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嫌われるって怖いよね

 聖麗学園の中等部に入って二ヶ月が経った。時間というものは本当にあっという間に流れていく。


 普通になにも考えずに学校に通っていたけど、以外とまずい状況じゃない!?


 黒田と綾が仲良くなるのは中等部の二年次。


 それまでに彼と美夏を仲良くしなければならないのに私達がしていたのは、呑気に遠足に行ったり、部室に盗撮用カメラを仕掛けようとしたり、中間テストに熱で行かれなかったりと彼とは全く関係のないこと。


 その間にも綾は友達を作り、演劇部に入り黒田と共に活動をしている。


 まだ二人の間に恋心は芽生えていないように見えるが、このままだと絶対に駄目だと思う。


「桜ちゃん。今日もあの喫茶店に寄ってから帰りましょう」


「甘いよ、美夏ちゃん」


「え?」


「貴方は本当に黒田君と恋仲になるつもりはあるの?」


 いくら私の気持ちが焦ったとしても美夏自身の気持ちが動かなければ意味はない。


「そ、それは・・・あの、その・・・」


「悪役令嬢ならもっとしっかりしなさい!」


「は、はひ!悪役令嬢?」


 何だか漫画の光宗美夏はもっとどっしりとしていて悪役としての余裕があったのになぁ。


 目の前にいるのはびくびく怯えている動物のような悪役令嬢(仮)。


 こうなったら荒療治に出るしかないかな。


「明日から本気を出すよ」


「何の本気?」


 美夏は私の言葉が分かっていないようだったが、今はそれでもいい。とにかく彼女と黒田の接点を増やす。それで彼女を変えてみせる。





次の日。


私は朝から早速、黒田の元へ美夏を連れていく。相変わらず女の子に囲まれているがそれを押し退けて黒田に近づく。


「黒田君!」


「おお、西園寺。どうした?」


「実は・・・、あれ?」


先程まで隣にいた美夏が居ない。


周りを見渡すと教室の角でこちらの様子を伺っている。


「ごめん、また後で」


「お、おう」


 走って私は彼女の元へ向かう。


「美夏ちゃん!何でせっかくのチャンスなのに」


「いきなりは心の準備が」


 まぁ、確かに突然過ぎたかな。でも私に好きな子がいたら猛アタックして行くけどな。


 もうそれは古い考えなのかしら。


「もう一回チャンスをあげるからその時はしっかりと話してね」


「わ、分かったわ」


 昼休みの時間まで待てば、流石に美夏も心の準備とやらが出来るでしょ。


休み時間の度に美夏の様子を見に行ったが時間が経つ度に彼女の行動はおかしくなる。


「大丈夫?」


「ダ、ダイジョウブデスヨ」


 昼休みまで後一時限の授業と昼食時間しかないのに、壊れたロボットのようになる美夏に私は頭を抱える。


「美夏ちゃん。貴方は怖いんでしょ」


「こ、怖い?私がそんなわけありませんわ」


「話し掛けて仲良くなれるか分からないのも怖いし、告白をして断られるのも怖い。だから緊張するんだよね」


 相手を想えば想うほど嫌われたくないものだ。だから嫌われたくないから関わらないという選択をする。


 考え方としては間違っては居ないが、それだと仲良くなることもない。ただ指をくわえて綾と黒田が仲良くなっていくところを見なければならない。


「美夏ちゃん。怖いかもしれないけど勇気を出して一歩踏み出してみよう」


「も、もし無視されたらどうしますの?」


「黒田君なら無視しないよ」


 彼の性格的に美夏を無視することはないだろう。これは断言できる。


「桜ちゃんは私の近くにいてくれますよね?」


「うん。いるから安心して」


 その言葉を聞いて美夏は一度深呼吸をする。


「少し頑張ってみますわ」


「そう。その意気だよ!」


 ようやく美夏がその気になった。ならば私としては掩護射撃で助けてあげないとね。


 そして、午前中最後の授業も終わりお昼になった。お昼は各々に分かれる。ここ聖麗学園では中等部であっても給食はない。


 なので高級レストランといってもおかしくない程の食堂に行くものもいれば、売店でお弁当を買う者もいる。そして私達のように家からお弁当を持ってくる人もいる。


「き、緊張しますわ」


「別に話したからって怒られるわけでもないし、もっとリラックスしなよ」


「そ、そうですわよね」


 やる気になった美夏ならきっと大丈夫。


 昼食を食べた私と美夏は黒田を探しに行った。普段から教室で昼食を食べていない彼がどこにいるのかは分からない。


 でも居るとすれば食堂か天気のいい日はよく売店組が使っている中庭だろうか。


 私と美夏はまずは食堂へ行った。相変わらず馬鹿デカイ室内で無駄にクラシック音楽が流れている。


 多くの生徒が昼食を食べていたが、黒田らしき姿はない。ならば次は中庭だ。


 中庭でも多くの生徒がお弁当を食べていた。しかし黒田は居ない。


「あれ?おかしいな?」


「もう良いですわ。今日は止めにしましょう」


 その時、チラッと視界の端に黒田と女の子が体育館側へと向かう姿が見えた。


 もしかしてその方向は!?


「ちょ、ちょっと待っていて、美夏ちゃん」


「う、うん」


 私は走って黒田と思わしき人物の後を追う。


 その方向は聖麗学園に伝わる告白の聖地じゃないか。ということは二人でやることは一つ。


 私が到着した時には既に女の子は下を俯いていた。


 遅かったか。


「おお、西園寺!」


馬鹿!何でこの場面で私に手を振るのさ!


 この状況で全く空気を読まない黒田は私に近づいてくる。


「何でこっちに来るの!」


「え?だって話したいことがあったから」


 彼の辞書にデリカシーという文字はないのだろうか。まぁ、この反応だと無いよね。


 こういう男に回りくどいことをしても駄目かもしれない。


「黒田君にお願いしてもいい?」


「?」


「美夏ちゃんとデートしてくれない?」

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