第ⅩⅣ章 『鍵守の目覚め』
お嬢が黒薔薇の呪いで眠りに就いて3日が経った。
天狗の旦那は、暗部の仕事があるにも拘らずお嬢の傍から離れなかった。
「旦那、少し休まないと身体に悪いぜ。」
「我は平気だ。
それより、櫻はまだ目覚めない」
「黒薔薇の呪いの所為でだからな。
いつ目覚めるか、俺にも分からない」
「前もあったのか?」
「嗚呼。
ソフィア様の所にいた時に力の覚醒と共にな。
その時は5年も目覚めなかったな…」
「そうか…」
「でも、今回は旦那が呪いの広がりを抑えてくれたから助かった。
ありがとう。」
「いや、闇狼が知らせてくれたからだ。
我は、櫻の異変に気付けなかったからな。」
「今は、旦那しか頼れる奴はいないからな」
「そうか
それは、嬉しいな」
そう言うと旦那はニッと笑った。
「……んっ………っ」
眠っていた櫻がゆっくりと瞼を開いた。
「!……櫻⁈」
「……梵天?」
「目が覚めたか…良かった…」
目を覚ました櫻を見て梵天は安堵の表情を浮かべた。
「僕…また……」
「闇狼から話は聞いた。
大丈夫かい?
気分は悪くない?」
「大丈夫……。
ありがとう…」
弱々しく微笑みゆっくりと起き上がり。
「!…櫻、まだ横になっていた方が…」
「大丈夫…」
「お嬢、旦那の言う事は聞くべきじゃないか?」
「闇狼…」
闇狼は紅茶を持って来てベッドの脇にあるサイドテーブルに置いた。
「今回は3日で目覚めたな。」
「3日…か…」
「でも、目覚めて良かった。」
梵天は優しく櫻の頭を撫でた。
「心配かけてごめんね…」
「構わないよ。
我の方こそ気付いてやれなくてすまなかった。」
「ううん…。
今まで無かったから忘れかけてた…」
「だから、俺は言っただろ?
油断は禁物だって」
「でも、暫くは出てないから平気だって思ったんだもん!」
「…それくらいの元気があんならお嬢は大丈夫だな。」
ニッと闇狼は笑った。
「それ、どう意味?」
「ぷっ……」
『ん?』
櫻と闇狼は梵天の顔を見た。
「梵天?」
「旦那?
何か可笑しかったか?」
「い、いや。
2人の言い争いが面白くてね」
必死に笑いを堪える梵天。
それを、見た櫻と闇狼は互いに顔を見合わせ笑った。
(こんなに暖かく幸せだと思った日は久しぶりだ…
このまま続くと良いな…)
と櫻は心の中で思った。