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運命の双子  作者: 雨音 唄乃 -Utano Amane-
第1部 始まりの物語
16/70

番外編 『鍵守の10年間 中』

僕が視たあの断片的な何か。

それが、何なのか分からないまま僕は儀式を行う祭場に訪れてた。


今夜の月は半分蒼白でもう半分は紅い満月だった。

こんな妖しい満月の夜は何かが起きる…。

そう思っていた。


僕は祭場に入る為の扉の前に立っている。

中には大勢の声が聞こえる。


(人の声…?

どうして…?)


「お嬢?

どうした?」


「う、ううん。

何でもない。」


「そうか?

儀式が始まるから入るか」


「そうだね」


闇狼あんろうが祭場の扉を開き僕は足を踏み入れた。


すると、そこには大勢の人がいて城下の人達や貴族の紳士淑女が顔を揃えていた。


僕はそんなに大きな儀式と思わず、呆気に取られていた。

大勢の人々が僕を見ている。

そんな事は初めてでどうすれば良いのか分からず、立ち尽くした。


「おじ…姫様?」


「!ご、ごめんなさい…。

今、行くわ…」


この時の僕は、ソフィア様とサブエラ様の娘でこの国の姫と言う事になっていた。

だから、なるべく姫の様に接しなければならなかった。


しかし、僕を見る周りの人の話し声は僕に聞こえていた。


「あの姫様、本当にソフィア様とサブエラ様の娘なのかしら?」


「お二人に似てないよな。」


確かに僕は、ソフィア様とサブエラ様の本当の娘ではない。

それでも、僕は2人の娘のフリをしなければならなかった。


祭壇に続く長い通路を歩き、階段に上がると祭壇の横にはソフィア様とサブエラ様が微笑んでいた。

祭壇に着くと祭壇を背に立ちサブエラ様が僕の隣に来て皆にこう言った。


「今宵、我が国の姫の従者契約と共に皆に伝えなければならん事があり集まって貰った。」


寄り添う様にソフィア様が僕の隣に来て微笑んでいた。


「ねぇ、母様。

皆に伝える事って、まさか…。」


「大丈夫ですよ。

本当の事を皆に話しても皆は分かってくれます。」


他の人に聞こえない様に小声で僕とソフィア様は話した。


「皆に話す前に、姫の従者契約をしてから話をしたいと思う。

…姫、此方に」


サブエラ様に隣に来る様に促され僕は隣に行った。


「姫と契約を交わす者、此方に」


「はい」


僕の目の前に闇狼あんろうが膝を付いた。


「姫、これを」


聖剣をサブエラ様から渡され受け取ると契約の言葉を言った。


闇狼あんろう

汝、我を護り。

我が名の下に我と共に生きる事を誓うか。」


「誓います。

我が生涯は姫様と共に…」


僕は、聖剣を闇狼あんろうの両肩に軽く当てた。


「これで、汝と我の契約は成された。」


聖剣をサブエラ様に返し闇狼あんろうが僕の隣に立った。

その瞬間、一斉に拍手が送られた。


拍手が静止するまでサブエラ様は待ち。

静止した事を確認すると一歩前に立ち皆を見渡しこう言った。


「姫の従者契約はこれにて終了した。

そして、皆に話さなければならない事がある。

我が姫の事だ。」


一斉に周りが騒ついた。

それに対して、僕は俯いた。

それを見た闇狼あんろうが僕の目線に合わせ片膝をついた。


「お嬢、大丈夫だ。

何があっても俺が護る。

だから、心配するな。」


闇狼あんろうは誰にも聞こえない様に、僕に囁いた。


「うん…。

ありがとう…。」


少し微笑み顔を上げた。


「我が姫、櫻は皆の知っての通り私や妃のソフィアとは似ていない。

彼女は、ある方のご息女で事情があり我が国で預かり我が国の姫として暮らして貰っている。

その方は皆も知っている、魔王様とマリア様のご息女。」


『魔王』その言葉を聞くとやはり、皆が騒ついた。


だが、一つだけ違う言葉が聞こえた。


「しかし、魔王様とマリア様のご息女はお一人しかいないはずだが?」


「我々が知る限り、ご息女はお一人しかお生れになれてないな。」


その言葉に僕は衝撃を受けた。

僕の存在は闇に葬られたのだ。


それは、僕とサクラが『双子』だから…。

それを、見兼ねたサブエラ様は、僕の隣に立膝を付き僕の肩に手を乗せた。


「彼女は、双子だった。

それ故に、皆に知らされず愛されなかった。

魔王様の国では、双子は禁忌とされている。

そして、彼女は1000年に一度生まれると言われる。

運命の双子の鍵守だ。」


「運命の双子⁈

生まれているとは聞かされてたが、まさかあの姫君が…。」


「嗚呼、神はこんな残酷なモノを姫に背負わせるの…」


聞こえるのは哀れみの言葉。

サブエラ様は立ち上がり、皆にこう言った。


「神が与えた宿命うんめいは誰にも変えられない。

されど、皆には彼女を受け入れ彼女を愛して欲しい。

それが、私や妃の願いだ。」


「私からもお願いします。

櫻を…我が姫を受け入れて愛して頂けないでしょうか…。」


ソフィア様が僕の隣に来て悲しく微笑みながら皆に願った。


すると、一人の貴族の紳士が拍手を送り始めた。

それに合わせその場にいた全ての人が拍手を送った。


その拍手は僕を受け入れる拍手だった。

その拍手に僕は涙を流した。

それを見た、ソフィア様とサブエラ様は僕を抱き締めてくれた。


その隣では闇狼あんろうは優しく微笑んでくれた。


その時、祭場の電気が一斉に消えた。


「な、なに…?」


