第ⅩⅠ章『鍵守の帰る場所』
梵天から差し出された手。
櫻は戸惑いながらその手を取った。
「…本当に、僕の帰る場所になってくれる?」
手を取ったが櫻は不安気に梵天に尋ねた。
その問いに梵天は柔らかく笑った。
「嗚呼、勿論だ。
さぁ、一緒に帰ろう。」
「帰る…?
何処に…?」
「着いて来れば分かるよ。」
「…分かった。」
櫻は梵天の手を離さずそのまま、大聖堂から出て行った。
そして、薄暗い森の中を2人で歩いて行った。
〜数時間後〜
「此処だ」
辿り着いた場所は、まるで悪の巣窟の様な大きな屋敷だった。
「梵天…。
此処って…」
「暗部の本部だ」
「(暗部の本部って何でー⁈)
そ、そっか…(苦笑)」
苦笑いをしながら櫻は梵天を見た。
「行くか」
額に汗を浮かべながら、櫻は梵天と共に屋敷に入って行った。
「此処が、我の部屋だ。
殆ど、我は仕事が忙しくて部屋には帰って来られないから櫻が自由に使って構わない。
好きに使ってくれ。」
「あ、ありがとう…。」
梵天の部屋に入り、近くのソファーに櫻は座った。
「ねぇ、梵天。」
「なんだい?」
「僕の帰る場所になってくれてありがとう(笑顔)」
「っ!…嗚呼。
どう致しましてだ。」
初めて見せた櫻の満面の笑みに梵天は一瞬、驚いたがいつもの様に柔らかく微笑んだ。
こうして、暗部の本部で暮らす事になった櫻。
しかしこの後、櫻が倒れるなど梵天は思ってもみなかった。