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更衣室

 美夏に授業が終わると同時に、いきなり手を引っ張られて連れてこられた先がここである。女子である私には、普通に暮らしていれば絶対に入る事のない部屋だ。そう、男子更衣室。聖麗学園では各部活動で更衣室を持っておらず、男子生徒は男子更衣室で女子生徒は女子更衣室で着替えるのが、常識である。防犯上の理由らしいが詳しい事は分からない。


「美夏ちゃん。何で私達はこんな所にいるの?」


「薫様の肉体美をこのカメラで写すんですわ」


 そう言っている美夏の手には小さなカメラがあった。何だか犯罪のにおいがするカメラだが、何も言わないでおこう。


「それで肉体を写すと言っても本人が居ないのにどうやって写すの?」


「それは・・・・盗撮ですわ!!!」


 言っちゃった。あえて言わない様にしたのに即言っちゃったよ、この子。盗撮は犯罪なのに思いっきり自分から犯罪者ですよと言っているようなもんだよ。


「美夏ちゃん。盗撮は犯罪だよ」


「良いの!!!私たちは未成年だから捕まらないわ」


 そういう問題では無いと思うのだが・・・。


「じゃあ、そのカメラ置いて早く出ようよ。誰かにこんな所見つかったら大変な事になるよ」


「それもそうね。このカメラをどこに置こうかしら」


 美夏はカメラをどこに置こうかウロウロとしている。こんなくだらない事に付き合わされたのかと思うとため息が出る。まぁ、私も美夏を心の中で応援すると言った以上、色々振り回されても仕方ないかと自分を納得させる。


「ねぇ、桜ちゃん。このカメラどこに置けば一番、薫様の肉体が写るかしら」


 そんな事を聞かれても盗撮をした事が無いから、どこが良く写るか等分かるはずもない。しかし、分からないと言えばここから出るのに遅くなるし、適当に答えるのがベストだ。


「あの辺じゃないかな」


 私は窓側のロッカーの上を指差した。すると、美夏はカメラをそこに置いた。しばらくカメラで何かしていたが、設定し終わった時に私の方を見るとグッドのサインを出した。


「素晴らしい。桜ちゃんは盗撮のセンスがありますわね


「そんなセンス要らないから、早くここから出ようよ」


「そうね。もうすぐ男子が来る時間だわ。ここから出ましょう」


 私が扉に手を掛けた時、扉の向こう側から男子の声が聞こえた。



 嘘でしょ。ここで男子が来るの!?隠れる場所は・・・。



 周りを見渡しても隠れる様な所はロッカーしかない。


「美夏ちゃん。男子達が来ている、隠れよう」


 私は美夏にそう言って適当に開いているロッカ―に入った。汗臭かったが隠れるためには仕方がない。美夏はしっかり隠れる事が出来たのかなと思った直後だった。突然、焦った顔をした美夏が私の入っているロッカーを開け、無理やり体をねじ込んで来た。一人ですら狭いロッカーが更に狭くなった。幾ら女子で小さいとはいえ、ロッカ―に人間二人は厳しいものがある。


「何で、私の入ってるロッカーに入って来たの?」


「ごめんなさい。焦っててどこに入れば良いか分からなくなって・・・」


 美夏はションボリとしてそう言った。そういう顔されると、こちらとしても責める事が出来なくなる。


「もう、すぐにそんな顔をする。今の状態で出ろとも言えないし・・・」


「ゴメンなさい。本当にゴメンなさい」


「分かったから、もう男子達来るから静かにね」


 ロッカーの隙間から更衣室の様子を伺うと、制服姿の男子達が入って来た。サッカー部や野球部、卓球部等、様々な部活の男子がいる。その中に黒田薫の姿もあった。演劇部に助っ人として参加している黒田は、体操服に着替えるようだ。演劇部は体操服に着替えなければならないと決まっているらしい。理由は良く分からないが・・・。


「美夏ちゃんのお目当ての黒田君もいるよ」


「えっ!!私にも見せてくださいまし」


「ちょ、ちょっと動くとバレるよ」


 美夏が動いたせいでロッカーがガタガタと音を立てる。


「何の音だ?」


「何か音したか?」


「・・・・気のせいか」


 あぶねぇ~。こんな男子更衣室に女子二人でロッカーに入ってたら、それこそ変態だよ。変態だけは避けていきたいのにこんな所で変態の烙印を押されるものか。


「もう、美夏ちゃんだと状況が分からないから私に見せて」


 また美夏と場所を変えるために動いたが、次はそっと動いたためそこまで音がしなかった。外の様子を見ると、大体の生徒が着替え終わっており、皆部活動に行く準備をしていた。思ったよりもこの臭いロッカーから早く出れそうだ。


 しばらくすると全員が部活動に行き、更衣室は静寂に包まれた。それを見て、私はロッカーを力いっぱい蹴り、狭い密室空間から脱した。


「はぁ~、臭かった。早く行こう美夏ちゃん」


「うん」


 私が手を伸ばし、美夏がその手を受け取った時だった。男子更衣室の扉が開いた。そちらを見るとそこには驚いた顔をした黒田薫。


 

まずい、最悪の相手に見つかった。



「何、やってるんだよお前ら」

 

 どうやら神様は私をどうしても変態キャラにさせたいらしい。

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