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遠足

 入学から2週間経ったが、漫画とはだいぶ違う展開になったのではないかと思っている。まず、私は変態キャラではないし、取り巻きでも無い。光宗美夏も漫画とは違い、何だか可愛い性格だったし、悪いキャラクターでは無いと思われる。今のところ、私の優等生ライフは安定している。後、不気味なのは私とあまり関わりの無い、川崎綾と黒田薫の行方ではないだろうか。


 そんな事を考えていると、図書室に二人の姿が見えた。扉に張り付いて、そっと中の様子を伺う。


「どうして君はそんなにも美しいんだ」


「お世辞は辞めて頂戴。私は貴方の本音を聞きたいの」


「本当に好きなんだ!!だからこの指輪を受け取ってくれ!!」


 そう言った黒田は、小さめの黒い箱を綾に渡した。 綾はそれを見て、泣いているようにも見えた。


 えぇ!?いつの間にそんなに進んでたの?


「ありがとう。この指輪、大切にするわ」


「さぁ、そろそろ帰ろうか」


「うん」


 黒田と綾がこちらに向かってきたので、私はササッと扉の前を離れて何事も無かったかのように廊下を歩いて、教室に向かった。


 マズイ、マズイ、マズイ!!どうしよう。このままだと美夏が悪役に目覚めてしまう。そうしたら私まで巻き込まれてイジメに巻き込まれてしまう。それだけは阻止しなくては・・・。


 教室に戻ると巻き髪を弄りながら、空を見ていた美夏がこちらに気付いた。


「桜ちゃん!!用事は終わったのですか?」


「うん、終わったよ。帰ろうか美夏ちゃん」


 私達はお互いに下の名前で呼ぶようにしていた。美夏が友達同士なのに、いつまでも名字でしかも、さん付けで呼ぶのはおかしいと言ったからだ。


「この呼び方も慣れてきましたわね」


「そうだね。最初はやっぱり呼びづらかったけどね」


 机にあるまだ新品の匂いがする鞄を取り、美夏の所に駆け寄った。


「よし、行こう」


 二人で教室の出入り口に行こうと歩みだした時、川崎綾が教室に入って来た。こちらを見るなり、睨みつけてそっぽを向いてしまった。


 怖っ!こっちの方がよっぽど悪役っぽい。


「おぉ、怖い怖い。睨みつけてくるなんて、やっぱり下品ですわね」


 あぁ、またこの子は余計な事を・・・。


「・・・・・・・・」


 しかし、美夏は何も反論せずに帰りの支度をしたら、さっさと教室から出て行った。美夏が何を考えているか分からない。私たちに危害を加える様な何かを考えていない事を祈ろう。


「全く、無視とは最悪ですわ」


「もう!!喧嘩売るようなことは止めてよ」


 普段、誰にも喧嘩を売るようなことはしない美夏だが、何故か綾にだけは喧嘩を売る。


「だって・・・。何だか分からないけど、気に食わないですわ。あの子」


 漫画では敵対しているだけあって、気が合わないのかもしれない。


「でも、同じクラスメイトだし、仲良くしようよ」


「まぁ、それは置いておいて帰りましょう」


 先ほどの出来事を美夏には言うべきではないと改めて思った。しかし、あの二人がどうなっているかは、確かめなければならない。


 どうやって?直接聞くしかないか。でもあんまり関わりもないし、関わりたくもないしな。




 



 担任の川尻先生が黒板をポンポンと叩いた。 


「じゃあ、遠足のメンバーはこれで決定」


 3人で一組のグループになっており、私の組は光宗美夏、川崎綾、そして西園寺桜の名前が黒板に書かれている。


あはは、先生も冗談がお上手な事。私を驚かすドッキリですよね?


「せ、先生」


 皆がワイワイと盛り上がっている時に、私は恐る恐る手を上げた。


「何だ、西園寺」


「ドッキリですよね?」


「は?何を言っているんだ?」


「私の誕生日は来月ですよ?こんななにもない時期にサプライズされても」


「誕生日はおめでとう。だけど、これはサプライズではなく決定事項だ」


 先生も周りの生徒も皆、私の質問に疑問を抱いただろう。美夏と綾の仲が悪いのは、私とこの二人しか知らない。基本的に、この二人は普段は関わらないので喧嘩しているとは、誰一人気が付かない。


 結局、グループはあのままで決定した。



 ぬわぁー、先生の馬鹿!何でこの三人で固めるのさ。四十人も生徒が居るのに、どんな確率だよ!



 二人が喧嘩せずに、遠足を楽しめる方法は無いかと考えた時、ある方法を閃いた。早速行動に移すために私は隣のクラスに行った。


「助けて、香奈えもん」


「私は、そんな名前じゃないんですけど」


 本当の名前は宮本香奈。私の小学時代からの親友で困った時は、彼女に頼むと何とかしてくれる。体格もふくよかでお母さんタイプというべき存在である。もちろん、漫画には出てこないモブキャラであるが、頼れる親友である。


「まぁ、そんな事ええから。私の話聞いてよ」


「何で似非関西弁?聞いてあげるから、そこ座りなよ」


 私は言われるままに、香奈の前の席の椅子を借りて、事情を話した。香奈は何も言わずにうん、うん、と頷いて話を聞いてくれた。こういう所も香奈の良い所だ。


「なるほど、だったら私の班と一緒に行動しようよ」


「え?良いの!!」


「私たちの班と一緒にいれば、その二人も喧嘩しないでしょ」


「他のクラスのグループと一緒にいても良いのかな?」


「全てが自由行動だし、大丈夫でしょ」


 聖麗学園の遠足は全部自分たちで行う。まず先生に指定された場所を地図で確認して、道のりを覚える。その時に、バスや電車を使うような場所であれば運賃を確認する。そして当日、自分たちで現地まで向かう。この様に自分たちで行動する事が大事だという方針で遠足は基本的に自由行動になっている。


「なるほどね。人が多ければ多分喧嘩も減るよね」


「喧嘩も減るし、私達も一緒に居れるからね」


「うぅ、ありがとう。やっぱり香奈えもんは頼りになるよ」


「その呼び方やめて」


 やっぱり持つべきものは友である。

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