第Ⅳ章『引き離された鍵の行方』
…あれから、どれぐらい経っただろう。
私は櫻と引き離された後、部屋に閉じ込められた。
扉には鍵が掛かっていて開けられない。
まるで、籠の鳥……。
そんな、私の傍に居てくれるのは母様の従者だった白狼と夜鳥だけ。
白狼は母様が亡くなった後、私の従者として契約した。
白狼は母様の最後の命令で私と契約したと言う。
夜鳥はお仕事の合間を縫って会いに来てくれた。
私は今日もまた、夜鳥が会いに来てくれるのを待っている。
でも、白狼も夜鳥も私を見ると悲しい顔をする。
それは、私が母様の記憶がないから…————。
私はどうして、記憶を失ったのだろう。
自分の母の事をどうして私は忘れたのかわからない…
「…サクラ?」
考え事をしていた私を呼ぶ声に我に帰った。
「!…夜鳥?」
部屋のテラスに心配そうな顔をした夜鳥が居た。
「どうした?大丈夫か?」
夜鳥は私に近付き頭を撫でた。
「…大丈夫だよ」
そう言って私は笑った。
「また、具合が悪いのかと思った。
此処、数日は殆ど臥せてたもんな。」
夜鳥の言う通り、私は数日は殆ど臥せてた。
生まれ付き身体の弱い私はベッドに臥せる事が度々、あった。
母様が生きていた時も遊んだ後は、具合が悪くなってベッドに臥せていたと白狼が教えてくれた。
…籠の鳥である私は白狼がいて夜鳥が居るから独りぼっちじゃなかった。
——そして、私はこの時、いえ、私と夜鳥は知るはずもなかった。
本来ならば、私達は惹かれ合ってはいけない関係だと言う事を……————。