もしも転生して犯人に会ったら
息抜きで書いてみました。
完全に見切り発車ですが楽しんで頂けたら幸いです。
「はよ〜遅い」
「ぉはよ〜…なんで勉強してんの?」
いつもと変わらない朝、いつもどおり学校に行くといつも一緒にバカをやっている友達が勉強していた。
もう一度言おう。
勉強をしていた!!!
「何言ってるの、今日テストだよ?」
「…そう、だっけ?」
ハハハハハマッサカー
だがしかし侮るなかれ。この勉強嫌いな友人はテスト前の詰め込みで成績上位者。
おかげで先生からの評判も良く少ない高校求人の中でも非公開の中から学校推薦を軽々と貰って内定まで貰っている。
え?私?聞かないで下さい
つまり、この子がしてるということは…
「……忘れてた」
「あんたマジで言ってんの!?期末だよ!?しかもまだ内定貰って無いんでしょ?大丈夫なの?」
「無理かも……どーしょ」
期末?
面接訓練で忘れてたよ…
てか先生も昨日ずっと面接テストしないで普通に勉強させてくれれば良かったやん…
一気に血の気が引いていくのが分かる
「あー!もー!とりあえず今日は一教科だけでしょ?選択は?テストない奴ばっかりだったよね?」
「う、うん、多分」
「じゃあこれ見て!出そうなのをまとめてたやつ、自分用だったけど貸してあげるから」
「いーの?!」
「貸一、だからね」
マジで救われた…
やっぱり持つべきものは友達、だなぁ〜
【1時間後】
「あ〜!終わったぁ〜!」
ん?テストの結果?
ノートのところがいっぱい出たからなんとかなったかな(キリッ)
軽い開放感の中、私の救いの神は私にトドメをさした。
「あんた提出物は?」
「……………」「……………」
「忘れてたぁああああっ!!!」
「あーあ〜一応言うけどこれは自力で頑張んなよ」
「うぅ…ハイ」
折角、終わったと思ったのにー……
【2時間後】
やっと終わった…
流石に普段一緒に帰っているとはいえ、待たせるのは悪かったから友達には先に帰ってもらった
だから帰りは私一人だ
しかも学校から家まではチャリで40分という長い道のりを、だ。
しかもそれは近道をした場合のみ。
もっと早く着く方法も無いことにはないがあの道は街灯がないにもかかわらず車通りの激しい事で有名で通学路からも外されている。
が、私には早く帰らなければいけない理由がある。と言うよりもそれを思い出した。
それは昨日見逃したアニメの再放送だ。
しかも最終回。これは見なければ
いやー昨日は夜中までゲームしてて見逃したんだよね〜
多分、あの道を通れば半分程の時間で着くだろう。それくらい、時短になる道だ。
「……よし!」
幸いにして今は昼間。
昼少し前だ。
この時間ならあの道でも安全だろう
…普段の帰りなら絶対に行かないけれど
そうと決まれば帰りますか!
「はぁ……はぁ……」
わ、忘れてたー!
実はこの道はかなり上りが多いのだ
その為漕ぐスピードは落ちる。
坂と相まって余計に重く感じる
…もうこれ歩く方が楽じゃね?
「…っ、はぁ、はぁ」
苦しくても漕ぐのを辞めないのはアニメのため。最終回のため。もう見逃せない
辛くても頑張る。
もう少しで坂を登りきる。
そんな時に見えたのは対向車線から来る大型トラック。
この道は他と比べて狭いから殆ど通らないのに…珍しい
チラリと見たあと何故か気になって見てみると真っ直ぐこちらに向かってきている。
…え、おかしくない?