危険を察したサブエラ様がすぐに騎士に貴族の人や城下の人達の護衛する様に指示をした。


「ソフィア、これは…」


「分かりません。

ですが、敵襲の可能性があります。

私の夢でも視る事が出来ませんでした…。」


「お嬢、俺の傍から離れるなよ。」


闇狼あんろうが僕を抱き寄せた。


闇狼あんろう…」


「大丈夫だ。

お嬢は俺が護る。」


闇狼あんろう

櫻を頼むぞ。」


「俺の命に代えてもお嬢は俺が必ず護ります。」


「父様…!」


「櫻、心配するな。

私は大丈夫だ」


「母様は…!」


「私は大丈夫です。

櫻、闇狼あんろうの傍から離れてはいけませんよ」


「うん…」


ギュッと闇狼あんろうの服を握った。


「うわっ!」


騎士の一人の悲鳴が聞こえた。

それを聞いた皆が騒ついた。


闇狼あんろう

君ならこの暗闇で何か見える?

僕には殺気しか分かんない。」


「確かに、殺気がある。

下手に動かない方が良さそうだ。」


「でも、此処にいる皆を危険な目に合わせる訳には…」


「分かっている。

この暗闇で如何にかしないとだな。」


「どうしたら…!」


「お嬢?

どうし…!」


「動かないで貰おうか。」


「………っ」


殺気を出した見えない敵が、僕のすぐ近くにいた。

冷たい汗が頬を流れた。

突然、消えた筈の電気がついた。


『櫻…!』


ソフィア様とサブエラ様が僕の名を呼ぶ。

僕の背後には殺気を出した敵がいる。

そして、首元にはナイフが向けられていた。


「くそ…!

お嬢…!」


傍にいたはずの闇狼あんろうは敵に押さえ付けられていた。

敵は全員、仮面を被っていて顔が見えなかったが、殺気が強かった。


(傍にいたはずの闇狼あんろうはこいつらの、幻術だったのか。

油断した…!)


「このまま、動かないで貰おうか。

この姫は我々が頂いて行く。」


「……そう簡単に、僕がお前等に着いて行く訳ないだろう。」


「今の自分の現状を分かって言っているのか?

人質になっているんだぞ?」


「だったら?

人質になって居ようがなってなかろうが、関係ない。

此処に居る僕の大切な人達を傷付ける様なら僕は、お前等を許さない…!」


ドーンっと、地響きの様な音と共に櫻の身体を闇が纏った。


「な、なんだ…!」


「今すぐ、此処から立ち去れ。

立ち去らぬのなら…」


僕の手には大きな死神の鎌が握られていた。


「ま、待ってくれ…!」


「待てだって?

そっちから来たのにとんだ、腰抜けだな。」


冷たい視線を敵に送り僕は鎌を振り上げた。


「!…お嬢!

止めろ……‼︎」


振り上げた鎌を敵に振り下げた時、闇狼あんろうが僕を止めた。


「お嬢がそんな奴の為に手を汚す必要はないだろう!」


「だったら、殺さず捕らえれば良いんだろう?」


ダークネス チェーン


闇の鎖が敵、一人一人を捕らえた。

捕らえた時、近くの騎士がすぐに見張りに付いてくれた。


「この鎖から逃れる事は出来ない。

諦めるんだな。」


「お嬢…!」


『櫻…!』


闇狼あんろうとソフィア様とサブエラ様が僕に駆け寄ってきた。


「櫻!大丈夫ですか?

怪我は…⁈」


「母様、大丈夫だよ。」


「良かった…」


僕の無事を確認するとソフィア様は僕を優しく抱き締めてくれた。


「お嬢…無事で良かった…」


闇狼あんろう…」


「櫻が無事で良かった…」


「父様…」


闇狼あんろうは安堵の表情で僕を見て、サブエラ様が僕の頭を撫でてくれた。

そして、敵に近付き


「櫻を何の為に狙ったのかは、後でじっくり聞かせてもらおう。

連れて行きなさい。」


見張りに付いていた騎士にそう告げると騎士に連れられ敵は祭場を後にした。


「皆、無事か?

怪我人は手当を受けてくれ。

皆を巻き込んでしまってすまなかった。」


「何を仰いますか、王。

姫様のお陰で私達は怪我をせずに済みました。

姫様は私達の命の恩人ですよ。

そうですよね、皆さん」


その言葉に周りにいた人達は感謝の言葉をかけてくれた。


「王、謝らなければならないのは俺です。」


闇狼あんろう


「お嬢を護らなければならないのに危険な目に合わせてしまった…。

申し訳ありません。

どんな処罰でも受ける覚悟は出来ています。」


「いや、闇狼あんろうが謝る必要はない。

敵が幻術を使うとは思わなかった。

そして、見破る事も出来なかった…。

私達の落ち度だ。

君だけの責任ではない。」


「…ありがとうございます。」


「さぁ、城に戻ろう。

皆も気を付けて帰ってくれ。」


今回の事件で怪我人は幸い居なかった。

僕はこの時、力が目覚めつつある事を気付かなかった。


城下の人達や貴族の人達が祭場から帰った後、僕と闇狼あんろうとソフィア様、サブエラ様は城に戻った。


「今日はもう、疲れただろう。

櫻、ゆっくり休みなさい。」


「櫻、おやすみなさい。」


ソフィア様とサブエラ様が部屋まで送ってくれて、優しく微笑んで僕の部屋から去った。


「お嬢、疲れただろう。

ベッドに入って休もう。」


「うん…」


「お嬢?どうした?」


「ううん…何でもな……っ」


急に目眩に襲われた僕は、その場に倒れた。


「お嬢?

おい、お嬢!

しっかりしろ…!」


僕の意識は闇に堕ちていって目が覚めた時には驚くべき事が起きていた。




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