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1/ 消えた日常

皆様の期待の悪い意味で斜め上を行かないよう頑張ります。

  ◇◆◇◆◇




「おーい和也おっはよーうえーい」



 そんなふざけたような挨拶をしてきたのは相沢脩斗あいざわしゅうと。俺とガキの頃から一緒で小学校、中学校と来て高校まで同じ幼馴染だ。


 運動神経抜群の脩斗は名前の通りサッカー部(絶対洒落だよな)。何を思ったかサッカーボールをスイカ割りの要領で叩きまくってたらサッカーに興味が沸いたらしい。小4の夏である。



「ちょ…っと、脩ちゃん…速いよ!はぁ…あ、おはよう和くん」



 次に駆けてきたのは春河はるかわ美由佳みゆか。脩斗といとこの関係にあるらしく、中学の時に転向してきて、脩斗と仲が良かった俺はすぐに美由佳と打ち解けた。

 俺は笑顔で返すと笑顔で返された。根暗な俺には眩しい笑顔なことだ。因みに美少女だ。


 脩斗はごめんごめん、と謝っていたが美由佳は頬を膨らませて睨み返していた。

 大学生やら他校の奴らは美由佳を見るなり頬を赤らめ、友人と可愛いなあの、と話し合っている。ウザイな。シバいてやろうか。


 それは別に美由佳の為じゃないからな。個人的にそういう奴らがむかつくだけだ。



「おい二人とも、グズグズしてると置いてくぞ」


「あ、ちょっと待てよ和也」


「ちょ、脩ちゃん!」



 つい俺は少しイラついた口調で言ってしまったが、どうやら二人は気づいていないらしく、いまだに痴話喧嘩を辞めない二人に陰で溜息をついた。


 学校には五分程度で着いた。


 校門を入れば右に駐輪場、左に駐車場、それと同じぐらいの広さの無駄に広い空間。そこには赤松やらの植物が植えられている。


 生徒玄関のまん前にその赤松が堂々といる為、いちいち回り込まなければならない。正直邪魔以外の何者でもない。


 俺たちの他にも登校してくる者は大勢いる。恐らくこの時間帯が登校ラッシュなのだろう。部活の朝練で早めに来る生徒も大勢いるが、それでも朝早く来る生徒は全部活で五十人程度だ。


 後ろから俺を追い抜くたびに俺に挨拶をしてくる生徒に同じく挨拶を返す。自分で言うのも変なものだが、根暗な割には友達はいる。友達と言っても学校で話すだけであって、休みの日はあまり互いに干渉しない。

 ともあれ、何故か俺に好んで話しかけてくる生徒は多いのだ。


 後ろの二人も俺と同様。追い抜かれる度に脩斗は大抵女子から、美由佳は大抵男子から挨拶をされ、返す。俺はその中間、と言ったところか。


 うちの学校には下足箱と言うものは存在しない。その為、生徒玄関内は下足箱が無い分広く感じ、幾らかの開放感を与える。

 代わりに自販機やベンチ等が置かれている為、昼になれば生徒の溜まり場と化すのである。


 時刻は八時四十三分。この高校は九時にはホームルームが始まる為、時間的には丁度良い。


 俺はそのまま足を止めず二階の一年教室に向かう。俺と美由佳は二組、脩斗は六組だ。残念ながら六組は二組とは反対の校舎にある為ここで別れる。


 俺と美由佳は教室に入り、俺は窓側最後尾に位置する席(二組の男子の間では天国の席(ヘブンズポイント)なんて呼ばれてる)に座る。美由佳は俺の隣だ。


 座ってから気がついたが、全員の椅子の足元に黒いケースと銀のケースが二つ並べられていた。


 だが、大して気にすることでも無いと思った俺は、ボー、っとグラウンドを眺めていた。すると教室の前の扉が開かれ、先生が入ってきた。俺は時計に目をやるとまだ五十分。ホームルームにしては早い入室だ。


