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前編








うわ、また混んでる。


最近駅のある一カ所、少しだけ休憩所としてイスとテーブルがおかれた。


学校帰りにそこに座るのが俺の日課だ。

大体の友達は一駅前でおりるため、一人でここにくる。

そして、休憩することよりも



「すいません、ここ、座っていいですか?」



こっちが目当てだ。









それは僕と君の特等席。









いつも決まって二つ席があまってる状態の所に僕はくる。

いつも同じ場所で、ハジより一つ前のテーブル。

向かいはあいていて、少し待っていると違う高校の女の人が座ってくる。

最初彼女がここに座った時は急用で座らざるを得ない状況だった。


次は二回めという事もあり、抵抗なく座りスマホをいじり帰って行った。



今日は三回め。



「三回めですね。」



「いつもここに来るんですか?」



「まあ…。」



「ここ、ちょうど良いですもんね、外の景色も見えて。」



左を向くと外の景色が見えた。

人が歩いていて、ビルが立ち並んでいて。



「そうですね。」











三回めは、他愛もない会話で時間が過ぎていった。










それから、毎回向かい同士の席に座った。









彼女と話すのは楽しい。



名前も、高校名も知らないけど。



「桜井くんは部活とか、入ってるの?」



「全然、部活入ってたらここ来れないですし。」



つい、本音がでた。

まずい、今ので下心があるとばれたのかもしれない。

しかし彼女は嫌な顔はせず、少し照れた顔をした。



「ふふ、そうですね。」



その笑顔に、ドキドキとした。










「幸太郎、今日空いてる?」



友達が話しかけてきた。



「今日…?」



まあ、空いてるけども。

でも、彼女と会えないじゃないか。



「うん、空いてるよ。」



「よっしゃ!カラオケ行こうぜ!」



それは駅近くの、カラオケ。









カラオケにいる間も彼女の事が気になってしょうがなかった。

いなかったら、きっと座らずに通り過ぎるんだろうな。

僕がいないから。



帰りにそこの前を通った。



もう暗い時間だ。




「え……」




「幸太郎、どうした?」



僕の特等席には、知らない人と彼女が座っていた。



もうこんな暗い時間で、しかも男性だ。

同じ学校の人?

彼女は楽しそうに男と話している。



あぁ、そうか。



特別に思っていたのは僕だけなんだ。






僕が浮かれていただけだった。






彼女と目があって、気まずそうな顔をしてきた。

こっちを見るな。

愚かな自分、浮かれていた自分が悔しくなった。










次の日も、そのまた次の日もそこに行く事はなかった。









僕は彼女の名前も、高校も知らない。

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