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印象が変わった

「あぁ、あの日か。演劇部の練習だよ」


「演劇部?黒田君って帰宅部じゃ無かったっけ?」


「今回だけ主役で出て欲しいって言われて、最初は断ったけど、しつこいから出てやる事にした」


 なるほど、そう言う事か。少しホッとした。もし、付き合っている等と言われたら私は気絶していたかもしれない。これ以上私の日常にスパイスを加える必要は無いからね。


 さて、ホッとした所で時刻表を見ると次の電車が来る時間は10時55分。今の時刻は9時50分。


「え?嘘!?電車、1時間後じゃないと来ないじゃん」


「西園寺ってこれの見方分かるのか?」


「分かるよ。これくらい」


「凄いな」


「だって、今までも現地集合の遠足あったじゃん」


 小学生5年と6年の時にも現地集合の遠足はあった。その時にも確か電車を使わないと行けない場所だったのだが、電車の時刻表も見れない彼はどうやって現地まで来たのか。


「もちろん車で行ったさ」


「送り迎えは禁止されてるよ」


「バレなきゃ良いんだよ。さてとじゃあ今回も車を呼びますか」


 黒田はポケットからスマホを取りだし、軽く画面をいじった後、機体を耳に当てた。優等生を目指している私にとって、このルール違反は複雑な気持ちだった。電車を待っていれば昼までに絶対に着く事は無い。だからといって規則を破っていいのだろうか。う~ん、これは難しい。


 規則について考えていると、電話を終えた黒田の顔がすぐ目の間に現れた。


「うわぁ!!」


 あまりの近さに思わずビックリしてしまった。黒田の顔を近くで見ると肌が艶々としており、女子の私としても羨ましい程である。そして、彼が改めてイケメンだと思い知らされる。黒田がアイドルだと言っても通用してしまうのではないかと思うぐらいカッコいい。


「何考えてるの?」


「いや、やっぱり車で行くのは・・・」


「大丈夫だって、途中で降ろして貰うし」


「じゃあ、お願いします」


「おう」


 とりあえず、私と黒田はホームから出て駅舎で車を待つ事にした。駅員は私達を見て不思議そうな顔をしていたが、黒田が堂々としていたお陰で何にも言われる事は無かった。私一人なら、オドオドして何かを言われていたかもしれない。


 車は十五分位で駅舎に到着した。その間、黒田と話していたが、やはり私達は気が合うらしい。話が盛り上がって、迎えの車が来たのも気付かなかった。運転手さんが私達を呼びに来てやっと車が来たのだと気が付いた。


「相沢。飯田公園の近くまで頼む」


「かしこまりました」


 運転手さんがそう言うと車は静かに発進した。


 今日で黒田の印象がガラリと変わった。最初はただの女好きの男だと思っていたが、いつも女の子が周りにいるのは、女の子達が勝手にしている事らしい。他にも部活に入っていないのは女の子と遊ぶのに忙しいのかと思ったが、ただ面倒臭いから入らないだけらしい。しかし、様々な部活から助っ人に来てくれと言われるらしいが・・・。


 でも、よく考えれば少女漫画のヒーローだと思ったら、普通に考えて女に対してだらしがない訳がない。そんな事があったら、その少女漫画は売れないだろう。というか私は絶対に買わない。





 結局、遠足の最終目的地に着いたのは集合時間の十分遅れ。逆側の電車に乗ったのに十分遅れで済んだなんて奇跡に近い。これも黒田のお陰だ。私は公園近くで下ろして貰ったから、その後黒田がどうしたのか分からないが、公園に着く頃には女の子の束が出来ていたからそこにいるのは分かった。


 公園では涙目になっている美夏と香奈が居た。二人とも私の事を心配していたらしい。その証拠にスマホの着信履歴が五十件を超えていた。バイブに設定してあり、尚且つ黒田と話していて全く気が付かなかった。


「もう、心配しましたわよ」


「何回も電話したのに出ないから無事で良かったよ」


「ごめん。二人とも」


 そう言って私は二人と抱き合った。何だか大げさな感じもしたが、この二人にはこれが一番良いだろう。


「他の二人は?」


「愛梨と川崎さんは何か意気投合したみたいであっちでご飯食べてるよ」


 香奈が指差した方を見ると、演劇部の人達と愛梨と綾が居た。この二人はこんなに心配してくれているのに、あの二人は冷たくないだろうか。私の事を心配もせずに友達と楽しそうにご飯を食べて。別に心配して欲しい訳ではないが、もう少し気にはして欲しかった。



 その後遠足は暫く自由時間で、おやつ時には解散になった。帰り道、私は綾の事で頭がいっぱいになった。良い意味では無く、悪い意味でだ。もっと優しい子だと思っていたが私の思い違いだったらしい。あんまり、綾には関わらないでおこうと思ったが、考えが変わった。


 私は美夏の恋を応援しよう。苛めとか悪い事をしてではなく、あくまで優等生として正々堂々と。そうしよう。美夏は悪役だが、心が優しい良い子だ。こんな子がただ、悪役だからって負けるなんてそんなの可哀想だ。何より私が嫌だ。


 悪役だからってヒロインなんかに絶対負けないんだから・・・・。悪役の友達として精いっぱい応援するよ、美夏ちゃん。

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