曲がるにしても明らかにこちらに来ている
危ない、よけなきゃ
けれどそこで坂との戦いで疲れきった体が悲鳴をあげた。
そのまま自転車ごと横向きにコケてしまう
それからはゆっくりだった
なのに悲鳴一つあげれなかった
…あぁ、人間本当に危ないとゆっくりに見えるのって本当だったんだ
目の前に迫るトラック
勿論減速はされていない。
フロント越しに運転手を見ると知らない人だ
だけど凄く印象に残る
だって
私を見て、
愉快そうに笑ってイタカラ
そこで私の記憶は切れた
【数日後】
ザアァァァァアア…
少し強めの風が吹くなか一人の少女の葬儀が行われていた。
その中でも数人の、少女と同い年と思われる女子生徒達が肩を寄せ合い涙を流していた。
少女の死因は交通事故による大量出血。
事故のあと林の中に入れられ見つかりにくくされたのが発見が遅れた理由だった。
少女を引いた犯人の特定はされたが
未だ捕まっていなかった
同時刻ーある公園ー
「は、ハハハハハハハハハハハハハハハ!」
一人の男が狂ったように笑い声をあげ、木にもたれ掛かっていた。
「殺った…俺はヤったんだ…ハハハ、俺だってやろうとすればなんだってできんだよ」
1人剥き出しの木の根に座り込みながら己の手を見る。
真っ赤に染まっていない
だが、
確実に人の命を奪った己の手を
「ハハハ、ハ、ハハ…」
一人見つめながら男は静かに笑う
涙を一筋流しながら
「ハハハハハハハハハハハハハハハ!」
…声がする
狂ったようにずっと笑っている
何故?
なんでそんなに悲しそうに笑うの?
なんで泣きそうに笑うの?
ねぇ、なんで?
貴方は、誰?
泣かないで…?
ザアァァァァアア…
木の葉の擦れる音がする中男は視界に入り込んだ有り得ないものを凝視していた。
ーひらり、ひらり…ー
それは桜の花だった。
今は秋だ。
桜など咲くはずない
しかし、余りにも綺麗なその花びらに誘われるようにして上を見る
即ち、己がもたれ掛かっている木を見上げた
そこには満開の桜
狂い咲きだった。
一本だけではない。
男のもたれ掛かっている木を中心に桜は一斉にその花を咲かせていた
そして、その木を見上げている男を見ているものがもう一人、いや、人だった者がいる。
良かった
もう泣いてない
あれ?
この人…
私は知ってる…?
………あぁ、
そうだ。
思い出した
こいつ、知ってる
私を引いて笑ってイタヤツダ
ナゼコロシタノニワラッテイルノ
ユルセナイ
ヒトヲコロシテワラウナンテ
ソンナノハユルサナイ
カタキヲトロウ…
ダレガ?ドウヤッテ?
イヤ、ジブンデヤラナイト
ワタシハワタシノカタキヲトラナクチャ
イッシュンジャダメダ
ユックリトイタブラナイト
スグラクニスルナンテユルセナイ
そのものはゆっくりと初めは男を慰めようと無理に咲かせた己の花を更に、今度は怨みを込めて咲かせた。
その花はより美しく
より、残酷に咲き誇り
見るものー即ち男をー虜にした。
少女だったものは己の姿も気にせずただ男を憎む一心で咲き誇った
その心が毒になるとは知らずに
ゆっくりと男の体に毒が周り始めているようで少し力なく揺れ始め、目が虚ろになっていった
そして少女だったものにも異変があった。
クルシイ
ドウシテ?
ワカラナイ
ワカラナイヨタスケテ…
コンナ気持ち知らなイ
「…直ぐに許さんでえぇ」
誰カ助ケテ……
「じゃがな、恨んではいけんよ」
誰……?
「憎んではいけんのじゃ」
ねぇ…
誰なの?
「今は気にせず休むがよい」
や、すむ…?
「また、目が覚めたら話そうぞ」
……。
約…そく、だよ?
「あぁ約束じゃ」
そして
ゆっくりと
静かに
男は力尽き
少女だったものは眠りについた
それを悲しむかのごとく周りの桜たちは散り始め
まるで木が涙を流しているような
そんな美しい光景だった
ありがとうございました♪(´∇`)