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運命の双子  作者: 雨音 唄乃 -Utano Amane-
第1部 始まりの物語
17/70

番外編 『鍵守の10年間 下』

お嬢が倒れ、深い眠りに就いてから五年の歳月が流れた。

儀式のあの日以来、お嬢は目を覚まさない。


お嬢は眠り姫の様に眠り続けている。

(俺がお嬢と呼んでいるだけで、実際は姫なんだよな。)


お嬢が5歳の時に俺と従者契約を交わして初めて、力の覚醒が始まった。

その時の影響で、お嬢は深い眠りに就いている。


いつ目覚めるか分からない深い眠り。

俺はいつ起きても良い様にお嬢の傍にずっといた。

王と妃も毎日、お嬢の様子を見に来ていた。


そして、今も…ーー。


「今日も、櫻はまだ目覚めないか…。」


王は眠りに就いているお嬢の頭を撫でた。


「今日は、櫻の10歳の誕生日なのに…」


「そうですね…。」


妃の言う通り今日は、お嬢の10歳の誕生日で、お嬢達が産まれた日。


俺にも、双子の片割れがいる。

そいつは、お嬢の片割れの姫さんの従者となっている。


俺は黒い狼だが片割れは、白い狼だ。

俺達双子はお嬢達の一族に代々、仕えて来た騎士ナイトの一族だ。


双子と言う事で俺と片割れの白狼はくろうは色々と苦労してきた。

だから、お嬢達にはそんな思いをさせたくない。

それが、俺と白狼はくろうの願いだった。


「さて、私達は公務に戻るよ。」


「はい。」


闇狼あんろう、何かあったらすぐ教えてください。」


「畏まりました」


王と妃は公務に戻る為、部屋から出て行った。

部屋のドアを開け2人にお辞儀をしながら見送り、ドアが閉まると俺はお嬢に近付いた。


「お嬢…。

いつ目を覚ますんだよ…。」


俺の声は静寂に包まれた部屋に虚しく消えていった。



〜その頃の櫻〜


目が覚めたのは漆黒の闇の中だった。


「此処は…」


【やっと、目を覚ました?】


「誰…?」


【ふふっ…私の事が気になる?

なら、此処に来て】


何処からか聞こえる声に誘われるまま僕は、漠然と現れた豪奢な扉を開き突然現れた螺旋階段を登り、登った先に待っていたのは漆黒の髪に深紅の瞳の僕にそっくりな人だった。


【ビックリした顔だね。

驚くのも無理はない。

私は貴方の一族の始祖。

そして、貴方は私の先祖返り。】


「…君が僕の先祖?」


【そうなるね。

私の名は『夢姫ゆめき

ようこそ、私の精神世界へ。】


夢姫ゆめき…。

僕の名は…。」


【知ってるから言わなくて良いよ】


僕の先祖だと言う夢姫ゆめきは艶めかしく唇に人差し指を当てた。


「僕はどうして此処に…」


【力の覚醒が始まったのよ。

そして、初めて力を使った貴方はその大きな力に身体が耐え切れず今は、深い眠りに就いているの。】


「力の覚醒…」


【後は、もう一つ】


トンッと夢姫ゆめきが僕の左の鎖骨下にある黒い薔薇の模様を指で触った。


【力の覚醒と共にこの模様の《黒薔薇の呪い》も一緒に出たの。

まさか、こんなに早く力の覚醒と呪いが出てくるなんて…。

さすが、魔王の娘ね。】


「どうして、それを……」


【私は何でも知ってる。

貴方の事も貴方の姉の事も何もかも。

マリアが魔王と交わって生まれてきたのが私達の先祖返りの貴方達。

まさか、自分の一族のが魔王と交わるとは思わなかったわ。

でも、その所為で貴方達は私達を超える力を持ってしまった。

その力をコントロール出来る為に、貴方に何をしたら良いか教える為に貴方を此処に招いたの。】


「でも、此処にいるのは…」


【肉体は朽ちたけど、魂はこの精神世界に漂っているの。

さて、貴方には教えないといけない事がたくさんあるけれど時間も少ないから長くは教えられない。

私が言えるのはただ一つ。

力をコントロールするには、強い意志が必要と、力を使って感覚を覚えていくの。

そして、貴方には鍵守としての使命がある。

それは、絶対に忘れないで。】


「強い意志と感覚と使命…。

分かった…。」


【分からなければ、色んな所を旅をしてみると良い。

…時間切れだ。

それじゃあ、櫻。

また、会いましょう…

貴方を待っている人達がいるから早く起きてあげて…】


夢姫ゆめきはそう言うと消えていった、漆黒の闇に一筋の光が射し込んで僕はその光に手を伸ばした。



〜変わって櫻の部屋では〜


櫻の部屋にあるソファーで本を読んでいる闇狼あんろう


「!…お嬢?」


何かに気付き櫻に近付いた。


「…んっ……」


ゆっくりと瞼を開き焦点の定まらない目で天井を見上げた。


「目が覚めた様だな。

…おはよう、お嬢。」


「…おはよう……」


寝起きだが柔らかく微笑む櫻。


「お嬢が目覚めたから王と妃を呼んでくる。」


「うん…」


闇狼あんろうが部屋から出て行くと櫻はぼーっとしながら身体を起こした。


すると、部屋の外から足音が聞こえてきて部屋のドアが思い切り開いてソフィアが櫻を力強く抱き締めた。


「櫻…良かった…」


「…母様……苦しい……」


「あら、ごめんなさい。

櫻が目覚めたのが嬉しくて…」


そう言ったソフィアは涙声で抱き締めていた櫻から離れた。


「櫻が目を覚まして良かった…」


「父様…」


サブエラが櫻の髪を撫でそれを隣で優しく微笑む闇狼あんろう



「ずっとこの5年間、王と妃はお嬢が目覚めるの待ってたんだからな。」


「僕、5年も寝てたんだ…。」



「そうですよ…。

でも、本当に良かった…。

そして、櫻。

お誕生日おめでとう。」


いつもの様に優しく微笑むソフィアとサブエラ。



「ありがとう…。

あ、あのね父様と母様にお願いがあるの…」


それから、櫻はサブエラとソフィアに公務を手伝わせて欲しいと言って、夢姫ゆめきから言われた様に力をコントロールする為に力を使う公務を櫻がする事になった。


数多くの公務をこなして行くうちに、力をコントロール出来る様になり。

力を使うと眠らなくなった。


そして、櫻が目覚めた4年後…ーー。


櫻は14歳になった途端、サブエラが病に倒れソフィアが国をまとめる事となった。


そして、櫻は14歳にしてソフィアとサブエラと暮らした国を離れた。

運命の双子として産まれ幸運も呼べば不幸も呼ぶ。

それを、悔やみサブエラの病は自分の所為だと思い櫻は10年暮らしてきた国を去った。


これが、鍵守の10年間の物語だ。

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