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第ⅩⅢ章『精神世界』
暗い闇の、咲き誇る深紅の薔薇。
そこに佇む櫻。
「此処は…精神世界か…」
慣れている様子で辺りを見渡している。
不意に吹く風。
風が運んだのは桜の花弁。
薔薇の近くに桜の木が現れ、櫻は桜の木に近付いた。
「…サクラ」
近付いた桜の木の上でサクラは眠っていた。
櫻は木に登りゆっくりとサクラに近付き、漆黒の髪を撫でて、安らかに眠るサクラの身体を揺らしサクラを起こす櫻。
「…サクラ、起きて」
「…んっ……だれ…?」
「僕だよ」
「その声は…櫻?」
「そうだよ。
おはよう、サクラ。」
「おはよう…」
まだ、寝ぼけているのかサクラは目を擦りながら起き上がった。
「此処は…?」
「此処は、僕とサクラの精神世界。
何かの拍子で繋がったみたいだ。」
「何かの拍子…?」
「黒薔薇だろう。」
「…また、黒薔薇なんだね。」
「そうだね。」
二人の会話を遮る様に闇に一筋の光が射し込んだ。
「…梵天と闇狼が呼んでる。
戻らないと…」
「私も夜鳥が呼んでる。」
「それじゃ…」
「うん…」
『またね、さくら』
2人の声が重なり精神世界は光に満ち溢れた。