 先生は座るよう促しながら教卓の前まで来ると、口を開いた。


「悪いが今日は大事な話がある。全校生徒にかかわる話だ」


 小さなざわめきが起こり、全員が不思議そうに顔を見合わせている。


「今日からお前たち…全国の高校生を使用したサバイバルをすることになった」


 小さなざわめきがどよめきへと変わった。恐らく意味が解らないのだろう。俺も言ってる意味が解らず眉をひそめ、硬直していた。


「皆、足元にあるケースを机の上に置くんだ。まずは黒いケースから。開けても絶対驚くな」


 全員戸惑って躊躇ちゅうちょしていたが、俺は意を決して黒ケースを机の上に置く。それを皆は心配そうな目で見ていたが、一呼吸ののちに開ける。そこに入っていた物は────、


「……拳銃…?」


 どよめきが大きくなる。


「そうだ。黒いケースに入っているものは拳銃だ」


 どよめきの中から女子生徒が先生に震える声で聞いた。


「先生…、何で、拳銃なんてあるんですか…?」


 至極当然の問い。しかし、とても重要な問いでもある。


「それはさっき言った通りだ。日本の全高校生を使用してのサバイバル。……デスゲームだ」


「デス…ゲーム…?」


 俺は無意識に呟いていた。


「そう、これはデスゲーム。ただのサバイバルでも遊びでもないリアルの殺し合い」


 そこまで聞いて一人の生徒が言った。


「はっ、どうせ冗談だろ?先生それドッキリとかそんなたぐいのやつだろ?」


 その生徒は突然両手をいっぱいに開くと続けてこう言った。


「本物だってんなら俺を撃ってみろよ先生」


 先生はそう言われると逡巡の間を置いてその生徒の机の方へと歩き出した。生徒全員不安そうな顔をしている。勿論その生徒も。口ではあのように言っても、心までそうはいかないのが人間だ。


 机の上の黒ケースを持って踵を返し、再び教卓の方に歩き始める。その生徒は疑問の表情を浮かべていたが、何もないと分かって少々安堵の表情になった。だが、それはすぐに消え去った。何故ならば────先生が拳銃を構えてその生徒に向き直ったからだった。


「本物かどうかを確かめる為の実験台になってもらえるのならばありがたいです」


 それはさっきまでの声音とは違っていた。淡々としていて、感情が篭っておらず、その声が耳に届くとどこか背筋がひんやりと冷たくなるのを感じる。


「せ、先生…?冗談だろ…?それエアガンか何か…」


 その声は先生の持つ銃からとどろいた銃声で掻き消された。同時に息の漏れる音と苦痛の叫び。そして状況を理解した為であろう大きな悲鳴。


 その場はパニックになった。誰もその銃が本物だとは信じていなかった。実際手に持った俺もモデルガンだと思っていた。


「静かにしてください。もう一つの銀のケースを開けてください」


 その淡々とした冷たい口調に頭を抱えて悲鳴を上げていた女子生徒も黙り込んだ。だが、頭を抱え震えている人の方が圧倒的に多い。女子も、男子も。


 俺は指示された通りに銀のケースを開けると、火薬の臭いがした。中には六つのマガジンと大量の弾丸と、それらを収める為の物であろう大きめのホルスター入っていた。


「そのホルスターの中に全て納まるでしょう。使い切った場合は現地調達です。生きている生徒、死んでいる生徒のどちらから武器を奪っても構いません。勿論武器が売ってあればそれも良いでしょう。では、頑張ってください」


 有無を言わさぬ勢いでそう言うと、教室の四隅から突然噴き出した。その煙に女子生徒が悲鳴を上げる。その煙は甘ったるい匂いがして頭がフラフラしてくる────と、そこまで考えた瞬間その煙の正体が解った俺は窓を開けようとした。だが、気付くのが遅かったようだ。


「ちか…らが……」


 いつの間にか頭全体を覆うマスクを着けた先生を睨むのを最後に俺の意識は暗闇へと落ちていった────。






こうした方が良いとかのアドバイスも待ってます。批評も大歓迎です。

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