第ⅩⅤ章『鍵の目覚め』
「……んっ……っ」
目が覚めると部屋には誰も居なく真っ暗だった。
でも、部屋の窓が開いていて淡く月明かりが射し込みカーテンが風に揺れていた。
私はベッドから降りて窓に近付きテラスに出た。
テラスに出て夜風で漆黒の長い髪を風が靡いた。
靡いた髪を押さえる事もなく私は月を見上げた。
大きな青白い満月、綺麗で神秘的な光を放っていた。
「………櫻」
左の鎖骨下の黒薔薇の模様に触れ、私は櫻の名を呟いた。
私の呟きは夜風と共に消えて行った。
部屋の外では…ーー
「サクラ、目が覚めたのか…」
サクラの部屋の扉を開き声をかけず扉に寄り掛かりサクラの後ろ姿を見ていたのは、夜鳥だった。
テラスに出ているサクラの後ろ姿を安堵の表情で見詰めていた。
「夜鳥様?
どうかしましたか?」
廊下から歩いて来たのは白い燕尾服を着た白狼だった。
しーっと言う様に人差し指を立てて、ニッと笑った。
「何ですか?
…嗚呼、姫様が目を覚ましたのですね。」
夜鳥の隣に白狼も行きテラスに出ているサクラの後ろ姿を見て安堵の表情を浮かべた。
「良かったですね、夜鳥様(微笑)」
優しく微笑み隣にいる夜鳥を見た。
「っ!…煩い////」
「そんなに、照れなくても良いんじゃないですか?」
照れている夜鳥をクスッと白狼は笑った。
「笑うな‼︎////」
赤面になり夜鳥は顔を背けた。
「おやおや、素直じゃないですねぇ」
と言いながら白狼はクスクスと笑っていた。
「…夜鳥と白狼いるの?」
テラスに出たサクラが夜鳥と白狼に気付いた。
「はい、姫様。」
隣で夜鳥が慌てる中、何も無かったかの様に白狼はサクラに近付いて行った。
「さぁ、姫様。
外は冷えますので中にお入りください。」
テラスに出たサクラに手を差し出した。
「ありがとう。」
白狼の手を取ると眠りに就く前と変わらない微笑みでサクラは笑った。
サクラをソファーに座らせ白狼は手を離し、カーディガンを肩に掛けた。
「ありがとう、白狼
ところで、夜鳥」
「な、なんだ?」
「どうして、そんなに遠くにいるの?」
いつもなら傍に来てくれる夜鳥がまだ、扉に寄り掛かっているのだ。
「い、いや。
な、何でもない…」
サクラの目の前のソファーに夜鳥は座った。
それを見た、白狼は再びクスッと笑った。
「白狼。
どうしたの?」
「いえ、何でもないですよ」
夜鳥をチラッと見ると微笑みながら紅茶をサクラと夜鳥に淹れテーブルに置いた。
「でも、サクラが目覚めて良かった…」
「心配掛けてごめんなさい…。
でも、もう大丈夫だから…」
「姫様が眠りに就いてから夜鳥様は姫様が目を覚ますまで、屋敷に毎日来てたんですよ。」
「えっ…?」
「白狼!
お前、余計な事を言うな!」
「良いじゃないですか、本当の事なんですから」
ニッコリと微笑む白狼を赤面になりながらも睨み付ける夜鳥。
それを見たサクラはクスッと笑った。
「どうしましたか?」
「どうした?」
「ううん、何でもないの。
でも、夜鳥も白狼も心配してくれてありがとう(微笑)」
満面の笑みを浮かべているサクラを夜鳥は更に赤面になり顔を背け、白狼はいつもと変わらない笑みで笑いかけていた。
(このまま、幸せな時間が続けば良いのに…)
とサクラは心の中で思った。