に、双子は再び出逢ってしまった。
風に舞う花弁、桜の木の下には独りの姫君。
闇色を纏う漆黒の長い髪を靡かせ、澄んだ蒼い瞳で桜の花を見詰めるのは、鍵を持つサクラ。
桜の花を見詰めるその瞳は、何処か哀愁を帯びている。
そして、サクラの反対側にはもう独り、少女が佇んでいた。
サクラと同じ闇色を纏う漆黒の長い髪を靡かせ、綺麗な深紅の瞳で桜の花を見詰めていた。
その少女は、鍵守の櫻。
鍵に対をなす鍵守。
桜の花を見詰めるその瞳には、復讐と強い想いを秘めていた。
桜の木を見詰め、その場を立ち去る時、櫻は反対側に人の気配を感じた。
気配を感じた反対側に向かって歩き出しその人影に警戒しながら近付いた。
「そこにいるのは誰?」
櫻がそこにいる人影に尋ねた。
「私は、サクラ。
貴方は?」
「(サクラ…?)
僕も、櫻って言うんだ。」
「貴方も櫻って言うの?
同じ名前ね。(まさかね…)」
サクラは疑問を抱いた。
自分と同じ名前の人物が自分の片割れではないかとそう疑問に思ったのだ。
「そうだね。
(まさか、本当に僕の片割れのサクラなのか?
いや、ただ名前が一緒なだけじゃないか?)」
櫻も疑問を抱きながら、そのサクラと名乗る少女に近付いた。
その瞬間、強く風が吹き桜の花弁が紅き月夜を舞い2人の視界を遮った。
風が止み目の前にいるその姿に驚きを隠せなかった。
何故なら、その姿が自分の片割れのサクラ本人なのだから。
そして、サクラ自身も驚いていた。
こんな形で片割れの櫻に出逢えるとは思っても見なかったのだから。
「君は…」
「貴方は…」
『さくら…』
嗚呼、運命とは何と言う無情なものだろう。
出逢う筈のないこの双子を再び出逢わせてしまった。
双子が再び出逢った事により、世界は…運命は…大きく変わって行った。